暴れ回る子供に、マルコはまた乱暴に抱き上げ、睨みつける。
それでも子供は怯むことなく泣き続ける。
涙なのか鼻水なのか分からないぐらい、顔のまわりを汚しながら、だらしなく泣いている。
しかし、泣いている子供に優しい言葉をかける大人など、ここにはいない。
ほぼ全員が、無表情に子供を見つめているだけだ。


、かえりたいぃー!!」


大きな声で叫び過ぎたのか、声が枯れて、掠れた音が喉元から出てくる。
それが苦しいのか、時折小さな咳を繰り返す。
そんな子供にみかねてなのか、エドワードが動いた。


「おい、ガキ。」
らもん!」
「…。おめぇは、どこに帰るってんだ?」
は、のおうちにかえりゅのぉ!!」


船の上。
子供は周りを見て気付かないのか、周りは穏やかに波打つ海と、空がどこまでも続いているだけだった。
陸も、海にいる生物も見当たらない。
いつもはあるはずの雲も、今は無い。


「それなら、答えろ。、おめぇはどっちに行く?」
「おうちのほーこー。」
「それはどっちだ?」
「………ここ、どこぉ?」
「海の上だ。」
「う、み…?なぁに、それ?」
「船の外にあるもんをよく見てみろ。」


子供はぱちくりと、面白いぐらい瞬きを繰り返す。
その度、まつ毛に残っていた涙が頬を濡らすが、先ほどのように酷い泣き方は、もうしていない。
いきなり言われた言葉に、驚き、思わず涙が止まってしまったのだろう。


「う、うみは、どこまれうみなのぉ?、うみのうえ、あるけるよぉ。」
「海はどこまでだって、海だ。一様島に向けて進路をとっちゃあいるが…少なくとも1カ月しなけりゃぁ、つかねぇな。」
…かえりぇる?」














「帰れねぇよ。」















嘘、でしょ?
(うそらよ…そんらの、うそらもん……)

  
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