岩手のニュース
若い力600人減、活気喪失危機 北里大三陸キャンパス
 | 東日本大震災の影響で、5年間使用停止となった北里大三陸キャンパス=大船渡市三陸町 |
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東日本大震災の影響で、北里大(東京都港区)が岩手県大船渡市三陸町の三陸キャンパスを5年間使用停止にした波紋が、地元に広がっている。学生約600人が突然いなくなったことによる経済的打撃に加え、漁業の町の活気が失われることが心配されるためだ。早期再開を望む地域は、大学とのつながりを保とうと苦慮している。
「三陸を裏切った形になってしまって、ごめんなさい」。夫婦でアパートを経営する大船渡市三陸町越喜来地区の新沼幸江さん(49)に4月、メールが届いた。震災前まで入居していた北里大海洋生命科学部の学生からだった。 アパートは築12年。1Kの家賃は駐車場代込み月4万1000円で、計10室はいつも埋まった。首都圏などからの学生は「第二の古里」と地元になじみ、卒業後も遊びに来た。 それが突然の退去。被災で下宿先確保が難しくなったことや校舎の安全性への懸念が大学側の理由だ。 アパートは現在、被災者や復興業務に携わる人が入っているが、いつまで続くかは見通せない。ローンはまだ残っている。新沼さんは「保護者の立場や大学の言い分も分かるが、本音は戻ってきてほしい」と言う。 三陸キャンパスは1972年開設。2〜4年の海洋生命科学部生と大学院生が実験、研究などに励み、前年度は566人が在籍した。キャンパスがある越喜来地区には、アパート68棟に509人が住んでいた。 同地区の人口は約2900(昨年9月末の住民基本台帳)。ここ10年で約600人が減る中、学生の存在は大きかった。アルバイトで養殖作業を支えたり、無料で地域の小学生に勉強を教えたりもしていたという。 元大船渡市議でキャンパス開設当初からアパートを経営する掛川秀邦さん(71)は「大変ありがたかった。若い人が500人いるのといないのでは、地域の活気が違う」と嘆く。 再開時期の見通しが立たない中、大学とのつながりを維持しようとする動きもある。越喜来漁協は北里大の教員OBと連携し、三陸キャンパスの水槽を使い、ワカメの種苗生産の準備を進める。海の藻類や地形の調査も依頼した。 中嶋久吉組合長(77)は「生物の勉強をするなら、三陸の海のそばがいいという学生もいるだろう。これまでの絆を絶やしてはけない。大学を呼び戻すことは越喜来地区の復興の基本だ」と話している。 (坂井直人)
2011年06月11日土曜日
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