1964年、私は中学三年の終了間際でしたが、“ビートルズ”が世界的に大ブレイク!それからはイギリス勢の“追っかけ”を始めました。しかしエルヴィス・ファンを辞めたわけではなく、コレクティングは友達に任せて、常にチェックはしておりました。
当時イギリス勢は日本で“リバプール・サウンド”と呼ばれていましたが、彼らの猛威が吹き荒れている時に突如“エルヴィス風歌唱”の曲がヒットチャートに割り込んで来たのです。それがテリー・スタッフォードの『サスピション』でした。
私はエルヴィスの全てのレコードを聞いていましたので、これが本人の歌唱ではないことはすぐにわかりましたが、モノマネ・シンガー(という表現はチョト誤解される危険性がありますが、ここでは“取り敢えず”)のレコードがビルボードで“3位”にチャートされる大ヒットとなったのには驚きました。しかもリバプール旋風が吹き荒れている真っ直中に!です。エルヴィス人気は根強いものがある、と再認識させられた一件でした。
この頃のエルヴィスは映画活動オンリーの時期で、カットされるシングル盤も殆ど映画のサントラからのものばかりでした。このテリー・スタッフォードのヒットで、「もうエルヴィスは声が出なくなったのではないか。最近の歌もこのテリー・スタッフォードが歌っているのではないか」などという楽しい“替え玉説”が流れたりしたものでした。(昨今の日本なら“都市伝説”として流布されたでしょう)
スタッフォードはヒットの余勢をかって第二弾をリリースしました。それが『I'll touch a star(星をつかもう)』。
『サスピション』はカバーでしたが、この『星をつかもう』はスタッフォードの“オリジナル”でした。しかし、だとしても、いかにもエルヴィスに以前あったような作品と感じます。それもそのはずで、作家は《Fred Wise - Ben Weisman》という、エルヴィスの曲を山のように書いているチームなのです。似ているのは当然のことなのですね。もうここまで来ますとオリジナルなのかカバーなのかということは、そう大した問題ではなく、要は“トリートメント”の出来・不出来の問題ということになります。
数年後に、エルヴィス・イミテーターにはスタッフォード以前に“Ral Donner”という先駆がいたことを知りました。
この『Girl of My Best Friend(奴の彼女に首ったけ)』はエルヴィスのカバーで、スタッフォードの三年前(61年4月)に19位のヒットとなり、続いて7月に第二弾がリリースされ、こちらの『You Don't Know What You've Got』はナント4位のビッグ・ヒットとなりました。
作家チームは《George Burton / Paul Hampton》で、エルヴィスのスタッフ・ライターではありませんが、Hamptonには『Sea Of Heartbreak』(ドン・ギブソン)という名曲があります。
この曲はエルヴィス“イミテーター”のラル・ドナーのオリジナルです。ところがその“元”であるはずのエルヴィスに、ドナーのこの『You Don't Know What You've Got』に似ている曲が三年後(63.4)に登場したのです!
