中国電力が上関町で進める上関原発計画をめぐり、建設予定地から30キロ圏内にある柳井市など周辺の2市3町の議会では、福島第1原発事故の発生を受けて、上関原発の建設中止や自然エネルギーへの転換などを求める意見書案を提出する動きが活発化している。上関原発建設に関して周南市議会が中止、下松市議会が凍結を求める意見書を可決したが、2市3町議会では多様な意見があり、採決に向けて文言の修正など調整が進んでいる。
2市3町は上関原発建設の着工を前提とした国の電源立地地域対策交付金(総額約86億円)の交付対象自治体。各市町への配分額も決まったが、福島第1原発事故が発生から約3カ月経っても収束のめどが立たないこともあって、「住民の不安に応えるべきだ」(柳井市議)と意見書提出の動きが広がっている。
柳井市議会では、共産と無所属の計3議員が「市は予定地から20キロ圏内に入り、事故が発生すれば多大な被害を受ける」として、上関原発の建設中止と既存原発の総点検などを国や県に求める意見書案を提出。6月定例会開会後の20日の議会運営委で審議することを申し合わせたが、24日の最終本会議で全会一致の採決を目指し、共産議員は文言の修正に応じる姿勢を見せている。
光市議会には、市民団体が上関原発の建設中止と交付金の受け取り撤回を求める請願を提出。3会派から中止や国の安全基準の見通しが整うまで凍結、休止を求める3つの意見書案が出されたが、28日の議会運営委で一本化に向けて審議する。
平生町議会では、共産と無所属議員の2人が16日の定例会開会初日に上関原発建設中止と自然エネルギーへの計画的な転換を求める意見書案を提出。22日の総務厚生委で審議し、同意が得られれば24日の最終本会議で採決する。
田布施町議会は、定例会初日の14日に全員協議会を開いて、各議員が上関原発問題についての意見を出し合い、合意が得られる意見書案を協議する。
周防大島町議会には、共産1人と無所属2人の3議員が「安全が確認できない上関原発計画は認められない」として、原発新設の凍結と自然エネルギーへの転換を求める意見書案を提出。意見書案は他の全議員に配られ、全議員が同意できる文面に修正。賛成者に各常任委員長4人も加わって16日の最終本会議に採決する。
一方、上関町議会では、上関原発反対派3人が白紙撤回を求める動機を提出する方向で検討している。
■周辺市町の意見を聞く−二井知事
二井関成知事は10日、上関原発建設計画の中止や凍結を求める意見書が上関町周辺の市町議会で相次いで提出、可決されている状況について、周辺市町の意見を聞く考えを示した。
二井知事は意見書について「それぞれの市町議会の判断」との見解をあらためて強調する一方、「上関町の政策選択を尊重したうえで、国が原発の安全基準を出した後、何らかの形で周辺市町の意見を聞くことが必要」と述べた。
福島第1原発の事故を受け、山口県も参加する九州地方知事会は6日、国に原発の安全基準見直しを求める特別決議を採択している。 |