原発再開の是非を問う国民投票が始まったイタリアで、原発に揺れる町を取材しました。
福島第1原発の事故をきっかけに、国内外で原発の是非が議論される中、イタリアでは、原発再開の是非を問う国民投票が、12日から始まりました。
そのイタリアで、原発に揺れる町を取材しました。
ローマから北へ1時間、人口およそ9,000人のモンタルト・ディ・カストロ市には、穏やかな風景が広がっている。
唯一の例外が、市内から数km離れた場所に残る、イタリアで最後に建設された原子力発電所の名残。
チェルノブイリ事故をきっかけに、国民投票で原子力発電が禁止され、解体。
それ以来、およそ20年間、空洞の建屋だけが残っていた。
しかし、電力価格を下げるため、2008年に原子力発電の再開が決まり、モンタルトにある施設を再利用する呼び声が高まった。
福島第1原発の事故を受けて、発電所の建設を1年間凍結する方針を決定したが、住民は、再開阻止を求めて運動している。
モンタルト原発反対委員会のステファノ・セバスティアニ氏は「原子力は圧力釜みたいなもので、水蒸気が出ることだってあるし、土地が汚染されてしまうんだ」と話した。
市は、太陽光発電にかけている。
モンタルト市の発電所は、ヨーロッパでも最大規模で、1万5,000世帯に供給が可能。
モンタルト市のサルバトーレ・カライ市長は「わたしたちは、絶対に原子力に反対です。太陽光発電のおかげで、市は2009年末から、1kWたりとも『汚れたエネルギー』は使っていません」と話した。
イタリアは、必要な電力の8割を火力発電によってまかなっているが、対照的に、8割近くを原子力発電に頼るフランスと比べて、電力コストが4割ほど高くなる。
ミラノ工科大学(推進派)のジオバンバティスタ・ゾロリ氏は「モンタルトには、すでに配線が敷かれ、地形も、原子力発電所建設に最適の場所です」と話した。
しかし地元住民は、モンタルト市の温暖な気候は、太陽光発電に適していると主張し、原子力発電所の再開に反対している。
福島第1原発の事故は、世界中で、原子力をめぐる議論に拍車をかけている。
(06/12 17:52)