涼宮ハルヒシリーズについて(その3)



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46.キョン氏には年上の兄弟姉妹がいる?  

 キョン氏の語りはリズムがよいだけに、つい読み流してしまうことがある。そのせいで、ちょっとした記述を見逃したりしがちだ。
 エンドレスエイトの冒頭部、「暴走」のP5から6にかけての記述もその一つ。
 そこには、こう記述されている。

「……久しぶりに顔を合わせたイトコやらハトコやら甥やら姪やらと二週間ばかり川や海や山や草原で誰かにザマミロと言ってやりたいほど心ゆくまで遊び倒してやった」

 注目すべきは、「甥」と「姪」という言葉だ。
 これは、兄弟姉妹の子を指す言葉である。
 つまり、キョン氏には子持ちの兄弟姉妹がいるということではないか。

 キョン妹はこの段階ではまだ小学校五年生だから、子持ちのわけがない。
 とすれば、当然、年上の兄弟姉妹が一人はいると想定せざるをえない(一人の場合は、甥と姪は年齢の近い兄弟姉妹あるいは双子だろう)。
 子持ちだから独立しているということで、同居はしておらず、普段は言及すらされないということなのだろう。
 年齢はエンドレスエイト当時で、最低でも21歳前後、最高は20代後半ぐらいと推測される。

 とすれば、この三人(あるいはそれ以上)の兄弟姉妹の間は、かなり年齢が離れているということになる。
 キョン氏の御両親は、まあその……いろいろと頑張っているということなのだろう。




47.孤独なエージェント、朝比奈みくる(小)  

 古泉一樹には、「機関」の同志たちがいる。
 長門有希には、バックアップとして朝倉涼子がいたし、今はお目付け役として喜緑江美里がいる。互いに牽制しあっているような感じだが、一応、仕事仲間には違いない。

 よく考えてみると、朝比奈みくる(小)にはそのような仕事仲間というのがいない。
 普段の時間常駐任務は完全に単独任務だし、ときどきある時間工作任務も上司から一方的な指令が来て一人でこなすだけだ(キョン氏など、未来人ではない部外者を巻き込むことはあるにしても)。
 朝比奈みくる(大)がフォローに入ることはあるが、(小)と直接的な共同行動をとることはないので、(小)の主観としては仕事仲間はいないわけだ。

 つまり、彼女は任務遂行においては常に孤独なのである。
 これって結構辛いんじゃなかろうか。
 「朝比奈みくるの憂鬱」でついに泣いてしまったのも当然なのかもしれない。




48.2円をめぐる仁義なき戦い  

 それは、「動揺」P13における鶴屋さんの発言だった。
「えーと、三人だよね? じゃ全部で五百円でいいやっ。大サービス!」

 ちょっと待った! 鶴屋さん!
 500円じゃ、三人で割り切れないよ!
 普段はその明るい性格と言動でみんなを幸せな気分にしてくれる彼女であるが、これは争いの元を撒き散らす問題発言ではないか!?
 501円なら割り切れたのに……。

 キョン氏、谷口氏及び国木田氏は、どうやってその代金を配分したのだろうか。非常に気になるところだ。
 キョン氏は小銭をたくさん持ってそうなので、とりあえず、一人頭166円まではきっちり分けたと仮定しよう。問題は、残りの2円だ。
 キョン氏は財政状態が常にピンチだから、1円だってゆずれないところだろう。
 谷口氏も、この前の場面でノーギャラで水中ダイブさせられたことにぶつくさと文句を言っていたから、この1円にもこだわるかもしれない。
 とすれば、国木田氏が2円全部を払ったのか?
 いや、それはどうだろうか。彼は、のほほんとしているようでいて、意外としたたかな男だ。
 彼は「じゃんけんで決めようよ」と提案した可能性が高い。
 キョン氏にしても谷口氏にしても、じゃんけんなら異論はなかろう。
 キョン氏はこういう勝負事には無駄に強そうなので、谷口氏と国木田氏が1円ずつ負担したという結果になった可能性が高い。

 って、我ながら、何の考察をしているのやら……。




49.宇宙人たちの存在感を消す特技について  

 「分裂」P125。佐々木さん、橘京子、周防九曜との遭遇シーン。
 この段階で、キョン氏は「佐々木は一人ではなかった。両脇に合わせて二人の少女を随伴している」と叙述し、相手方が三人いることを認識していた。
 それにもかかわらず、P129で、周防九曜のことを「最初、何がそこにあるのか解らなかった……なのに認識した瞬間、その少女は百年前からそこに立っていたような確固とした存在感を俺に与えた」と叙述している。
 これはいったいどういうことか?
 周防九曜の何らかの能力と考えるのが妥当と思われる。
 これについては、次のように推測できる。

 どんなに近くにいても、その辺にいる多数の通行人たちのうちの一人としてしか認識させない──そんな能力だ。
 仮に、これを「半ステルスモード」と名付けよう。これは、長門有希が「陰謀」冒頭で12月18日に時間遡行したときにやった不可視遮音フィールドみたいな完全ステルスモードではない。人間の五感にはしっかり捉えられ、脳にもその対象が認識されるけれども、固有名詞的な意味合いでの個体としては認識させない。そういう技なのだ。
 だから、キョン氏は最初からきちんと三人いると認識しているし、佐々木や橘京子のことは、個体として明確に認識できている。だが、周防九曜はキョン氏の目の前で半ステルスモードから通常モードに移行したため、キョン氏を驚愕させたというわけだ。

 実は、この技は喜緑江美里もやっていた。
 「分裂」P19〜20である。ここでも、キョン氏はかなり驚愕していた。
 ここでは、会長は喜緑江美里を初めから個体認識ができていたようである。とすれば、この半ステルスモードは、相手を選択して発動することも可能ということなのだろう。
 「まるで会長の影に同化していたのが発声と同時に実体化したかのような」と描写からすると、周防九曜の場合よりステルス度は高かったようだ。通行人Aよりもさらに存在感を希薄化させていたのだろう。
 喜緑江美里がわざわざこんなことをしてのけたのは、のちの周防九曜対策のために、キョン氏ほかを慣らしておく必要性があったためだろうか。
 それとも、喜緑江美里も周防九曜も、この半ステルスモードこそがデフォルトなのか。
 少なくても、観測者あるいは長門のお目付け役としての喜緑江美里ならば、これがデフォルトであっても不思議ではない。

 喜緑江美里は、「編集長★一直線!」でも、この技を使っていた疑いがある。
 キョン氏は、「憤慨」P29で書記らしいと認識しつつ、P36で顔をあげた彼女を喜緑江美里だと認識して驚愕している。
 P29の段階で、キョン氏としては「どっかで見たことがあるような気がした」ぐらいの叙述があってもいいような気もするので、喜緑江美里が弱めの半ステルスモードを使っていた可能性がある。

 なんにしても、どんなに近くにいる知り合いだとしてもただの通行人Aまたはそれ以下とは、気味の悪い技である。




50.再生された情報統合思念体について  

 情報統合思念体は、「消失」にて一度消去され、のちに再生されている。
 この再生された情報統合思念体は、果たして元の情報統合思念体と同一のものだろうか?
 再生主にとって都合のいい存在として作り変えられたのではないか?
 そんな疑問が生じてくる。

 ここで問題となるのは、再生主は誰かということだ。
 「陰謀」P29で、長門有希は「わたしはわたしが現存した時空間の彼らと接続している。再改変はわたし主導でおこなう」と発言している。
 とすれば、情報統合思念体の再生も、長門有希が実行したということになる。ただし、長門有希単体の能力では不可能だろう。情報統合思念体の力を用いたか、涼宮ハルヒの力を借用したことは、確実だ。
 ここでいう「彼ら」とは情報統合思念体のことであり、その力を用いるにせよ、涼宮ハルヒの力を借用するにせよ、その監視下のもとで作業を行なったことは間違いない。
 とすれば、再生主は情報統合思念体ということになる。情報統合思念体は、再生後の情報統合思念体の都合のよいように再生された可能性があるわけだ。

 ……因果関係の無限ループである。
 再生後の情報統合思念体が元々の情報統合思念体と同一であるならば、元々の情報統合思念体を再生しただろう。
 再生後の情報統合思念体が長門有希にとって都合のよい存在であるならば、情報統合思念体を自分に都合のよい存在として再生しようとする長門有希を止めなかったに違いない。
 再生後の情報統合思念体がX氏(←どんな存在でも当てはめられる)にとって都合のよい存在であるならば、X氏に都合のよい存在として再生するように長門有希に指示したことだろう。
 つまり、いかようにも考えられるわけである。




