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昨今における日本のベンチャー企業の資金調達のあれこれ
June 09 , 2011 18:16
Mr.5   |
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 今回は日本のベンチャー企業の資金調達について、筆者なりにまとめたメモである。


創業期は Equity 重視

 まず、創業時の選択肢はほぼなく、 Equity(エクィティ=株式)のみによる調達(エンジェル・ラウンド)が一般的である。残念ながら、Debt(デット=融資)に多くの期待を持たない方がいいであろう。

 創業間もない多くの経営者は資金調達というと、銀行借入をイメージすることもあると見受けられるが、それも多くの経営者が経験しているように創業時にお金を貸してくれる銀行は国民生活金融公庫くらいである。国民生活金融公庫が難しい場合、都銀は基本的に難しい。

 無担保の場合、借入の最大金額は信用保証協会が保証する1,000万円がマックスであろう。特殊な人脈や過去に大きな実績がない限り、通常、銀行借入には3期分の決算書類が必要だ。しかも剰余金が貯まって初めて取引を開始してくれる。3期終わって剰余金がないとイメージは著しく悪くなり、当然、借入のハードルはあがる。

 3年も待っていると環境変化の激しいベンチャー業界は風景が一変してしまう。創業間もないときに銀行借入はよく考えた方がいい。それに当たり前だが、返済義務に追われる心理的プレッシャーも小さくはない。

 ちなみに数百万円でも欲しい場合は国民生活金融公庫に応募し、審査が通ると前職の年収に概ねから勘案されて、1,000万円の枠内で貸してくれる。

 余談ではあるが、同じ事業計画書を銀行員とVC(ベンチャーキャピタル)とに説明したときの反応はまるで違う。前者は「もう少し安定的に成長できないのか」といい、後者は「もっと成長する材料はないのか」という。

 両者の信頼を得るために、CFOは銀行用とVC用の2種類の計画書を作成することもある。銀行自体が急成長しておらず、所謂、中小企業の現場周りがメインの銀行マンは急成長する理由が正確には理解できないケースもあるようだ。前回の記事でも記載したように、Debtは過去業績重視であり、そもそも資金の性質が違うため、それに一々反応していては苦労が増えるばかりである。


1ラウンドまで自力で

 ということで、成長志向のベンチャー企業の場合、ファイナンスは Debtではなく、Equity が主体となる。ちなみに、VCの1(ファースト)ラウンドまでに経営チームがすべきことは、ある程度、事業/収益スキームを構築することであり、それがないと話はテーブルにのらない。そこまでは、基本的に自力で頑張るしかないのだ。資金繰りが一番厳しい最初のときでもある。


リスクマネーは健在

 一方、VCのベンチャーへの投資意欲が減退していると言われて久しい。本当に資金調達は厳しいのであろうか。結論から、申し上げると、リスクマネーは健在であり、資金調達は言われているほど、厳しくはない。

 客観的な数字をみてみよう。

 日本ベンチャーキャピタル協会の独自調査によると、確かに最近5期間における投資金額及び投資件数は減少傾向にある。2010年度の投資状況を2006年と比較すると投資金額で7割以上、投資件数は6割以上減少している(参考:日本ベンチャーキャピタル協会2011年2月28日プレスリリースより)。

 VCは、まだまだ複数社で投資実行するケースが多いことから、実際に投資されたベンチャーの数は3分の1から4分の1程度と想定され、その中で1ラウンドを実現できたベンチャーは2割満たないのではないかと見受けられる(筆者の所感)。

 この事実だけみると確かに資金回りは厳しくなっているようだが、本当に投資意欲が減退しているかというとそうでもない。

 実は2007年くらいまでよく聞かれた「金余り」現象は、いまだに続いており、「リスクマネーは投資先を探している」状態だ。投資家が納得できる Equity ストーリーには、1ラウンドでも資金は集まり始めているので「そこまで厳しくはない」というのが筆者の感触である。


資金の出しての状況

 資金の出し手の状況を冷静に見てみよう。

 直近2期間において、日本の資本市場を通じて Equity Finance を実行する上場企業は少なくなく、マーケット全体で2009年度は約7.7兆円。2010年度は約4兆円の Equity Financeが実施された(2011年3月31日付け日経新聞:参考)。ちなみに東京電力社も昨年の秋に4,400億円ほど Equity Financeで集めている。

 また、筆者には香港でファンドレイズ(ファンドの資金調達の仕事)をやっている飲み友達がいるのだが、彼女はかなりの金額を日本のとある基金から LP出資(ファンドへの出資)に成功したと飲みの席でも話題にもなったことをよく覚えている。ちなみにそのファンドはコモディティファンドではあるが。

 上場企業やコモディティファンド等、資金の流動性の高いマーケットにある Equityのみが資金調達に成立しているのであろうかというとそうでもない。

 日本のVCの資金調達状況を見てみれば、JAFCO社は約1,000億円の投資余力がある。色々とあった JAIC社も投資活動に意欲的になってきたようだ。政府系では産業革新機構が9,000億円投資する予定である。最近では伊藤忠テクノベンチャー社もクリーンテクノロジー等にフォーカスしたファンドを組成した(参考:2011年5月13日付け日経新聞より)。

 ファンド単位では資金調達に成功しているのである。日本のVCで投資意欲のあるVCは多くないが「少なくもない」というのが筆者の実感である。

 これらから勘案すると、やはり、2011年春時点においても「資金の出し手は出したがっている」と言っても言い過ぎではない。それどころか、おそらく投資余力のあるファンドは「投資したくてたまらない」はずなのだ。

 従って、条件さえ揃えれば決して VCの Equity による資金調達は難しい話ではない。


大企業との組み方

 大企業から資金調達するのも一考だ。何も資金の出し手はVCばかりではない。現在、大企業の新規事業担当者はネタを探しているケースが多い。積極的な大企業はかなり前向きに出資の話がくる。

 その場合、まずは Equity出資よりも大企業と取引スキームを作ることを勧める。自社とアライアンス候補先の大企業にお金が落ちるスキームを作るのだ。

 大企業には「カネはあるが、何に出したらよいか分らない/迷っている」という会社が多い。大企業には、新規事業部やそれに相当する自由に動けるイケてるオヤジ達がいる場合が結構ある。そのオヤジ達を口説くのが早い。どうやって出会うのかというと、こればかりは普段から色々な人と接点を持ちまくるしかない。「無名の実力者」を探すのだ。


古くからあるオーナー経営者からの出資

 古くからある王道の資金調達方法は、成功している/成功したオーナー企業のオーナーを口説くことだ。オーナーの飲み相手になれるくらい親密な関係を構築する。そうすると「若いが威勢がいいので、出してみよう」となることもある。実はこれが一番早いかもしれない。その後のケアは必要であるが、基本、あなたの応援団だ。成功したオーナーには、若いチャレンジャーや投資好きな方々も少なくないのだ。


インキュベーターからの出資は信頼関係が全て

 エンジェルラウンド限定だが、インキュベーターからの出資というのもある。弊社もこのパターンだ。創業前からインキュベーターと信頼関係を構築する等、「こいつに任せたい」と思わせるくらいの信頼関係を普段から構築すると、いずれチャンスは巡ってくるであろう。

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