先週、発表されたQS.com のランキングによると、東大はアジアで3位だそうだが、世界ランキングでは19位。日本の大学は100位以内に4つしか入っていない。

それでもこれは理科系が強いからで、経済学部ランキングでは東大は世界の118位で、200位以内に他の大学は入っていない。経済学者ランキングでは、1000人中に5人しか入っていない。最高は、伊藤隆敏氏の235位。最近は経済学でも、国際学会誌に載った論文以外は業績にカウントしないという話が出ているが、その基準を厳密に適用すると、日本の経済学部で教えている教師の95%以上は業績ゼロだろう。

これは日本の経済学者の能力が低いからというより、新古典派経済学が普遍的な科学ではなく、米国ローカルの「お話」だからだと思う。理論が開発途上の時期には、宇沢氏や稲田氏のように数学科出身の人がテクニックだけで論文を書けたが、今はアメリカの大学で流行している話題に乗らないと相手にしてもらえない。しかし経済学は臨床医学みたいなものだから、国際学会で美しい論文を発表するより、日本経済の問題を診断して政策を処方するほうがずっと大事だ。

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コメント一覧

  1. 1.
    • bobby
    • 2009年06月14日 19:57

    北京大学
    大学ランキングを見ましたが、北京大学など中国の大学がひとつも見当たらないのは英語の壁のせいでしょうか。

  2. 2.
    • 池田信夫
    • 2009年06月14日 22:41

    ちなみに
    私は海外の査読つき雑誌にも国際学会にも出しているので、業績はゼロではありません。
    http://www003.upp.so-net.ne.jp/ikeda/article.html

  3. 3.
    • pk-uzawanian
    • 2009年06月14日 22:52

    マクロ経済学という分野が存在する理由は、分権化から生じていると最近考えるようになりました。
    特に、日本のように人口構成が大規模に変動する場合は、分権化か生じる問題が顕著に現象化する。
    本当は、日本経済というのは経済学的問題の宝庫であるのに、マルクス主義的観点が政治的に知的世界を圧制してしまったために、課題解決能力が著しく低下してしまっていると思います。
    おまけに、アメリカ経済学がインチキノーベル経済学賞で問題領域を縛ってしまったのも大きい。
    分権化していなければ、経済学は単に集計と分配の問題です。分権化しているために、金融や投資や貯蓄や世代間地域間分配などの問題が生じる。

  4. 4.
    • 伊藤
    • 2009年06月15日 19:42

    まさしく正論ですが、、
    >>しかし経済学は臨床医学みたいなものだから、国際学会で美しい論文を発表するより、日本経済の問題を診断して政策を処方するほうがずっと大事だ。
    まさしく正論ですが、経済音痴の政治家や官僚が地底人と池田さんを区別するためには、国際学会誌への論文掲載も必要だと思います。また、池田さんクラスの経済学者なら出版社と組んで後進のために国際学会誌の創刊を日本で行うことも可能だと思います(池田さんの論文の審査能力が非常に高いのは著書を読めば誰でも分かるはずです)。

  5. 5.
    • それから
    • 2009年06月22日 10:28

    注意点
    このランクは「アカデミックGNP」のような「総額」ベースによるもの。一人当たりの「GNP」でのランクではない。所属機関のポスドク以上の人数で「総額」を割ったものでランクを作れば大分様子が異なる。日本の科研費も機関別総額でみるのと、科研費採択率でみるのとは印象が違うように。あと、一流国際誌に論文を載せる人は実経済の診断ができないと断ずるのはどうかと思う。池田さんのブログにでてくる外人さんの名前の人は一流誌に論文を書いたことがないとでも?

  6. 6.
    • tarrega
    • 2009年06月24日 06:08

    些細なこと
    酷く些細なことで恐縮ながら、冒頭の記述からすると、「先週発表された」のはQS.comの「世界ランキング」であり、その19位に位置する東大の上には他のアジアの大学が2つあるように読めますが、先週発表されたのは「2009年」のアジア・ランキングであり、東大が19位に位置する世界ランキングは「2008年」のものであって、そこではアジアの第1位でした。
    この10月に発表される2009年の「世界ランキング」では、おそらく東大の順位はかなり下がることになるのではないでしょうか?
    勿論、東大の順位が上がろうが下がろうが、池田先生の議論の趣旨には何ら問題がありません。



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