51.「機関」vs未来人  

 「機関」と朝比奈みくるの未来人組織が対立した場合に、双方がとりうる戦略・戦術について考えてみたい。

 「機関」としては、未来に関する情報という点で未来人組織に圧倒的に劣る。まずは、この点を何とかしなければならない。
 基本的には、朝比奈みくる(小)のような時間常駐員や朝比奈みくる(大)のような時間工作員の動向を根気強く追跡し、その行動パターンを分析して、未来人組織の目的や規定事項などを明らかにすることだ。
 それができれば、規定事項を人質にとって有利に事を進めることが可能となるし、時間航行技術開発過程における規定事項を破壊して未来人組織そのものを消滅させることすらも可能かもしれない。
 問題は、未来人組織が情報漏洩には大変気を使っていることだ。禁則事項による呪縛もそうだが、朝比奈みくる(大)(小)の動きが目立ちすぎるのは彼女らが囮役も果たしているからという可能性も高い。彼女たち以外の時間常駐員や時間工作員を探り出す必要がある。
 また、未来人組織は、心理学的な手法を用いて、現「時」人を操ろうとする傾向がある。そういう手法にまんまと乗せられないように何らかの防御手段を講ずる必要があろう。

 未来人組織としては、まず防御をしっかり固めることだ。現「時」人に対する情報漏洩を最小化し、規定事項を推測させない。これが最も大事なことである。
 時間の流れを常に精密に観測して、史実との間のズレを早期に発見することも大事である。そのズレが「機関」による規定事項破壊行動である可能性があるからだ。早期に発見できれば最小限に介入で補正できる可能性が高く、規定事項補正のための介入による他の規定事項への影響も抑えられる。
 攻撃手段としては、「機関」の形成過程に介入して、「機関」そのものを無きものにしてしまうという強力な手段がある。ただ、これをやってしまうと、副作用として関連する規定事項を破壊してしまう可能性が高いので、最後の手段ではあろうが。
 強力すぎる武器をもつがために、かえって攻め手を手加減しなければならない点が、未来人組織の弱点でもあろう。




52.情報統合思念体vs未来人  

 情報統合思念体と朝比奈みくるの未来人組織が対立した場合に、双方がとりうる戦略・戦術について考えてみたい。

 未来人組織の攻撃手段としては、長門有希の暴走によって情報統合思念体が消滅した12月18日事件の過程に再介入して、情報統合思念体そのものを再生させないというものが考えられる。
 ただ、これをやってしまうと関連する規定事項を破壊する可能性が高く、ほとんど禁じ手であろう。
 似たような手法としては、インターフェースを誘導して、長門有希の場合と同様の暴走を引き起こすことだ。ただし、未来人組織をも消されてしまう可能性があり、諸刃の剣であろう。
 また、人間に対する心理的誘導に長けた未来人組織といえども、インターフェースの誘導は難しいと思われる。インターフェースは人間とは似て非なるものだ。充分な観測と解析によってパターンを分析しないと、誘導は難しいだろう。
 最後の手段は、涼宮ハルヒを心理的に誘導して「力」を発動させ、情報統合思念体を消滅させることだ。これも、諸刃の剣であるが。

 情報統合思念体としては、通常の体制をとるだけで充分だろう。油断しなければ勝てる。
 特に気をつけることといえば、長門有希の暴走のような事態を引き起こさないように、監視体制を整えることぐらいだ。これは既に行なわれていることであろう。
 未来の情報も同期すれば簡単に知ることができる。涼宮ハルヒの「力」を利用して情報統合思念体を消滅させようとする策動も、早期に察知すれば、防ぐことは容易である。
 攻撃手段としては、お得意の情報改変によって、時間航行技術開発過程における規定事項を完膚なきまでに破壊して、未来人組織を消滅させることが可能だ。




53.情報統合思念体vs「機関」  

 情報統合思念体と「機関」が対立した場合に、双方がとりうる戦略・戦術について考えてみたい。

 「機関」がとりうる手段については、未来人組織と大差はない。
 長門有希その他のインターフェースを暴走させ、あるいは涼宮ハルヒの「力」を発動させて、情報統合思念体を消滅させることだ。諸刃の剣であることはいうまでもない。

 情報統合思念体の対応としては、これも、未来人相手の場合と大差ない。
 インターフェースが暴走しないように監視し、涼宮ハルヒの「力」を利用しようとする策動を早期に察知することだ。
 攻撃側に回った場合の優位はいうまでもない。情報改変など使わなくても、インターフェースの物理攻撃だけで、「機関」を叩き潰せる。赤子の手をひねるようなものだ。

 これだけでは味気ないので、「機関」が未来人よりは有利な点を考えてみよう。
 「機関」は、涼宮ハルヒの精神状態については未来人よりもはるかに詳しく把握している。「解ってしまうから仕方がない」超能力者たちを有しているからだ。
 これは、涼宮ハルヒの「力」を誘導していく上では非常に有利な点だろう。情報統合思念体の裏をかける可能性も高い。
 また、涼宮ハルヒの「力」が暴走してしまったときでも、被害が未来人よりは少ない可能性がある。
 未来人組織は、ちょっとした史実からの乖離が因果関係の連鎖を通じて、組織のみならずメンバー個々人の存在そのものの消失に結びつくおそれがある。
 それに対して、現在に生きる「機関」は、組織や超能力、さらには個人の記憶や記録を失うことはあっても、メンバー個々人の命は助かるかもしれない。




54.各キャラに向いている職業は?  

 涼宮ハルヒ。
 彼女の性格からして、雇われる立場は向かない。よって、OLはまずない。
 ならば、経営者かとも思うが、あの破天荒な行動方針では、あっという間に経営破綻確実だ。どうしてもやるというなら、補佐役に古泉氏と長門有希、ストッパー役にキョン氏が不可欠だろう。
 ハカセ君の家庭教師をしていたり、キョン氏に個人教授していたりといったところから見ると、個人経営の家庭教師は向いてそうだ。
 発想の飛躍が優れているという点からすれば、研究職が最適だろうと思われる。研究テーマも金も時間も自由にやり放題という環境を与えられれば、世紀の大発見や大発明をしてくれそうだ。

 キョン氏。
 一般人代表としては、無難にサラリーマンだろうな。
 あえてそれ以外というなら、作家だ。彼の叙述能力は非常に優れている。高校時代の経験を小説にすれば、馬鹿売れしそうだ。

 古泉一樹。
 彼は、どんな組織に属していても、ナンバー2が似合いそうな男だ。内閣なら内閣官房長官、軍隊なら司令官の下につく参謀長といった具合。
 涼宮ハルヒの監視役というお役目が続くとすれば、彼女が経営する会社の取締役か、彼女が属する研究所の事務局総務課長あたりが可能性が高い。

 長門有希。
 まず思い浮かぶのが司書である。
 しかし、読書に没頭して仕事をさぼっていると首になるという点がネックだ。まあ、彼女なら、片手間で完璧に仕事をこなして、読書の時間を確保するだろうが。
 次に、コンピュータ関連の仕事が思い浮かぶ。ただ、人間をはるかに超える能力を発揮してしまうと人外疑惑が持ち上がるという点がネックだ。
 基本的な能力は非常に高いので、コミュニケーション能力が重要な仕事以外は、なんでも無難にこなすだろう。

 朝比奈みくる。
 彼女の容姿からすればアイドルが向いているのだが、時間工作員という身分上、目立ちすぎるのはまずい。
 接客業は、ドジっ娘属性のため不向き。
 客寄せパンダの広報担当あたりが無難だが、これも目立つんだよなぁ。
 そもそも、本業の時間工作員自体が不向き。彼女は容姿が目立ちすぎるからだ。この手の工作員には、キョン氏のような容姿の人物が適任である。
 逆に言うと敵をひきつける囮役としては、彼女以上の適任者はいない。とすれば、アイドルでもやっておおいに目立ってもいいのかもしれない。

 鶴屋さん。
 鶴屋家の次期当主ということで、当然、経営者でしょうな。
 彼女なら、部下に有能な人材がいくらでも集まってきそうだから、経営もうまくいくだろう。

 会長。
 彼は、政治家に向いてる。表と裏をあれだけ見事に使い分けられるし、指導力もあるし、実務能力も優れているから、実力派の政治家になれるだろう。

 喜緑江美里。
 会長の秘書。真っ先にこれが思い浮かんだ。
 彼女がつけば、会長は政治家としては無敵の存在になれるだろう。
 そのほかにも、彼女ならなんでも無難にこなせるだろうが。