映画『ワールド・フェアの出来事』からのシングルカット、『One Broken Heart for Sale(破れたハートを売り物に)』でした。
『You Don't Know What You've Got』の、
「And now I'm sorry for
the things I didn't say
`cause I know now I acted
in a foolish way」
の部分と、『破れたハートを売り物に』の、
「Well, excuse me if you see me
crying like a baby
Since she rejected me
There's nothing left to save me」
最後がチョイと違うだけで、ナント!8小節間も殆ど同じです。作者は『冷たくしないで』の“Otis Blackwell”と『Tweedle Dee』の“Winfield Scott ”。彼らがラル・ドナーのマネなどするはずはありません。つまり、これは全くの《空似》なのです。(『空似アワー』ですナ)
しかしです。イミテーション・シンガーが、オリジネーターの未来の曲を予測・予言していた、ということになります。(さすがにラル・ドナー側はエルヴィス側に、『マネしたナ』、とは言えんでしょう(笑))
《声帯模写》という語句を発明した“古川緑波”さんが、ラジオの生放送で徳川夢声さんの“代役”を40分間務め(夢声の声色で)、夢声さんの奥さんでさえ「本人は隣の部屋で寝ているのに、どうしてラジオから・・・」と不思議に思ったというエピソードを小林信彦さんの本で知りましたが、模写・モノマネ・イミテートと、この次元になりますとなかなかに“深い”ものがあります。
当時イギリス勢は日本で“リバプール・サウンド”と呼ばれていましたが、彼らの猛威が吹き荒れている時に突如“エルヴィス風歌唱”の曲がヒットチャートに割り込んで来たのです。それがテリー・スタッフォードの『サスピション』でした。
私はエルヴィスの全てのレコードを聞いていましたので、これが本人の歌唱ではないことはすぐにわかりましたが、モノマネ・シンガー(という表現はチョト誤解される危険性がありますが、ここでは“取り敢えず”)のレコードがビルボードで“3位”にチャートされる大ヒットとなったのには驚きました。しかもリバプール旋風が吹き荒れている真っ直中に!です。エルヴィス人気は根強いものがある、と再認識させられた一件でした。
この頃のエルヴィスは映画活動オンリーの時期で、カットされるシングル盤も殆ど映画のサントラからのものばかりでした。このテリー・スタッフォードのヒットで、「もうエルヴィスは声が出なくなったのではないか。最近の歌もこのテリー・スタッフォードが歌っているのではないか」などという楽しい“替え玉説”が流れたりしたものでした。(昨今の日本なら“都市伝説”として流布されたでしょう)
スタッフォードはヒットの余勢をかって第二弾をリリースしました。それが『I'll touch a star(星をつかもう)』。
『サスピション』はカバーでしたが、この『星をつかもう』はスタッフォードの“オリジナル”でした。しかし、だとしても、いかにもエルヴィスに以前あったような作品と感じます。それもそのはずで、作家は《Fred Wise - Ben Weisman》という、エルヴィスの曲を山のように書いているチームなのです。似ているのは当然のことなのですね。もうここまで来ますとオリジナルなのかカバーなのかということは、そう大した問題ではなく、要は“トリートメント”の出来・不出来の問題ということになります。
数年後に、エルヴィス・イミテーターにはスタッフォード以前に“Ral Donner”という先駆がいたことを知りました。
この『Girl of My Best Friend(奴の彼女に首ったけ)』はエルヴィスのカバーで、スタッフォードの三年前(61年4月)に19位のヒットとなり、続いて7月に第二弾がリリースされ、こちらの『You Don't Know What You've Got』はナント4位のビッグ・ヒットとなりました。
作家チームは《George Burton / Paul Hampton》で、エルヴィスのスタッフ・ライターではありませんが、Hamptonには『Sea Of Heartbreak』(ドン・ギブソン)という名曲があります。
この曲はエルヴィス“イミテーター”のラル・ドナーのオリジナルです。ところがその“元”であるはずのエルヴィスに、ドナーのこの『You Don't Know What You've Got』に似ている曲が三年後(63.4)に登場したのです!
映画『ワールド・フェアの出来事』からのシングルカット、『One Broken Heart for Sale(破れたハートを売り物に)』でした。
『You Don't Know What You've Got』の、
「And now I'm sorry for
the things I didn't say
`cause I know now I acted
in a foolish way」
の部分と、『破れたハートを売り物に』の、
「Well, excuse me if you see me
crying like a baby
Since she rejected me
There's nothing left to save me」
最後がチョイと違うだけで、ナント!8小節間も殆ど同じです。作者は『冷たくしないで』の“Otis Blackwell”と『Tweedle Dee』の“Winfield Scott ”。彼らがラル・ドナーのマネなどするはずはありません。つまり、これは全くの《空似》なのです。(『空似アワー』ですナ)
しかしです。イミテーション・シンガーが、オリジネーターの未来の曲を予測・予言していた、ということになります。(さすがにラル・ドナー側はエルヴィス側に、『マネしたナ』、とは言えんでしょう(笑))
《声帯模写》という語句を発明した“古川緑波”さんが、ラジオの生放送で徳川夢声さんの“代役”を40分間務め(夢声の声色で)、夢声さんの奥さんでさえ「本人は隣の部屋で寝ているのに、どうしてラジオから・・・」と不思議に思ったというエピソードを小林信彦さんの本で知りましたが、模写・モノマネ・イミテートと、この次元になりますとなかなかに“深い”ものがあります。