室町時代、際限ない戦乱で京の都を破壊し幕府を有名無実化した「応仁の乱」について「応仁記」は当時の風潮を「天下ハ破レバ破レヨ、世間ハ滅ビバ滅ビヨ、人ハトモアレ、我身サヘ富貴ナラバ」と記している。将軍、足利義政らの無責任政治への批判と解されている。
東日本大震災の復旧が難航する中で内閣不信任決議案提出以来、着地点の見えぬ駆け引きに与野党は明け暮れる。その様子は最後のくだりを「我身サヘ権力アラバ」に置き換えるとそのままあてはまるかのようだ。
そんな中、菅直人首相の早期退陣を前提ににわかに浮上したのが民主、自民両党を中心とする大連立構想をめぐる動きだ。ねじれ国会を克服し復旧、復興を進める手段として民主・岡田克也、自民・石原伸晃両幹事長が5日、期間を限った両党連立に意欲を示した。
各紙は7日社説でそろって取り上げた。読売を除き、おおむね慎重な論調だった。
毎日はかねて復旧、復興への与野党が協力する体制が必要と主張している。期間限定の大連立について「ひとつの方法」としながらも首相の退陣時期や社会保障・税制などの基本政策や予算編成などハードルは高いと指摘、復興へ柔軟に協力方法を探るべきだと主張した。
日経は「政策本位に新たな連携の枠組みを探ってほしい」と注文した。やはり実現のハードルは多いとして、政策ごとの部分連合も選択肢に挙げた。
批判のトーンが強いのは産経で「基本政策抜きなら談合だ」と題し大連立には外交・安保も含めた政策一致が必要と主張、「共に閣僚ポストを得」るための「談合」ではないかと疑念をあらわにした。朝日は「直ちに大連立というのはちょっと待ってほしい」として、枠組み論議よりも共同で実現する政策を示すよう両党に促した。
他紙と対照的なのが読売だ。「この機運を逃してはなるまい」と期限つき大連立に賛意を示し、政策の合意に向け民主党に大胆な譲歩を求めた。
その大連立構想も自民党で慎重論が拡大したこともあり、急速にしぼみつつあるようだ。党をたばねる幹事長の発言にあたかも「瞬間芸」的な賞味期限しかない、というのも政治の軽さのなせる業なのだろう。
では、与野党のもつれた糸をどうやって解きほぐすのか。首相の退陣問題が行き詰まり、被災地を置き去りにした衆院解散の動きが国会会期末に向け再浮上しかねないことを危ぶむ。【論説委員・人羅格】
毎日新聞 2011年6月12日 2時30分