 朝倉涼子。
 真っ先に思い浮かぶのは暗殺者。人間ごときには阻止不能というわけで、ゴルゴ13を超える暗殺者になれる。
 変化のない状態を嫌うという点では、OL等には向かない。




55.涼宮ハルヒの分裂及び涼宮ハルヒの驚愕について  

 *誤字・脱字のチェックをし切ってませんがご容赦を。

55−1.プロローグ
 分裂p8「やっぱり、やっと来たかって感じがするぜ」→分裂発刊の時点で前巻から一年弱がすぎてたわけで、著者谷川氏のメタな自虐ネタだろう。
 分裂p15における「異世界人」への言及→これは完全に読者のミスリードを誘う目的の記述。このあと、分裂・驚愕を通じて通俗的な意味での異世界人の登場はなく、読者に渡橋ヤスミを異世界人じゃないかとミスリードさせるのが目的としか思われない。
 分裂p19、キョンが喜緑江美里の存在を忽然と認識して驚いた場面。のちに登場する周防九曜も似たような技を使っている。相手の五感に捕らえられていながら固有名詞的存在としては認識させないといった感じだろうか。「目の前にいても匿名の通行人Aなみの存在感の希薄さ」しか有しない人がいきなり喜緑江美里という固有名詞的存在に変換されたらそりゃ驚くだろう。今後、この技を「半ステルス機能」と呼ぶことにしよう。
 北高の今年度の各クラブの予算分配会議は、長門有希と喜緑江美里のなんらかの操作がなされたようだ。文芸部の予算はつつがなく確保され、今年度もSOS団の活動に流用されることだろう。
 分裂p23、古泉氏のミイラ捕りがミイラ発言。おまえがいうなって感じだ。涼宮ハルヒを監視しに来たはずがすっかりSOS団に取り込まれたミイラ捕りさんめ。
 分裂p30『大脳生理学的見地から読み取る言語の不完全性と対話者間における意思伝達』→のちのβ−7における長門有希の発言を読んだあとでこれを思い出すと、妙に切なくなってくる。それはともかくとして、長門有希は催眠術を使って文芸部に新部員が来ないように手を打ったようだ。
 コンピ研部長氏の長門有希次期コンピ研部長化計画はうまく行くだろうか。長門有希さえその気があれば、部員の圧倒的多数の支持で推挙されることは間違いないだろうけど。その超人的コンピュータースキルを抜きにしても、おそらくオタ集団であろうコンピ研部員には、長門有希は好ましいタイプであろうからな。
 分裂p36、キョン氏が古泉氏の様子が変だと気づく場面。いったい何が起きたのかと読者を引き込み始めるが、そこはやはりキョン氏だ。その後も、だらだらと叙述を続ける。
 分裂p49、長門有希のシャミセンへの言及。伏線のように思わせておいて何もなし。情報統合思念体の命令で封印した宇宙ウィルスの状態を確認しただけのようだ。
 分裂p52、閉鎖空間の発生が頻発しているという事実。しかし、キョン氏には心当たりはない。はて、いったい何が原因だ?
 というわけで、分裂p54から延々と回想が始まるわけだが、見事な叙述トリック。ミヨキチの件といい、谷川氏はこういうのが好きなんだろうか。まあ、推理物の作家でなくても、物書きとしては一度や二度はやってみたいネタではあるのだろう。雑誌での先行掲載ではネタばらしの直前で記述が切られていたはずで、読者を引き込むには充分な効果があったものと思われる。
 分裂p61、古泉氏の「そうはいきません。涼宮さんの悩みは、僕の悩みでもありますからね」発言。古泉氏にしてはストレートな表現だ。
 佐々木とキョン氏の春先の邂逅は偶然のものか仕組まれたものか? 未来人からすればどっちでもいいことだろう。既定事項であるなら、発生すればそれでよし、発生しなければ発生するように誘導するだけだ。既定事項でないとすれば、それこそどちらでもいい。どのみち、あとで邂逅することになっているのだから。ただ、涼宮ハルヒの閉鎖空間を誘発させ、古泉氏に何か起きるぞという注意を促すという効果を考慮すれば、既定事項である方が自然だろうと思う。
 分裂p72、古泉氏がとても遠まわしな表現で、佐々木が特別な属性持ちの人物である可能性について言及。遠まわしすぎて、この段階ではどの種類・レベルのものなのかはさっぱり分からない。
 分裂p73、佐々木の「親友」発言。単なる知人でも友達でもなく、かといってもちろん彼女でも恋人でもなく、実に絶妙だ。だからこそ、涼宮ハルヒは閉鎖空間を頻発するようになってしまったのだろう。分裂p92で古泉氏が解説しているように。そして、このとき、キョン氏もその絶妙さは感じてはいたようだ。分裂p74の「なんとなく居心地が悪いのはどうしたことだ」という記述がそれを物語っている。ただ、それが涼宮ハルヒに影響しているという点に思いが至らないのが、キョン氏らしいところ。
 分裂p75、佐々木が涼宮ハルヒを知ってる発言。このときは有名人だから噂は聞こえてきてるというごく普通の話だったわけだが、のちに、佐々木は涼宮ハルヒと同じ小学校だったことが明かされるに至っては、これは伏線だったのかと……。
 同じく、佐々木の国木田への言及「もっと学力に応じた高校に行けたのに、わざわざ県立を専願で受けた変わり者だ」→これもさりげに伏線で、のちに国木田氏が理由をばらしてくれた。
 分裂p79「どこかの部族の呪術師が被るようなお面をじっと見つめる長門の姿」→長門有希のお面マニア描写が一つ追加。
 キョン氏の古泉氏・長門有希の小難しい話への耐性は、中学時代に佐々木によって鍛え上げられたものだった。
 分裂p90、神人がおとなしい旨の言及。これは、実は涼宮ハルヒの力の進化の過程の一場面だったわけだ。この時点では、古泉氏をもってしても、それに気づくことは不可能だが。
 分裂p90−91、古泉氏にしてはかなり踏み込んだ表現。心労がかさんでるせいか焦りすら感じられる(「溜息」後半部のときのような)。それでも、キョン氏はしがにもかけない。
 分裂p94、古泉氏の「解りやすい対処方法も見あたりません。実はなくもないのですが──」→何を言おうとしてたんだ? 気になって仕方がない。キョン氏が涼宮ハルヒの背後から近づいて耳元でアイラブユーですかね(笑)。


55−2.第一章
 ここから、当日が「何曜日」かが記述されるようになる。第二章以降、分裂してややこしくなるので、「今」が「いつ」なのかという認識は重要な要素。
 金曜日。
 分裂p112から始まる短歌の掛け合い。涼宮ハルヒは百人秀歌は知らなかった模様。
 百人一首と百人秀歌は、97首が同一。百人一首が100首、百人秀歌が101首。同一な97首についても、両者で微妙に文言が違う場合があるそうだ。
 つまり、このあとのαとβの関係を暗示しているようにも思われる。
 分裂p119「そのような意味に該当する四字熟語は辞書的には存在しない」→本当か? データベースにかけては一級品の情報統合思念体を背後に持つ長門有希の発言だから、本当なんだろうなぁ。
 分裂p123「それはもう始まっていたんだ」→このあたりで時間軸分岐の前兆らしきものはあったというのが、キョン氏の見解のようだ。しかし、明確に分岐したのはやはり風呂場での電話の場面からだろう。そうでないと、のちの藤原氏の描写と矛盾が出る。
 翌、土曜日。
 分裂p125からの佐々木団との邂逅場面。「陰謀」での朝比奈みくる(みちる)誘拐事件の効果と「暴走」での雪山事件の効果が充分に出ている。キョン氏にとっては、佐々木以外の佐々木団の連中はみんな敵だ。この認識は、以後も基本的に揺るがない。
 周防九曜が、半ステルス機能を披露。喜緑江美里よりもギャップが激しいので、キョン氏を驚愕させるには充分すぎた。
 佐々木に言わせると、周防九曜は、ストレインジ(風変わり)というよりは、キュア(奇人)だそうだ。
 分裂p131、周防九曜の「──今度は…………間違えない──あなたが…………それ」発言→光陽園学園の制服ともあいまって、谷口氏のクリスマス前に交際開始でバレンタイン前にふられた彼女はこいつだろうという説がそこここで唱えられるようなったが、のちにそれが正しいことが判明した。キョン氏と間違えられてしまった谷口氏、ご愁傷様。
 周防九曜のコミュニケーション性能は、そのときどきによってムラがあるようで、このときは特にポンコツだった。それがかえってキョン氏を油断させたようなところもあり、わざとだとすればかなりのものだ。
 分裂p134、キョン氏、周防九曜との比較で、朝倉涼子に言及→朝倉涼子復活フラグその1。
 佐々木の涼宮ハルヒとの異なる部分がこの場面で出ている。ハルヒ「未来人、宇宙人、超能力者は来なさい」→キョン「おまえのそばにいるぜ」(溜息冒頭)→ハルヒ「なに馬鹿なこといってるの」。佐々木「未来人、宇宙人、超能力者ね。信じるかどうかは微妙だね」→キョン氏の反応をみて→佐々木「なるほど信じる気になってきた」。涼宮ハルヒが最後は常識にとらわれているのに対して、佐々木は周囲の信頼に足る人間の反応を見て経験則的・論理的に結論を出す。
 涼宮ハルヒも、ここで佐々木以外の佐々木団の連中と邂逅するわけだが、この時点で彼女の無意識はその連中を危険な要素と判定し「分裂」を決意したのだろうと推測される。


