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[28293] 【ネタ】素人が考えてみた一発ネタ【IS×AC オリ主】
Name: 星室◆51af70b6 ID:676ae083
Date: 2011/06/11 02:37
 世の中の全ては仮説だ。そう誰かが言った。だから何れ反証されるのだと。
 いや、誰かが言うまでもなく、科学に従事するものならば、それは当然の認識に過ぎない。
 昨日と同じ常識を金科玉条の如く信じていては、明日のノーベル賞を受賞することなど出来ない。
 あの日。つまりは日本国に向けて二三四一発を上回る大陸間弾道弾が撃ち込まれ、そして、その全てがたった一機のISに撃墜され、着弾を阻止されてから、一昨日の常識は通用しなくなった。
 一昨日の常識。それはつまり、若干男有利の男女平等という、コモンセンスだ。
 女にしかISを操縦することは出来ない。その事実によって、男は差別されるようになった。
 女尊男卑。それが、昨日の常識だ。
 だが、同時に、ISは一つの、確実な前提を創り上げた。
 昨日の常識は、明日、存在意義を無くしてしまう、と。

 そして、夜明けは余りにも、誰もが予期出来ぬほどに早かった。



「くっ」
 彼女、セシリア・ウォルコットは、自身が苦境に立たされている、というこの状況を中々受け入れようとしなかった。
 戦闘開始から未だ一分程度だというのにシールドは既に半ば削られていた。相手に対して有効打を与えたかというと、そんな事もなく、むしろ彼女の攻撃は全て、その驚異的な連続加速によって避けられている。
 対戦相手がカナダという、彼女の出身国たる大英帝国の属州の代表候補生だったからか、それとも相手が男だったからか、彼の乗る機体――シュープリス・ブローが、一般的な専用ISよりもコンパクトで貧相に見えたからか。ともかく、彼女はこの模擬戦は、ブルーティアーズのワルツによって相手は為す術も無く平伏すだろうという、些か楽観的過ぎると言ってもいい予測通りに終わるだろうと考えていた。
 相手のIS適正は動かしているのが奇跡。一方、彼女はA判定。誰が勝つかなど、誰が見ても、誰が予測しても、セシリアであることは明々白々たる事実そのものであった。
 いや、事実のはずだった。
 相手をブルー・ティアーズという全方位攻撃が可能な第三世代兵器によって踊らせるつもりが、逆にこちらが相手の高速性能に踊らされている。
 バカげている。そんなはずではなかった。踊らされるのは彼で、踊らすのが自身だったはずだ。


「馬鹿な」
 ビットでは、織斑千冬が驚愕の声を上げていた。
 誰が、一体全体誰が、IS適正が動かせないのが当然と言ってもいいDとCの境界線。その段階なら、最早殆どの動作に致命的な遅延が発生し、視界のほぼ全ては高密度のノイズに奪われているはずだった。いや、そもそもコアが反応しない可能性のほうが遥かに高い。
 それなのに、彼は平然と遷音速域から超音速域での急加減速をこなし、四方八方から襲いかかるブルー・ティアーズの弾幕をその超加速によって避け、それで居ながら正確無比なライフル弾の射撃をセシリアに向けて放ち続けている。
 これが精度と射程においては並ぶ者の居ないBFF製のライフルだったのならば、まぁ、そういう事もあるだろう、の一言で片付け、残りの不自然さには目をつむったかもしれない。だが、現実は非情である。彼が撃っているのは、精度を犠牲にして速射性を高めたレイレナード製04-MARVEそのものだった。


「ちっ」
 頭痛が世界を支配する。視界を覆い、奪い去ってしまう高密度ノイズでもなく、やたらと動作が遅延するために生じるイライラでもなく、ただ頭痛が彼の世界を支配していた。
 模擬戦中に頭痛だって? 君は昨日寝てないのかい。そう、普通の人ならば反応するだろう。だが、原因はそこにはない。
 彼の首から伸びる黒色のケーブル。その意味さえ判るのならば、彼の頭痛の原因もまた明白である。ただ残念なことに、このIS学園にはそのような都合のいい人物は誰も居なかった。
 頭痛に、彼の脳内を縦横無尽に利用し尽くすAMSの高速並列演算に耐えながら、彼はクイックブーストでセシリアの弾を避け、同時に04-MARVEを正確無比な射撃で叩き込み、しかし過剰殺傷にならないように気を使いながら適度に、しかし、故意にとは気付かれぬように外していく。
 ふと、彼は割り込み信号がIS統括プログラム――アナトリア製の特別品、奇跡を遍在へと書き換える奇跡――から届いたことに気づく。
『MAIN MSSN CMPL|SUB MSSN PRMT(主任務完了|副任務許可)』
 彼が待ち望んだ、このクダラナイ戦闘を終わらせることを許可するシグナルを。
「セシリア・ウォルコット。そろそろ、終わりにしよう」
『あら。負けてくださるのかしら』
 相も変わらぬ貴族的な物言いで、彼女は返してくる。
「いや、負けるのは君の方だ。キゾクサマ」



 連続クイックブーストで超音速域を維持し、彼はセシリアから距離を取った。彼のISにとっては不得意な距離であり、そして、セシリアのブルー・ティアーズに取っては得意分野でもあるその距離にわざわざ退いたことを訝しく思いながらも、セシリアは好機と言わんばかりにブルー・ティアーズのビットと、スターライトMkIIIを持って総攻勢に出る。
 激しい弾幕が地を抉り、砂埃を高く舞い上げる。
 彼は動かなかった。まるで全てに諦めてしまったかのように避けようともせず、ただ弾幕に身を晒し続けた。
 砂埃が収まるのを待つまでもなく、セシリアは試合は終わったことを確信していた。そして、その端正な顔には、最後の最後で勝利への渇望を止め、無抵抗な負けを選んだ男への軽蔑を浮かべる。いや、彼女だけではない。観戦している女子生徒達の半数はそのような表情を同じく浮かべ、残り半数は不自然なまでの棒立ち被弾に困惑の表情を浮かべている。
 だが、砂埃が収まると現実が明らかとなる。まるで蒼ざめたヴェールが剥がれ落ちたかのように。
 爆心地、最も被害を受けているべきである場所、そこには彼が、まるで何事も無かったかのように立っていた。場違いなまでに幻想的な、雪のような白黄色の粒子が彼の周りを浮遊し、安定した還流となって彼の周囲に粒子膜を形成している。
 その粒子膜に包まれながら、彼はその乏しい表情筋を総動員し、まるで悪戯が成功した子供のように笑みを浮かべている。
 粒子が彼の後ろへと集まり始める。甲高い収縮音を響かせながら、その濃度は上がり続ける。
 不味い。
 セシリアがそう思ったときには、既に遅かった。
 一瞬の無音は、その直後に続いた爆音に掻き消された。
 そして、一瞬と言ってもいいほどの短い時間で超音速域に達した彼は、あっと言う間に、まさかの反撃に反応できないセシリアに接近し、すれ違い様に右手に装備した07-MOONLIGHTの斬撃を加えた。それは、正確無比にセシリアの首筋を貫き、彼女の絶対防御を発動させる。
『試合終了。勝者、ユール・キングスポート』
 そして、幻想的な水晶の夜は、その終わりを告げる第一歩を歩み始めた。



IS×ACクロスオーバーネタ。という割にはAC成分低めな感じがするけど。
一発ネタ。

ACV期待だけどどっちのハードで買うべきかな、と迷う。PS3版ACfAがアレだったので……


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