主演に現在公開中の映画『八日目の蝉』で話題の永作博美さんを迎えて、この作品は動き出しました。11文字の殺人は1987年に発表された東野圭吾先生の初期作品で、社会的に女性が強くなりはじめた時代背景が色濃く出た作風となっています。原作の主人公の「タフな顔の裏側にある、ひたむきさ」は、P・D・ジェイムズの名作小説「女には向かない職業」のコーデリア・グレイ(※1)を彷彿とさせる趣があります。
今回の映像化にあたり、永作博美さんだったらどう演じてもらえるのか?をまず考えました。自然体で等身大のキャラクターでありながら、軸がぶれない女性。大切な人を失った事で、その存在の大きさに気づき、過去の苦い思い出にも翻弄される女性。そんな彼女が激しい運命の渦に飛び込んでいく。
非常に難しい役柄で、監督と打合せを繰り返しながら撮影にのぞんでいただきました。その結果は・・・6月10日の放送でお確かめください。今まで見た事がない永作博美がそこにいると思います。
林徹監督はプロデューサー泣かせの監督です。知らない間に、いろいろ発注をかけてしまう人で、のめりこんでしまうと周りが見えなくなるタイプです。
そんな林監督の今回のこだわりは、シネカメラ(デジタルシネカメラALEXA)とシネレンズ(単焦点レンズUltra Prime LENSE)。でかいです。高価です。プロデューサーは胃が痛いです。ですが、胃の痛みを乗り越えられる映像の質感はさすがのベテラン。俳優さんたちを美しく撮る事にかけては一流です。
結果オーライなのでOKと思った矢先に「空撮」と「水中カメラ」を発注していました・・・。この瞬間から、監督の諸経費が落とされなくなった事は秘密です。
めまぐるしく展開する巧妙な連続殺人事件。殺人方法にトリックはありませんが、「恋人はなぜ殺されたのか」というホワイダニット(※2)に焦点があてられた物語です。そして、真犯人は誰なのか?最後の最後までわからない作品。観て頂いた後に「東野圭吾と永作博美にしてやられた!」と思っていただければ幸いです。 是非、お楽しみください!