55−3.α及びβについて
 古泉氏の解説にそえば、αは、涼宮ハルヒの無意識が避難所として発生させた時間軸ということになる。
 βの涼宮ハルヒは、長門有希のことにかかりきりで余裕などなく、またクライマックス場面の完全に気絶した状態では閉鎖空間も神人も発生させることはできないから自分の命も守れない。情報統合思念体が張っておいたらしい詳細不明なガード防壁も、周防九曜の情報的攻撃に対してはそれなり有効だったようだが、ありとあらゆる事態に完璧に対処できるようなものでもなかったことは明らか。
 よって、心に余裕をもてる状況をαとして作り出した。で、αの涼宮ハルヒも、自分で自分の力のことは自覚したくないから、無意識に分身として渡橋ヤスミを生み出し、αβ融合までの下準備と融合後の現地対応を一任したわけだ。
 この渡橋ヤスミは、涼宮ハルヒの無意識を反映しているものと考えれば、読者は彼女をめぐるいろんな描写にニヤニヤできることだろう。
 そういうわけなので、αの方はいまいちリアリティにかける。普通に考えたら入団希望者があんなに集まるわけないし、涼宮ハルヒの無茶な入団試験をパスできる一年生なんているわけないのだ、本当は。
 藤原氏はαの存在を知らずに慌てていたが、彼の未来組織はそれを知っていたはずだろう。ただ、朝比奈みくる(大)推測によれば、彼の未来組織は彼の行動を利用するつもりしかなかったようだ。だから、彼にそれを知らせなかったのである。
 αを分裂させた時点では、その時間平面には藤原氏はいなかったはずだ(あの性格だから、過去でのんびり観光したりせずに、目的の時間平面へ直接時空転移していたはずである)。よって、αには藤原氏は不在で間違いあるまい。
 周防九曜は、αにもいたかもしれない。しかし、天蓋領域は涼宮・佐々木融合閉鎖空間を観測価値ありと判断していた節もあるので(この判断は、おそらく情報統合思念体も同様と推測される)、αの周防九曜には不干渉を命じていただろう。
 橘京子は間違いなくαにもいただろう。αの橘京子は、いっこうに姿を現さない藤原氏と全くやる気のない周防九曜に対していらだっていたに違いない。
 αでは、佐々木がからんでくることもない。これは、涼宮ハルヒの無意識の願望が反映されていた可能性も高いかも。
 よって、αは佐々木団の影響が排除された世界として時が流れるわけだ。それゆえ、涼宮ハルヒにとどまらず、みんなどこか能天気だ。これを「α能天気現象」と名づけよう。
 βの事象がαの事象とシンクロする叙述は、なかなか面白い。さらに時が進むにつれて、時がズレながらシンクロするさまなどは、さらに面白い。
 β後半では、長門の活動が封印。まあ、長門が機能完全で待機してれば、九曜相手でも勝てそうだったからなあ(少なくても、喜緑江美里と朝倉涼子が加われば余裕で勝てたはず)。なんといっても涼宮ハルヒよりも便利に使えるキャラが長門有希なわけで、それを封印した舞台装置を設定するというのが著者谷川氏の意図なのだろう。


55−4.α
 土曜日夜。
 α−1。
 キョン氏にとっては、正体不明な女からのいきなりの電話。渡橋ヤスミが、βの佐々木の行動と無理にシンクロさせようとしたというのが真相だろうか。
 分裂p156「わたぁし」→「渡橋」でした。伏線だったのね。
 分裂p156「あたしもこんな妹が欲しかった」→涼宮ハルヒの無意識反映。妹ちゃんが欲しかったのね。
 分裂p157「考えてもしかたないな。なるようになるさ」→早くもα能天気現象。
 α−2。
 αでは古泉氏に電話をかける前に、妹の宿題を手伝う。
 分裂p172、古泉氏の「相手がアクションを起こしてくるまで待っていればいい」発言→α能天気現象。
 α−3。
 分裂p174。キョン氏は長門にも電話しようとして思いとどまる→βとのズレ。

 日曜日。
 α−4。
 分裂p175。βとは違って、世はすべて事もなし。

 月曜日。
 α−5。
 分裂p224。βとは一日遅れで、長門有希から「天蓋領域」命名の件を聞く。
 分裂p226。長門有希の「今まで名付けるという概念すら持てなかった」→分裂p132の佐々木の「欠けているのは歯車ではなく、固有名詞に対するこだわりさ。彼女は個人というものが上手く認識できないようなんだ」発言ともあいまって、宇宙存在が物事を認識するやり方というのがうかがわれる。
 要するに今まで対象を一般名詞としてしか認識しなかったのだろう。区別する必要がある場合は、見つかった順番に番号でもふっていたに違いない。
 ところが、情報統合思念体は、涼宮ハルヒという特異な存在や、インターフェースを通じての人類の観測を通じて、固有名詞という概念に注目するにいたったのだろう。
 分裂p227。キョン氏、情報統合思念体のインターフェース作成センスをほめる。まあ、情報統合思念体の方が、地球の観測歴は長いだろうから、インターフェース作成もこなれてる感じがあるよね。ここで、朝倉涼子についても言及→朝倉涼子復活フラグその2
 分裂p229。涼宮ハルヒのキョン氏への個人授業。なんとなく佐々木に対抗してキョンとの関係を深めたい感じがにじみでてるよなぁ。
 そして、入団希望者がぞろぞろと登場。私がキョン氏だったら、「そんな馬鹿な」と叫びたい。渡橋ヤスミがチート能力で一年生10名ほどを操ったに違いない。
 α−6。
 分裂p258−259。ちゃんと数えて持ってきたはずの椅子が足りない事件。この時点で、渡橋ヤスミがあたかも最初からそこにいたかのように部室に混入してきたものと推測される。おそらく、古泉氏も気づいただろう。
 そして、それはキョン氏のアンテナにも引っかかった。まあ、涼宮ハルヒの分身ならそれも当然か。キョン氏に気にかけてもらいたいという願望がかなったのだろうから。
 分裂p271、涼宮ハルヒの「あたしと考え方が真逆な、新しい息吹を吹き込んでくれるような一年生がいいわね」発言→それって、実は佐々木が一番当てはまってるんじゃないかな。同質な部分以外はことごとく真逆といった感じで。
 α−7。
 驚愕前p6。キョン氏は「佐々木やら九曜やらという新年度に割り込んできたSOS団的イレギュラー因子たちのもこと頭の隅に追いやって」しまった→α能天気現象。

 火曜日。
 α−8。
 驚愕前p70、古泉氏発言→新団員のことで楽しくなってきたのか、涼宮ハルヒの閉鎖空間発生は収まる。
 驚愕前p71で行なった賭けはキョン氏の勝ち→これも、渡橋ヤスミのチート能力じゃないのか?
 驚愕前p77。この日も、涼宮ハルヒによるキョン氏への個人授業。
 驚愕前p86−87。古泉氏、ちょっと発言が軽くなってるぞ。これも、α能天気現象か?
 驚愕前p88。入団試験Q7「何でもできるとしたら、何をする?」→涼宮ハルヒ、おまえが言うな。皮肉が利きすぎにもほどがあるぜ。
 驚愕前p93−94、「こと時間絡みでは古泉は端役以下の扱いだ。超能力者の出番が格別あったわけでもなく、せいぜいカマドウマ事件で一瞬活躍した程度では勇壮さに欠けるぜ」→そのうっぷんを晴らすべく、驚愕クライマックスでは古泉氏は大活躍してくれました。
 驚愕前p94。古泉氏、朝比奈みくる(小)相手に世間話。朝比奈みくる(小)相手では禁則事項でまともな情報は得られないというのが、古泉氏の判断なんだろう。むしろ、世間話の反応を見ながら分析する方がまだ有益だというわけだ。

