'11/6/11
広島市、子ども条例検討中止
広島市の松井一実市長は10日の記者会見で、秋葉前市政で制定を目指してきた子ども条例について検討作業を取りやめる考えを明らかにした。市議会や保護者の一部に「過度な権利の主張を招く」と根強い反対意見があることも考慮した。2009年12月に市が条例素案を公表して以降、賛否両論が出ていた。
松井市長は、子どもに関する福祉施策は着実に実行されているとの認識を示し、施策実現をうたう条例は必要ないと説明。その上で「条例に納得されていない方々がいっぱいおる中で、無理に条例を通すことはいらんだろうと(判断した)」と述べた。子どもに関する施策は充実させると強調した。
市が公表した条例素案は、子どもの幸福のために(1)安心して生きる(2)愛情をもって育てられる(3)豊かに育つ(4)参加する―の四つの環境整備を柱にしている。
1989年に国連総会で採択され、日本が94年に批准した「子どもの権利条約」に基づく内容。いじめや虐待防止に向けた施策指針のほか、被害者の救済に動く第三者機関の設置も盛り込んだ。
これに対し市議会や保護者、学校関係者の一部が「子どもが権利ばかりを主張し、家庭や学校が混乱する」などと批判し、市は市議会への条例案の提出を見送ってきた。一方で市民団体は「暴力や虐待から子どもを守ることは市の責務であり、明文化は必要だ」と制定を求めていた。