赤池学×糸井重里 電気ナマズが打ち破る!?「中央集権」という名の幻想 (1)

1998年10月 1日

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(※この記事の初出は、「Hotwired Japan」 1998年10月となります。)

いま、「ぬるい」がいちばん熱い!

糸井赤池さんの主なフィールドはどういうタイプのところなんですか。

赤池もともとは生物学なんですけど、ジャーナリストとしての柱は「モノ作り」の技術批評ですね。それが時代の流れとともに、環境技術や社会システム技術、エネルギー技術といった具合に、アースデザイン的な方向に広がってきた。

その根本にあるのは、毒性の物質や廃棄物を出すのやめましょうとか、原料の有効利用をやりましょうとか、これ、もったいないんじゃないの?といったごくごく素朴でまっとうな視線でエネルギーを見つめなきゃいけないんじゃないか、という考え方なんです。

そこからエネルギーの問題に取り組みながら、ドイツやアメリカやカナダなんかの先進的なエネルギー関連の技術を追いかけていくと、どうも一家に一個発電所ってことがもう夢じゃなくなってるんですよね。

そういう技術を視野に入れながら、もう一度生活者とエネルギーの問題、あるいは電気事業者の原発を含めた取り組みとか、あるいは新規にCo2出さないためだけにまた20基も原発作っちゃっていいんですかというような提言を含めて、エネルギーを技術、そしてもうちょっと大きな社会システムのデザイン、さらにはいま閉塞している産業や経済みたいなところから考えてみようと。

その先には技術商品としては非常に大きなものなのがあるので、落ち込んでる製造業にも元気出させることができるんじゃないかというシナリオがあるわけです。

糸井ぼくにとって赤池さんの『「温もり」の選択』が刺激的だったのは、分散化とリンクということがあらゆる場所でいま鍵になってるんじゃないかってことなんですよ。じゃあ、なんでいままで分散することができなかったかというと、これはもうひじょうに分かりやすいわけで、権力が一枚岩であったときには分散は許されなかったわけですよね。

それぞれが自分の能力で知ることをフルに発揮するような状況を認めてしまうと、ヒエラルキーの構造が壊れるわけでしょ。国による情報の管理がインターネットでバラバラと分散したように、エネルギーという、これはもう国家のトップランクに位置する超がつくぐらい中央集権的なはずのものが、赤池さんの本を読んだら、それこそハードで乗り越えられる類いのものだってことが見えてしまう。

もちろんそこには問題も予想されて、やっぱりある種のアナーキーな現実が目のまえに現れてしまうんではないかと。つまり、個人がエネルギーを支配できるようになったときには隣の個人と組み合わされればふたつになるし、4つになるし、8つになるしっていう形で、別の権力を作ろうと思う人たちがあらわれてくるわけで、革命軍の権力体系みたいな最悪な事態も予想されるわけだよね。インターネットも実際そういう問題に直面してる。

ところがこれ幸いなことにパーソナルコンピュータのできることってのが限度があるように、赤池さんの本を読んでると、家庭内発電っていう、あの小ささがおもしろいんだな。つまり拡大再生産していかないサイズのものをみんなが持ってるっていう姿が、なんだかすごくおもしろかったんですよ。

しかもなんでそれが拡大再生産しないタイプかなって思ったら、いま、お聞きしてなるほどって思ったんだけど、出身が生物の方で、あのエネルギーの装置もバイオな発想だった。やっぱり生物のできる範囲ってひじょうに閉ざされてるというか、ここまでっていう部分があって、ミニからメジャーになる間のミディアムで止まりそうな、そういう限界のあるものをどう扱っていくのかな、って。

たとえば『「温もり」の選択』っていうタイトルにもよくあらわれていると思うんですけど、熱いでも冷たいでもなく、ウォームですよね、これは中間をさしてるわけですし、硬いものと柔らかいものの中間点で接ぎ木してるような部分。不安定だけど、そこんところに未来感みたいなものが見えないかなあという期待があるわけです。

燃料電池が切り開く、エネルギーシステムの未来

赤池たとえば、オーストラリアのアボリジニや、南中国の雲南とか山岳チベット族とかタイの山奥に住んでる人たちの生活に触れてみると、彼らの文化にいかに川魚とか魚を食べる習慣がないかに驚かされるんですよ。

それはなぜかなと思ったら、熱の効率利用を達成する土器という技術を彼らが持たないからなんです。要するに、彼らは直火であぶって食べるわけですけど、そのエネルギーをお湯にしてね、同じ熱源でエネルギーを二度利用するっていう技術をやれなかったんで、魚料理とかが進化していかなかった。