 水曜日。
 α−9。
 驚愕前p100、キョン氏の「平和すぎるのか」発言→α能天気現象オンリーというわけでもなく、その反動ともいうべき感覚も沸き起こるのだろう。
 驚愕前p192、涼宮ハルヒがお弁当を作ってくる。βで長門有希にご飯を作ってあげていることが、こちらへも反映。どうやら、βの様子が夢にまで出てきたようだ(覚えてないようだけど)。
 その後、キョン氏が涼宮ハルヒに「オカンが味オンチだとか」発言→βの涼宮ハルヒがキョン氏に行なった発言が、αのキョン氏へシンクロ。
 驚愕前p198。今日もまた涼宮ハルヒによるキョン氏への個人授業。よほど仲を深めたいと見える。
 驚愕前p202、「俺はどこか今の部室を避けている自覚があった」→βでは部室には古泉氏しかいないことが、こっちのキョン氏にも微妙に影響を与えているようで。
 驚愕前p211、「俺は思わず微苦笑し、ハルヒがこういう奴だから俺は、こいつを時たま…………」→これもα能天気現象の影響なのか、キョン氏の強力無比な「キョンフィルター」が思わず外れそうになった場面。しかし、土俵際でかろうじて踏みとどまる。
 驚愕前p219、古泉氏の「若干特殊なケースではあるでしょうが……」→この時点で古泉氏は、渡橋ヤスミが涼宮ハルヒの分身であることに確信をもちつつあったと思って間違いはなかろう。
 驚愕前p220、古泉氏の「実は、自分が薄くなっているような気がするんです。どう説明したものでしょうか」発言→αのリアリティの薄さをストレートに表現。
 渡橋ヤスミ。涼宮ハルヒに匹敵する体力・根性の持ち主というだけで、みんなを驚愕させるには充分だ。
 驚愕前p235−236、渡橋ヤスミのテスト回答一覧→なんつうか涼宮ハルヒそのまんまだよね。
 驚愕前p241、名前のカタカナ呼びにこだわる渡橋ヤスミ→アナグラムされてキョン氏にバレるのは避けたかったのね。
 驚愕前p243、「……ま、お前が気にしないことを俺が気に病むこともなさそうだな。なあ、古泉よ」→α能天気現象。

 木曜日。
 α−10。
 驚愕後p6、涼宮ハルヒのキョン氏への個人授業は今日はなし。
 驚愕後p10、渡橋ヤスミは朝比奈みくる(小)に茶道(→違う)の心得を習う→涼宮ハルヒの無意識反映。朝比奈みくる(小)においしいお茶の入れ方を習いたかったのね。
 驚愕後p10、渡橋ヤスミはメイド服とナース服を着たがる→涼宮ハルヒの無意識反映。朝比奈みくる(小)みたくキョン氏の視線を浴びたかったのね。
 驚愕後p13。古泉氏は渡橋ヤスミが涼宮ハルヒの分身だという確信を得て、今後の展開は何も心配いらないとすっかり安心しきってしまった模様。
 驚愕後p16−17、渡橋ヤスミ、長門有希の無反応にも全く動じず→涼宮ハルヒの分身ならそれも当然。
 SOS団公式サイトリニューアル→これも涼宮ハルヒの無意識反映といったところか。自分でやるのがめんどくさいから、分身に押し付けた。
 驚愕後p23以降、キョン氏と古泉氏のキャッチボール→βでやっていたことを一日遅れで反映。古泉氏は、キャッチボールをしなければならないという強迫観念にまでとらわれたそうで、だんだんとβの影響力が強力になってきているようだ。
 驚愕後p30、古泉氏、未来人に対抗する個人的な決意を述べる→これがクライマックスでのあの啖呵につながっていくのだな。
 驚愕後p31、古泉氏のアダムとイブ発言再び。「憂鬱」クライマックスでの同発言をこんなに軽く出してしまうのは、どうかね。それだけ古泉氏の気分も上々ということか。これもα能天気現象だろう。
 驚愕後p34、渡橋ヤスミによる「MIKURUフォルダ発見!」→涼宮ハルヒの無意識反映。キョン氏よ、涼宮ハルヒはMIKURUフォルダの存在を知っていながら、知らないフリしてるだけだぞ、たぶん。
 驚愕後p36、キョン氏の渡橋ヤスミに対する評価は「変な女だ」→涼宮ハルヒや佐々木に対する初期の評価も似たようなもんだったろう。要するにみんな同質。
 驚愕後p40−41、渡橋ヤスミ、長門有希から本を借りる→涼宮ハルヒの無意識反映。長門有希の読んでる本に興味があったのね。
 驚愕後p43、「渡橋ヤスミから感じる雰囲気は、そう、ハルヒか佐々木に近いのだ」→さすがはキョン氏というべきか。古泉氏のような超能力的感性がなくても、それを感じ取るとは。
 驚愕後p44以降、渡橋ヤスミ、キョン宅来訪→βにおける佐々木来訪を一日遅れで反映。しかも「本日は昨日来たかったんです。でも、予定より延びちゃって」という渡橋ヤスミの発言からして、本当は完全シンクロさせるつもりだったのだろう。
 なお、これは涼宮ハルヒの無意識反映でもある。キョン氏の家に一人で来たかったのね。というのと、βの佐々木への対抗。
 驚愕後p46、渡橋ヤスミのうちではペット飼えない発言→涼宮ハルヒの無意識反映? 涼宮家にはペットが飼えない事情があると推測できる。
 驚愕後p47、渡橋ヤスミの髪飾りをめぐる意味深発言→自分が役目を果たすために作られた存在だという自覚はあるんだな。役目を終えれば消えるのが運命だと自覚している。
 驚愕後p48、渡橋ヤスミの「新しい学校に入ったら……」発言→涼宮ハルヒの無意識反映っていうか、もうそのまんま。
 驚愕後p49、渡橋ヤスミの「先輩、あたしのこと嫌いにならないでくださいね」発言→涼宮ハルヒの無意識反映。涼宮ハルヒは本当はこんなふうに直球勝負してみたいんだろうな。でも、キョンフィルターは強固だ。本人が本当に実行するにしても、さらに直球じゃないと通じないぞ

 金曜日。
 α−11。
 驚愕後p82、渡橋ヤスミ、キョン氏に果たし状を送りつける(←違う)→αβ融合に備えた下準備。
 驚愕後p92、長門有希の「良い結果を生むと公算が高いとした推論はわたしのもの。時と場合、限定された空間においては、無知であることが有効に作用する可能性がある」発言→長門有希が渡橋ヤスミの正体を知っていながらキョン氏に教えることを拒否した理由。キョン氏は意趣返しされているんじゃないかと考えたが、それは当たらずといえども遠からずだろう。ひとの無知状態を利用するというこれまでの未来人のやり口、特に「陰謀」での未来人のやり口を観察した長門有希は、今回の場合にもそれが有効だと判断したに違いない。
 驚愕後p97、渡橋ヤスミ、SOS団に花を献上→あとでこれが新種と判明。涼宮ハルヒの確率論を無視して何かを捉えるという特質は、分身である渡橋ヤスミにも当然受け継がれていたということのようだ。
 驚愕後p99、「俺のハルヒ観察術が弾き出した回答は、ただ一つ、戸惑いだった。つまり、ハルヒは、渡橋ヤスミに対しては何やら複雑な評価軸を持っており、未だ解答を出すことがてきてないらしい。朝比奈さんほど単純でない何かを感じ取っているのだと推察できる」→涼宮ハルヒの無意識では、渡橋ヤスミは役目を果たせば消えることは分かっている。でも残しておいても、このままでは本体に成り代ってキョン氏を奪い取りかねない勢いなわけで、そりゃ無意識さんも複雑な気持ちになるだろう。
 驚愕後p103−104、キョン氏、エロ本を口実に逃走(←違う)→女に対しては非常に有効な口実だけど、だからこそ涼宮ハルヒ相手にそれをやっちゃダメっすよ。
 さあ、文芸部室へ直行だ。


55−5.β
 土曜日夜。
 β−1。
 佐々木からお電話。αと比べるなら全く自然な流れだ。
 明日、佐々木団ご一行と会談をもつこととなった。
 β−2。
 佐々木からのお電話のあと、古泉氏と長門有希に電話をかけるキョン氏。これもしごく当たり前の流れ。二人に話を通しておけば、万が一のときにも救援が期待できる。
 分裂p168、長門有希の「現時点における危険性は低い。無視できるレベル」→コミュニケーション不全による天蓋領域・周防九曜に関するデータ不足が原因の完全な判定ミスという気がする。
 分裂p169。αより一日早く、長門有希が「天蓋領域」命名の件をキョン氏に告げる。
 β−3。
 βでは、長門有希との電話が終わったあとに、妹の宿題を手伝う。

