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きょうの社説 2011年6月12日
◎「歴史都市」制度 裏付けとなる財源復活を
歴史まちづくり法に基づく「歴史都市」に高岡市が認定され、第1号の金沢市と合わせ
、加賀藩という歴史背景を同じくする認定都市が二つになったことは、県境を越えて「加賀藩文化圏」を盛り立てていく大きな弾みになる。高岡市は認定を受けた「歴史的風致維持向上計画」の柱の一つに「利長・利常への報恩 感謝と前田家の遺産」を設定した。計画策定を通して、金沢、高岡市が歴史的、文化的に密接につながり、街づくりの方向性においても共通点が多いことが鮮明になった。それぞれの計画に沿って「歴史都市」に磨きをかける一層の取り組みを期待したいが、懸念されるのは、財源の裏付けとなる歴史的環境形成総合支援事業が廃止され、国の支援が先細りしかねないことである。 両市はそれに代わる財源として国土交通省の社会資本整備総合交付金などを活用し、歴 史建造物の復元・修理、無電柱化などを進めるが、この交付金は既存の補助金を一本化し、公共事業に幅広く使える仕組みで、「歴史都市」制度の理念は反映されていない。 法に基づく財源がないままでは、自治体もいつまで国の支援が続くのか不安はぬぐえな いだろう。「歴史都市」の価値を明確にするためにも、廃止された財源措置を復活させる必要がある。 政府が昨年実施した行政事業レビューでは、歴史的環境形成総合支援事業について「国 が行うにふさわしい戦略的な目標、優先順位の設定といった観点からゼロベースで考え直す」とされ、「いったん廃止」の判定となった。第1号の金沢市でさえ、2009年1月に認定されたばかりである。制度が始まって間もない段階での結論はあまりに性急で理解に苦しむ。 「歴史都市」制度には100近い自治体が申請し、認定都市や支援事業の絞り込みなど 見直す余地はあるとしても、それは国の制度運用で改善できるはずである。 「歴史都市」は高岡市などを含めて計26市町になった。来年度予算の概算要求へ向け 、政府は金沢など先行都市の状況を検証し、財源を含めて制度を再構築してもらいたい。
◎国・地方の協議の場 消費税で綱引きの懸念
地域主権改革関連法で制度化された「国と地方の協議の場」の初会合が13日に開かれ
る。主テーマの一つは、社会保障と税の一体改革で、消費税の増税分の配分をめぐり、国と地方の綱引きが激化する懸念がある。消費税率を10%に引き上げるという政府の集中検討会議がまとめた改革案に対して、 地方の意見が反映されていないとの不満が自治体側から出されており、協議の場の開催に先立って持たれた関係閣僚と地方3団体の意見交換会でも溝が浮き彫りになった。 こうした状況の下、片山善博総務相が、10%を上回る消費増税も選択肢という認識ま で示しているのは問題である。そもそも10%引き上げの合理的な根拠が示されていない上、国と地方が社会保障財源の奪い合いを演じ、双方を満たすため消費税率のさらなる引き上げ論まで出てくる事態は、決して国民の理解を得られまい。 現在の消費税率5%のうち4%は国の消費税、1%は地方消費税となっている。消費税 は普通税ながら、国税分は予算総則で目的税化され、基礎年金、老人医療、介護の「高齢者3経費」に充てることが決まっている。検討会議の消費増税案は、この3経費の不足分を補うことに主眼が置かれているため、地方側は自治体が単独で行う社会保障事業の財源も考慮すべきと主張している。 片山総務相の意見は、地方単独事業の財源を確保し、財政健全化も進めるなら、消費税 率を10%以上にすることを考える必要もあるというわけである。しかし、この時期、国、地方とも消費増税一辺倒で本当によいのか、税財源の移譲をどう進めるかといった、より本質的な改革論議こそ国と地方の協議の場で行ってほしい。 社会保障と税の一体改革について、政府は今月20日をめどに最終案を決定する予定と いわれるが、消費増税に対する反対は与党内でも根強く、菅直人首相の退陣表明に伴い、首相が党外から登用した消費増税論者の与謝野馨経済財政担当相、財務省が主導してきた一体改革案の取りまとめは、政治的にも難しくなっている。
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