糸井もうひとつメディアを加えるか加えないかの差なわけだ。

赤池ええ、鍋物はやっぱり栄養の効率がいいんですね、脂でもアミノ酸でも全部入っちゃって、それをぜんぶ栄養にできるわけですからね。コージェネレーションっていう熱電併給の考え方は、つまりこれとまったく同じことなんです。

いまのエネルギーシステムを見てみると、火力発電所でせっかくタービンをまわして電気作ってるのに、その熱をなんで使わないんだろう。原子力発電所で300度ぐらいの高温水蒸気が出ると、これを大気に捨てるか海に捨てるかして地球の温暖化に思いっきり貢献しちゃう。でもそもそもなんでそんな風に熱エネルギーを捨てちゃうんですか、といった疑問が山積みなんです。

糸井そうだよね。それって専門的にはなんかすごく込み入った理由なんだろうけど、シンプルに考えれば、つまり、ヘタだよっていう話ですよね。

赤池そう、ヘタじゃん、ムダじゃんっていう。

糸井だから、納得いったんだわ。この問題をある種、感情論的アレルギーでされたらかなわないなあと思って読みはじめたときに、すごく説得力があったのね。つまり、どうしても女子供を救え、みたいなタイプのムシロ旗立ってるような発想でやられちゃうと、それは同じレベルになっちゃうわけでしょ。

それが、上手か下手か、どっちがいいの、っていう選択として提出されるとすごく冷静だし、しかも便利で楽で安全な方へ流れていこうとする大衆の欲望にも忠実だしね。

赤池電気でもいま送電ロスが60パーセントぐらい、実質的には40パーセントぐらいしかエネルギーとして使いものになってない。熱を送ろうと思うと事態はもっと深刻で、離れれば離れるほどどんどん温度が下がっちゃうから、熱を運搬するっていうこと自体がもうやりようがないんですよ。

柏崎とか敦賀のような巨大な大規模原発で電気は作れても熱はぜったいに送れない。だったらエネルギーを使うコミュニティの周辺に中小規模の、より安全なものをたくさん作ってあげると、上手なエネルギーの使い方ができますよ、っていう話。

それに、駆動するものはどうしても磨耗消耗するんで、耐久性の問題が出てくるんですね。それに対してたとえば燃料電池は動く部分がない発電機なんでその問題も解消してしまう、というか、そもそも問題そのものが発生しないんです。

糸井つまりエネルギーシステムの未来は、燃料電池という化学のジャンルで切り開けると。でもそういうことをお国というか、為政者の側はどう考えてきたんですか。

赤池いわゆる化学合成みたいな世界はあったんだけど、もうちょっと物質と物質の、まさに今日のテーマに近いんだけど、ネットワークとか関係性とか、そこからなにか新しい種を拾えませんかというのはこれからなんだと思うんですよ。

AとBとをくっつけて、新しい別の化学物質を作りましょうというような動きがありますよね。ただそういうのって一時期はいいんだけども、もともと地球にないものをエネルギーとして作っちゃってるから、温暖化とかオゾン層の破壊みたいな問題が出てくるのははじめっからわかりきってるわけですよ。

だとしたらもともと当たりまえにある化学反応ですね、そういう太古からあるプロセスのさらにその間にある関係性をみたり制御したりすることで新しい価値を生みだせるんじゃないか。といって、べつにすごいことをやろうってわけじゃない。もともとやってきたわけですからね、生物が。

そうそう、いま生ゴミからたい肥つくろうという動きがありますよね、多くの識者がEM菌をなにかスーパーマンみたいな存在に仕立てようとしているけれど、

糸井あれ、やっぱダメですか?

赤池わたしはダメだと思いますね。菌類というのは、納豆菌とかバチルス菌とか、どんなものであれ順番に料理しながら合理的にものごとを展開しているわけですよ。

糸井単体で生きてるわけじゃないんだ。

赤池ええ、でも今まではそういう手間がかかることや、関係性に迂回したりするのって嫌われてきたわけです。それよりはなにか新しい、北極海かなんかの藻類を探してきてそこにある珍しい酵素かなんかを抽り出して与えると一気に、あっという間にできちゃう、みたいなことばかりをやってきた。

糸井なんかバブルの時の土建屋と同じだなあ。

赤池その一方で生態系プロセスに生きる、ごく当たり前の役者の働きっていうのをきちんと研究してこなかったんですね。

糸井その関係の中から新たななにかが生まれてくる。そのなにかっていうのはシステムかもしれないし、関係の中からもうひとつの関係かもしれないし、関係の中からの化合物かもしれないし、新しい媒体かもしれないしって。その発想は、ぼく、いちばん好きなパターンなんだけども、意外とないんですよね。見えなからなのか、関係って商品になりにくいんですよ。「関係」で金儲けられたのってせいぜい総会屋だけですからね(笑)。

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