 日曜日。
 β−4。
 分裂p178。周防九曜、選択的半ステルス機能を披露。固有名詞として認識させる相手方を選別できるようだ。
 会合開始。この会合で時点で既に、橘京子の空回ってる様子が存分に出ている。分裂・驚愕での彼女の立ち位置は、この時点で決まったようなものだ。
 分裂p185。藤原氏の「それはあんたが朝比奈みくるを朝比奈みくると呼ぶくらいに無意味なことなんだ。くだらない」発言→のちに明らかになる藤原氏と朝比奈みくるとの関係を思いつつ、読み返してみるなんとも言えぬ気分だ。
 分裂p185。藤原氏が始めて「藤原」を名乗る。
 分裂p186以降の橘京子の話→これじゃ『機関』と永遠に平行線だわな。異なる神を崇める唯一神教徒同士の意見が合うわけない。
 分裂p198、藤原氏の「力が存在するなら、それが誰にあろうと関係ないんだ」発言→半分嘘。涼宮ハルヒにその力があるのは、藤原の目的達成にとっては都合が悪い。
 分裂p200、橘京子の誘導でキョン氏、佐々木製閉鎖空間を来訪→何の変化もない定常空間。これをもって「佐々木さんは世界を作り替えたり、破壊しようなんて全然考えないのです」と橘京子は断言するわけだが。個人的には、単にそのための力が足りてないだけではないのかという疑念は拭い去れないなぁ。
 あと、セピア調のモノトーンという色合いが、過去の懐古ということを象徴しているようにも思われる。佐々木は、過去の何かに未練ありかと勘ぐりたくなるのだ。
 キョン氏は、佐々木以外の佐々木団の連中と協力するなんて言語道断。こいつらは敵だという認識。これは、基本的にずっと変わらない。
 そのことをはっきりと叩きつけようとしたときに介入してきたのが、喜緑江美里だ(分裂p209)。長門有希はこれ時点で寝込んでるので、その代わりであろう。
 分裂p214、「お冷を出したりオーダー取りに来たのも彼女だったのか。今まで気づかなかったのは大衆心理に潜む見えない人理論が働いていたか、何か宇宙的な力が作用していたか……。あるとしたら後者だな。九曜にできることなら喜緑さんにも可能っぽい」→喜緑江美里が半ステルス機能を発揮していた可能性あり。
 分裂p215、藤原氏が、周防九曜と喜緑江美里の「ゼロ次接遇」に大爆笑しかかる→「ゼロ次接遇」って何?
 分裂p217、キョン氏、喜緑江美里登場に関連して、朝倉涼子に言及→朝倉涼子復活フラグその3。
 分裂p218、「こうして俺は喫茶店を出たため、残った佐々木と藤原が何を話したのかは知らない」→推測するに佐々木は、藤原と世間話でもしながら探りを入れていたのではなかろうか。その後の展開で、佐々木は藤原の性格なんかをよくつかんでいる感じだったから。

 月曜日。
 β−5。
 分裂p240、佐々木の「では、キミの製作者はいったいどこにいるんだい?」→メタな皮肉ネタだよね。読者の世界に、谷川流氏として存在してますよ。
 分裂p242、佐々木の「特に恋愛感情なんてのは精神的な病の一種だよ」発言→分かりやすすぎる涼宮ハルヒとの同質な部分。二人とも恋愛観については中二病だ(まあ、佐々木についてはこの発言は中学三年生時点のものだから、中二病であってもおかしくはない年齢ではある)。分裂p91で古泉氏が言っているように「ただ、ひねくれたポーズをつけたがっているだけ」。
 分裂p245以降、国木田氏の佐々木への言及→特に伏線ではなかったのだが、分裂・驚愕では脇役国木田氏が目立って登場する場面が多く、これがその最初というべきだろう。
 同場面で、谷口氏は相変わらず俗な属性を発揮。これは以後も変わらず。ただ、分裂・驚愕においては、彼の俗な属性をつど確認することは、キョン氏の心の安寧のたもつには役に立っている。
 分裂p251、放課後の文芸部室に長門有希不在。
 β−6。
 分裂p276、朝比奈みくる(小)が藤原氏について「悪いことをするために来たんじゃないと思います」→結果としてはハズレ。藤原氏は根は悪い人ではないとしても、我欲のために犯罪に走ったことは間違いないのだから。
 分裂p288以降。まったりすぎる団活だが、ふと気づくと、長門有希がいつまでも来ないではないか。涼宮ハルヒが電話で確認すると風邪とのこと。しかし、涼宮ハルヒ以外の団員は、長門有希が風邪などひくわけがないと知っている。「暴走」の雪山事件と同様の天蓋領域の攻撃か!? とにかく、長門有希のマンションへ直行だ。
 というところで、分裂は終わり。そのあと四年も待たされたら、読者もやきもきするわな。
 β−7。
 驚愕前p14。長門有希が寝込んだのは、土曜日の夜。おそらく、キョン氏から電話が終わったあとと推測される。
 驚愕前p14−15。昨日の喜緑江美里登場場面を思い出したときに、朝倉涼子についても言及→朝倉涼子復活フラグその4。
 驚愕前p17の長門有希の独白。β−7以降事態収束まで物語の表舞台から退場する長門有希の最大の見せ場がこれとは切ないですなぁ。
 驚愕前p18、再び朝倉涼子に言及→朝倉涼子復活フラグその5。
 驚愕前p21、キョン氏の「確実に言える。すまない、我を育てたまいし母よ、ハルヒの手料理は貴女が作る晩飯よりうまい」発言→ここに限らず、β−7では、涼宮ハルヒの母性的側面を強調する描写が目立つ。そして、キョン氏の長門有希に対する態度は、まるでかわいい娘を心配する父親だ。つまり、涼宮ハルヒが母ちゃんで、キョン氏が父ちゃんで、娘が長門有希という構図。
 なお、料理が母よりうまいという評価は、男性の女性に対する評価としては、最高級のもののうちの一つ。
 驚愕前p23。涼宮ハルヒのオカンは、味オンチ。
 驚愕前p29以降のメールのやりとりから推測するに、長門有希は天蓋領域の情報統合思念体へのコミュニケーションを媒介するものとして強制的に指定された結果としてぶっ倒れ、さらにその状況を追認するように情報統合思念体から天蓋領域とのコミュニケーションを媒介するよう指令を受けたということなのだろう。
 インターフェースの共通語である地球語を通じたコミュニケーションではいまいち効率が悪い(アマゾンの原住民とアフリカの少数民族が英語で会話してるようなもんなんだろう)から、長門有希を媒介としてデータをやりとりしようぜといったところだろうか。当然、両者のデータのフォーマットが全然違うから、媒介となる長門有希には猛烈な過負荷がかかる。常にCPU100%状態でフリーズだ。
 長門有希は、情報統合思念体から与えられた役割を遂行するという自らの存在意義を常に忘れない。最近はSOS団の利益との調整をはかりながらうまくやろうとしているようだが、なにぶん不器用だからその調整がうまくやれない場合がある。今回はそれがもろに悪く出た事例。喜緑江美里や朝倉涼子の方が適任だといって押し付ける手もあったろうに……。
 驚愕前p33。うちのかわいい娘をいじめる奴はどいつだ! 出てきやがれ! とばかりに外に飛び出すキョン氏。
 その希望を応じたのかどうかは定かではないが、あっさり周防九曜と遭遇(驚愕前p34)。
 驚愕前p37以降。朝倉涼子復活。やっぱり、バトルするなら彼女がいないとね。
 驚愕前p46。相変わらずの暴走体質の朝倉涼子を止めるため、喜緑江美里が登場。長門有希が健在なら、その役目は彼女のものだったろうに。
 驚愕前p53。以前「憤慨」で古泉氏が語っていた「喜緑さんは長門さんのお目付役」説は、おおむね正しいようだ。
 驚愕前p54、朝倉涼子の「私や長門さんの方が自律進化してるぜ」宣言→まあそうでしょうな。単なる端末なら暴走なんかしない。
 驚愕前p55、キョン氏の朝倉涼子に対する「お前は要らない」宣言→まあマゾでない限りはそれが当然でしょうな。今回も含めれば3回も殺されかけたわけだし。
 驚愕前p60、「──おもしろい冗談だわ…………とても」→これは周防九曜発言である可能性が高いと推測される。
 驚愕前p65、涼宮ハルヒによる団活休止宣言→部室に長門有希がいないと団活にならないのは、もはや当然のこと。

