子供の近視進行を抑える特殊なメガネ
2011/6/12 10:00 ドンドン悪くなる、わが子の近視に悩む親は少なくない。“メガネ姿はかわいそう”“メガネ代が大変”とこぼし、薬や電気治療、超音波治療などで、近視の進行を抑えようと躍起になっている。
しかし、どの治療を選んでも「今の近視予防法に医学的なエビデンス(根拠)はない」と言うのは岡山大学医学部眼科教室・長谷部聡講師。近視予防の研究は2000年以降、海外で飛躍的に進んだが、「日本は30年以上前の研究結果に縛られ誤解が多い」というのだ。
「日本では子供の近視の多くは仮性近視と考えられていますが、まずそれが間違いです。さまざまな統計から仮性近視は1%程度で、ほとんどが軽いが、本物の近視です」(長谷部講師)
近視とは近くを見ることが習慣化された結果、眼球の奥行き(=眼軸)が長くなる状態をいう。目に入ってきた光が網膜到達前に焦点が合い、像がぼやけてしまうのだ。
仮性近視は近くを見続けたため、レンズの働きをする水晶体を包む毛様体が緊張・マヒ。水晶体が厚くなったまま戻らなくなり、一時的に目の調節力が低下、像がぼやけることをいう。
「確かに仮性近視だけの子供というのは少ない印象があります。本物の近視か仮性近視かを調べるのに、瞳孔を開くミドリンPと呼ばれる点眼薬を使う方法があります。この薬は毛様体筋をマヒさせることで、厚くなった水晶体を元に戻し、その人本来の視力を出すのです。実は、この薬を使っても1.0以上の視力が出ない子供が多く、本物の近視と仮性近視を併せ持っていると考えられるのです」(「清澤眼科」清澤源弘院長)
これではいくら毛様体をリラックスさせても、子供の視力が悪くなるのは当然だ。いったん長くなった眼軸は伸びることはあっても元に戻ることはないからだ。
日本では子供の近視の原因は勉強やテレビ、ゲームなど、近くを見続ける環境にあるといわれているが、遺伝もバカにはできないという。
「海外の研究では両親とも近視の子供が近視になる確率は、そうでない両親の子供の8倍です。子供の近視の進行は都市部、高学歴ほど早く、屋外での活動で抑制されます。度数をぴったり合わせたメガネや、就寝時のナイトライトが近視を進ませるという話は、医学的根拠はありません」(長谷部講師)
●とくに6〜12歳には効果あり
では最新の近視予防法とは、どんなやり方か?
「累進屈折レンズのメガネをかける方法です。暗闇でどこを見るともなく目を休めているときにピントが合っている距離を調整安静位といいます。個人差がありますが、平均は66センチ。これより近くを見ると近視進行のレッドゾーンになります。そこで33センチまで近づいても調整安静位となるよう、近くがラクに見える累進屈折レンズのメガネをかけるのです。それで眼軸が伸びるのを抑制するのです」(長谷部講師)
この方法による臨床研究は世界各国で行われ、統計上有効なことが実証されている。
日本でも長谷部氏らが軽〜中等度の近視の小学生92人を対象に、3年間調査、近視進行の抑制に効果があったという。この治療法は近視が進む限りは有効だが、とくに近視抑制効果が期待できるのは「6〜12歳」(長谷部講師)という。すでにこの理論を利用した新たな近視予防用の累進屈折メガネは、海外では発売されているが、日本では複数の大学で共同研究がスタートしたばかりだ。
「欧米で後天的失明原因第1位の黄斑変性症は、日本でも50代以降で増えており、その大きな原因は近視です。子供のうちに医学的根拠のある近視予防に努めることが大切です」(長谷部講師)
(日刊ゲンダイ2011年6月9日掲載)
しかし、どの治療を選んでも「今の近視予防法に医学的なエビデンス(根拠)はない」と言うのは岡山大学医学部眼科教室・長谷部聡講師。近視予防の研究は2000年以降、海外で飛躍的に進んだが、「日本は30年以上前の研究結果に縛られ誤解が多い」というのだ。
「日本では子供の近視の多くは仮性近視と考えられていますが、まずそれが間違いです。さまざまな統計から仮性近視は1%程度で、ほとんどが軽いが、本物の近視です」(長谷部講師)
近視とは近くを見ることが習慣化された結果、眼球の奥行き(=眼軸)が長くなる状態をいう。目に入ってきた光が網膜到達前に焦点が合い、像がぼやけてしまうのだ。
仮性近視は近くを見続けたため、レンズの働きをする水晶体を包む毛様体が緊張・マヒ。水晶体が厚くなったまま戻らなくなり、一時的に目の調節力が低下、像がぼやけることをいう。
「確かに仮性近視だけの子供というのは少ない印象があります。本物の近視か仮性近視かを調べるのに、瞳孔を開くミドリンPと呼ばれる点眼薬を使う方法があります。この薬は毛様体筋をマヒさせることで、厚くなった水晶体を元に戻し、その人本来の視力を出すのです。実は、この薬を使っても1.0以上の視力が出ない子供が多く、本物の近視と仮性近視を併せ持っていると考えられるのです」(「清澤眼科」清澤源弘院長)
これではいくら毛様体をリラックスさせても、子供の視力が悪くなるのは当然だ。いったん長くなった眼軸は伸びることはあっても元に戻ることはないからだ。
日本では子供の近視の原因は勉強やテレビ、ゲームなど、近くを見続ける環境にあるといわれているが、遺伝もバカにはできないという。
「海外の研究では両親とも近視の子供が近視になる確率は、そうでない両親の子供の8倍です。子供の近視の進行は都市部、高学歴ほど早く、屋外での活動で抑制されます。度数をぴったり合わせたメガネや、就寝時のナイトライトが近視を進ませるという話は、医学的根拠はありません」(長谷部講師)
●とくに6〜12歳には効果あり
では最新の近視予防法とは、どんなやり方か?
「累進屈折レンズのメガネをかける方法です。暗闇でどこを見るともなく目を休めているときにピントが合っている距離を調整安静位といいます。個人差がありますが、平均は66センチ。これより近くを見ると近視進行のレッドゾーンになります。そこで33センチまで近づいても調整安静位となるよう、近くがラクに見える累進屈折レンズのメガネをかけるのです。それで眼軸が伸びるのを抑制するのです」(長谷部講師)
この方法による臨床研究は世界各国で行われ、統計上有効なことが実証されている。
日本でも長谷部氏らが軽〜中等度の近視の小学生92人を対象に、3年間調査、近視進行の抑制に効果があったという。この治療法は近視が進む限りは有効だが、とくに近視抑制効果が期待できるのは「6〜12歳」(長谷部講師)という。すでにこの理論を利用した新たな近視予防用の累進屈折メガネは、海外では発売されているが、日本では複数の大学で共同研究がスタートしたばかりだ。
「欧米で後天的失明原因第1位の黄斑変性症は、日本でも50代以降で増えており、その大きな原因は近視です。子供のうちに医学的根拠のある近視予防に努めることが大切です」(長谷部講師)
(日刊ゲンダイ2011年6月9日掲載)
2011/6/12 10:00 更新