名古屋グランパスが磐田との東海ダービーを1−0で制して、今季リーグ戦初の連勝を飾った。試合を支配しながら終盤まで得点できなかったが、後半44分にゴール前まで攻め上がったDF田中マルクス闘莉王(30)が左からのクロスを頭で折り返し、FW玉田圭司(31)が左足でねじ込んだ。グランパスはアウェー初勝利で勝ち点を12に伸ばし、10位に浮上した。
◆名古屋1−0磐田
DFのポジションに戻りかけた闘莉王が思い直して、前に出た。0−0のまま残り1分。
「ケネディだけでは、もう一押し足りなかったから」。左タッチラインにいる阿部のスローインに「ちょっと待て」と声を掛け、逆サイドに上がると、玉田には「中で受けてくれ」と合図した。
阿部のクロスからシナリオ通りのゴールが決まった。闘莉王がヘッドで落とすと、走り込んだ玉田が左足で激闘にピリオドを打つ。劇的な勝利に、闘莉王がベンチに向かって飛行機ポーズで芝生の上を滑ると、仲間が続いた。
「ドローでは満足できない」とストイコビッチ監督は攻め手を緩めず、それでも試合を動かせなかった瀬戸際。闘莉王が至極の一手で、最高の結果をもたらした。
「(5−2で勝った)福岡戦よりずっと内容は良かった。もうちょっと早い段階で点を取れたらいいんだけど」
前半から磐田を圧倒。ほぼ主力メンバーが戻り、テンポのよいパス回しで、相手陣内でプレーし続けた。力の差は明らかだったが、ゴールが足りなかった。
昨年、何度も劇的なゴールを決めJ1初優勝の原動力となった闘莉王は準備万端だった。
中断期間には、FW陣の練習に交じり、ヘディングシュートの感覚を取り戻した。5月に3週間の故障離脱。チームの低迷もあって守備に追われ、攻撃に力を注ぐ余裕はなかった。
「きょうは闘莉王らしいプレーが出た。(ゴールの場面で)私は攻撃の指示を出していない。彼のクオリティーだ」とストイコビッチ監督は、プレーの質と勝負強さに感服した。
今季初の連勝に「え、そうなの」と苦笑いの闘莉王。昨年の快進撃を思わせる勝ちパターンに上昇気配を感じながらも、まだ3勝目。「もうちょい、走りが足りない。後半、足が止まったし、交代した選手も、もっとやってくれないと難しい試合になる」と勝ち点を失いかけたことを忘れていなかった。 (木本邦彦)
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