 火曜日。
 β−8。
 驚愕前p104以降。キョン氏の危機に際しての自己分析能力は格段の進歩を遂げているようですな。まあ、もともとその素質は高かったのだが。
 驚愕前p110、「長門の欠けた文芸部室など、キリストのいない最後の晩餐会場みたいなものだ」→もはや、長門有希は文芸部室の家具も同然。
 驚愕前p115、谷口氏との会話で心安らぐ。
 驚愕前p116−117、古泉氏、涼宮ハルヒから入団希望者待ち伏せのため部室待機を命ぜられる→入団希望があってほしいという涼宮ハルヒの思いが、αに影響しているのだろうな。
 驚愕前p118、涼宮ハルヒによる閉鎖空間頻発現象が収まる。
 驚愕前p120−121、古泉氏が宇宙人同士のあれこれで長門有希が機能不全に陥っている隙こそが未来人にとってのチャンスだと示唆→これはそのまんま当たっているわけで、古泉氏の推論能力の高さは抜群だ。
 驚愕前p122、古泉氏の「神人は来るべき何かに対して、今はじっと息を潜め、エネルギーの蓄積に専念しているのではないか」発言→これもほぼ当たりか? αの方の充電分で充分という気もするけど。
 驚愕前p143、藤原氏の「天蓋領域とかいう連中は情報統合思念体より律しやすい存在でね。僕の提言を素直に受け入れてくれた」発言→藤原氏時間軸の方の未来では、天蓋領域とのコミュニケーションが円滑にとれる技術か方法論が確立されているようである。
 驚愕p150、藤原氏の(涼宮ハルヒには情報統合思念体による)「ガード防壁が二重三重に張り巡らせてある」発言→驚愕クライマックス場面ではたいして役に立たなかった。情報統合思念体は情報攻撃への対抗手段は得意だが、直接的な物理攻撃への対応は不得意なようだ。情報生命体であるから、これはやむをえまい。
 いつだって周防九曜の力で涼宮ハルヒの力の移転が可能なのにもかかわらず、そして、キョン氏や佐々木の意思がどうだろうとそうするつもりであるにもかかわらず、藤原氏がわざわざキョン氏に時間を与えたり、こうやって交渉の場をもったりする理由は何か。
 まず、それが既定事項だから。藤原氏が既定事項を無視して勝手に暴走すれば、彼の未来組織だって介入してくるだろうし、朝比奈みくるの未来組織だってやってくるだろう。場合によっては、情報統合思念体などの介入もありうる。それらの介入を受けない舞台が成立するまでは(そして、それを成立させるためにも)、既定事項をこなしておく必要があるわけだ。
 また、藤原氏が根は悪い人ではないとすれば、キョン氏の同意のもとに穏やかに進められればそれに越したことはないとも思っていた可能性もある。殺人とかを犯す必要がなくなるなら、その方がマシだろうと。
 あとは、周防九曜を通じた天蓋領域との約定が柔軟なものでない可能性か。つまり、その時とその場所でないと約束は果たしませんってことだ。
 驚愕前p159−160、橘京子による爆弾発言「古泉さんは機関のリーダー」→これはどうだろうか。初期からの中核メンバーの一人には違いないだろうけど、あとで古泉氏が述べてることもあわせ考えれば、少なくても中核メンバー同士はほぼ対等ではないのか?
 驚愕前p160以降、藤原氏によるTPDD解説→タイムプレーンデストロイドデバイスという名称から想像できるとおりの代物だった。
 驚愕前p169以降、国木田氏と谷口氏と遭遇。
 驚愕前p171、佐々木の谷口氏への「よきご友人のようだ。キョンが世話になることはあまりなさそうだが」発言→辛らつですなあ。まあ、そのような扱いが似合う男なんだけどね、谷口氏は。
 驚愕前p172、谷口氏が周防九曜に気づき驚愕。その後逃走を図る。
 それにしても、佐々木と余裕で会話がかわせる国木田氏。おまえもただ者ではないなと思わせるには充分な描写。
 驚愕前p180、周防九曜の「どこかで情報の混乱があったよう。何者かによるジャミングの可能性……」→喜緑江美里あたりが、裏で手を回していたのか?
 驚愕前p181、周防九曜の「あなたたちは仮幻宇宙にいた……」発言→やはり消失世界は分岐ではなく上書きだったか。「陰謀」における古泉氏解説を裏付ける証言。
 驚愕前p182。時間そのものを生で認識している周防九曜には、人間の一般的な時間概念に一致した時間を確認するために時計が必要だったということらしい。
 驚愕前p183、周防九曜の「──観測し得ないものは存在しない」発言→量子理論っぽいですな。

 水曜日。
 β−9。
 驚愕前p247以降。国木田氏が鋭い洞察力を見せる。
 驚愕前p253以降、古泉氏によるグノーシス主義の解説→橘京子一派の考えを解説するのにこれほど分かりやすい話もない。
 驚愕前p259、古泉氏、一切の判断をキョン氏に一任→これってなかなかできることではない。事情を知っていれば橘京子みたいに介入したくなるものだ。キョン氏への信頼感の高さがうかがわれる。
 驚愕前p260−261、古泉氏の「人間、決断力さえ衰えていなければ、とっさに最適の行動をとるものです」→確かに、キョン氏はこの能力が非常に高い。
 驚愕前p265以降、佐々木、キョン宅来訪。宇宙存在との間のコミュニケーション不全の根本原因について語る。
 驚愕前p283−284。佐々木は考える葦である。
 驚愕前p285、佐々木の「異星人や未来人や超能力者なんかの力は借りない」宣言→ここは、涼宮ハルヒと真逆なところか。
 驚愕前p288−289、佐々木、キョン氏に相談を持ちかけようとしてやっぱり止める→これは実は恋愛相談だったわけだが。女が男に恋愛相談って、それ自体が恋愛フラグだ。佐々木はそれを自ら辞退したということになる。
 驚愕前p295、「俺でなくても超絶ヒーローの役割を果たせるやつがいるんじゃないか? 他でもない、ただ一人、あいつが。いや、あいつこそが──か。とかな」→ヒーローの性別を男性に限定するなら、資格者は古泉氏しかいない。男女問わずなら、涼宮ハルヒも候補にあがる。

 木曜日。
 β−10。
 驚愕後p55、涼宮ハルヒの「うまく言えないんだけど、もっとスケールが大きいことで、変な事件が起きそうな、そんな気分」発言→さすがは涼宮ハルヒ。その直感力は衰えを見せず。
 驚愕後p56、キョン氏の橘京子雑魚キャラ宣言→当たり。
 驚愕後p65、「新たなる環境ではやはり新たな人間関係があってしかるべきだろ。それが後の人生に良いこととなるかどうかは解らないが、俺はそう思うのだ。いつまでも同じ集団でいるメリットはあんまりなさそうでもあるしな。しかし、ハルヒはどう思っているのだろう」→これも伏線か。驚愕クライマックスラストでの数年後に飛ばされた場面の描写と関係がありそうだ。
 驚愕後p66、渡橋ヤスミ、β側に来訪。でも時間を間違ったらしい。αと同じ花を置いて去る。
 驚愕後p75、佐々木の「涼宮さんと僕が選んだ唯一の一般人、それがキミなんだからね」発言→彼女が最も踏み込んだ発言をした場面かも。でも分厚いキョンフィルターの前には通じず。

 金曜日。
 β−11。
 驚愕後p117、橘京子、普通のタクシーを手配する→思わず笑ってしまった。「陰謀」のときに見栄を張らずに車を持って帰ればよかったのに。『機関』のみなさん、あの車を返してあげてください。
 このタクシーの運転手、あのハカセ君の父親っぽい。ここまで来るとどこまでの既定事項なのか疑いだすと止まらない。
 驚愕後p121−122、藤原氏、自動車が苦手。
 驚愕後p124、キョン氏、藤原氏が未来を変えようとしていると指摘→おお、この時点まで得られた情報だけでそこまで推論できたとすればキョン氏の推論能力もかなりのものだ。古泉氏や佐々木にも劣らないぞ。
 驚愕後p129、北高到着後、佐々木製閉鎖空間展開。佐々木本人は排除。これで藤原氏が望む余計な介入を受けない舞台は完成した。橘京子の役目はこれで終わり、以後は単なる付属物、哀れだ。
 驚愕後p131、藤原氏によれば、涼宮ハルヒの力のみならず、異空間化された文芸部室の環境も必要らしい。
 なにはともあれ、文芸部室に行かないことには始まらない。


55−6.α及びβの12−14
 ああ、キョン氏の超常体験もここに極まれり。


55−7.最終章
 さて、怒涛のクライマックス。
 まずは合体。
 教えられてない事態の発生に驚愕する藤原氏。
 そして、涼宮ハルヒ製閉鎖空間が発生し、涼宮・佐々木融合閉鎖空間へ。
 渡橋ヤスミにかかれば涼宮ハルヒ製閉鎖空間だって自由自在だぜ。
 しかし、これらも周防九曜にとっては、すべて予定の事象。
 驚愕後p159、古泉氏、まるでいつもの団活に来るかのように来訪→窓ぶち破るよりこっちの方がかっこいいぞ。
 驚愕後p161、朝比奈みくる(大)登場→やっぱりね。未来人話には彼女の登場は欠かせない。
 驚愕後p167、藤原氏の爆弾発言炸裂→可能性としては親戚筋もありかとは思っていたが……。

 さて、以降の藤原氏と朝比奈みくる(大)の会話から、時間に関するもろもろを推論しよう。
 まず、藤原時間軸と朝比奈時間軸は別物。どっかで分岐している。藤原時間軸の藤原氏には姉として朝比奈みくるがいたが早死にしてるっぽい。朝比奈時間軸の朝比奈みくるには弟はいない。
 両時間軸は将来融合・交差する可能性があるが、藤原氏の見解では朝比奈時間軸の朝比奈みくるもそのときに死ぬか消える。朝比奈みくる(大)の見解ではそれは回避可能。
 藤原氏の「あなたから見た未来は、その時間の先にいる他の観測者にとっての過去なんだ」発言→量子理論における観測問題みたいなのが、時間平面理論あるいはSTC理論にも存在するらしい。
 藤原氏によれば、涼宮ハルヒは時空連続体を一気に書き換えるという行為を現時点から遥か以前に一度やっているらしい。おそらく、四年前の情報爆発がそれだろう。そして、涼宮ハルヒがそれをやっちまったという事実は、藤原氏にとっても朝比奈みくるにとっても既定事項。次元断層もあるためそれ以前に遡ってその既定事項を変えることもできない。
 一応、両時間軸ともに「航時法」による法的規制というものはあるようだ。ただ、藤原氏の組織も朝比奈みくるの組織も、法的規制ゆえに政府が手をつけられない裏事をこなす特務機関(→表向きは研究機関とかの仮面を被ってる)という気がするんだよな。そして、藤原氏の組織の方が規律がゆるそうだ。

 驚愕後p174、朝比奈みくる(大)の「古泉くん、あなたには何も言えません。過去の人間の仲であなたは上級要注意人物なんです」発言及び「古泉くん。あなたはやっぱり、STCデータの中でも代わりが見つからない人間なんだわ」発言→涼宮ハルヒに選ばれた人物は多かれ少なかれそんなもんだろうが、特に古泉氏は意図的に既定事項を破壊できるだけの能力がありそうだからな。

 驚愕後p175以降、古泉氏、堂々と啖呵を切る→かっこいいぞ。
 周防九曜が、ハルヒをこの場に転移させた。対九曜用に対抗手段が三重(前に藤原氏が発言していたところによれば、情報統合思念体製)に包まれているが、そんなもんは涼宮ハルヒを落下させればどうということはない。
 驚愕後p189でのキョン氏と古泉氏との会話。まるで信頼しあう戦友のようだ。

 涼宮ハルヒ、落下開始。
 考えるより先にキョン氏が宙を舞う。まるでベタな物語でピンチの姫を救うヒーローではないか。
 しっかりと抱きしめることによって、改めて涼宮ハルヒが女であることを認識するキョン氏。これって、「憂鬱」クライマックス場面以来ではないか?
 それはともかく、超人の身ではないからこのままでは墜落死だ。
 だが、渡橋ヤスミにかかれば閉鎖空間における神人のコントロールもお手の物。神人が二人をしっかりと受け止めた。
 ふと見れば、古泉氏がついにぶちきれて乱闘中。そこに神人の攻撃も加わる。

 そこから、キョン氏の時間移動が始まる。個人的な推測では、これは朝比奈みくる(大)のTPDDによるもの(藤原氏の説得だけが任務だったわけではないだろうから)。
 涼宮ハルヒの方は、渡橋ヤスミが自宅に送り届けたものと推測される。
 ただし、朝比奈みくる(大)のTPDD設定は、一ヵ月後オンリーだっただろう。なぜなら、それが既定事項だから。
 でも、これもおそらく渡橋ヤスミの介入と思われるが、いったん数年後に飛ばされる。
 飛ばされた数年後の場所はどこかの大学。そこでおそらく大学生と思われる涼宮ハルヒと遭遇する。彼女の発言からすれば、そのときキョン氏も同じ大学に通っているようだ。
 つかの間の邂逅後、再び時間移動。移動先は元の時間平面から一ヶ月先の涼宮ハルヒ宅の彼女の部屋の彼女のベッドの上、どう考えても夜這い状態!
 でも、涼宮ハルヒは怒らない。古泉氏だったら殴ってただろうなぁ。
 キョン氏、すばやく年月日と時刻を確認。もはや手馴れたものだ。
 SOS団三名が外で待機していた。キョン氏は、古泉氏から投げ渡された「SOS団結成一周年記念日。団員一同より団長閣下へ、一年分の感謝をこめて」のプレゼントを涼宮ハルヒに贈呈して、サプライズイベント完了。
 この辺の臨機応変な対応も手馴れたものだ。
 この後、朝比奈みくる(小)のTPDDで、元の時間平面に戻る。
 なお、古泉氏によれば、プレゼントはキョン氏が選んだものらしい。ということは、キョン氏は戻ってからプレゼントを考えねばならないわけだ。「陰謀」のときと同様の既定事項の縛りがかかってしまった。
 キョン氏が悩みに悩んで考えたプレゼントを涼宮ハルヒに手渡すという行為が未来にとっては重要な既定事項ということなのだろうが、その真相は朝比奈みくる(大)も教えてはくれないのだろうな。
 一方、いったん数年後の大学に飛ばされた件については、キョン氏にそのような体験をさせることが、涼宮ハルヒにとって重要な既定事項という推測が成り立つ。こっちは分かりやすい。要するに一緒の大学に行きたいのだ。少なくても、この件については、予言の自己破壊(→予め知った未来の出来事を避けるように行動する結果、知っていた未来のとおりにはならない)は成立しないという確信もあったのだろう。


55−8.エピローグ
 日曜日。
 渡橋ヤスミ、涼宮ハルヒ宅を来訪し、SOS団入団辞退を申し出る。理由は、実は中学生だったから。この時点で、おそらく、分身としての役割を完了し、消滅したものと推測される。

 古泉氏と長門有希が、キョン宅来訪。
 天蓋領域との高度なコミュニケーションの役割は、長門有希以外のインターフェースに任されることとなった。最初からそうしてればよかったのだ。
 藤原氏は、藤原時間軸の自分の時間平面に戻っていった(あるいは戻された)ようだ。分岐点付近に涼宮ハルヒ製次元断層が生じたため、もうこの時間平面には来れないというのが、朝比奈みくる(大)の説明だったそうだ。
 朝比奈みくる(大)によれば、藤原氏は利用されただけのようだ。おそらく、次元断層を発生させるのが利用者側の目的だったのではないか。そうしておけば、分岐点が消滅しても(あるいは、何者かによって消去されても)、断層のおかげで未来に影響することはない。時間軸が分岐点ごと消し飛ばされる危険性がなくなる。
 古泉氏、橘京子からメアドゲット→ちゃっかりしてやがるな。
 橘京子の組織はしばらく隠遁するそうだ。
 古泉氏が、渡橋ヤスミの正体をネタばらし。アナグラムでした。
 涼宮ハルヒの力の行使は格段の進化を遂げていた!
 そのあと、古泉氏による時間分岐・統合の解説。わかりやすいぞ。
 キョン氏が古泉氏の『機関』内での地位についてさぐりを入れるが、古泉氏ははぐらかす。
 渡橋ヤスミが持ってきた花は、新種でした。

 月曜日。
 珍しく団活がなしで、キョン氏は下校。下校途中で佐々木と遭遇。
 佐々木は、先週のキョン宅来訪のときに恋愛相談しようとしていたことを告白。女が男に恋愛相談なんてそれ自体恋愛フラグだが、キョン氏には通じない。
 そして、さらに、涼宮ハルヒと小学校が一緒だったと暴露。その当時から涼宮ハルヒには適わないと思っていたらしい。ああ、そうか。だからこそ、今一歩踏み込めなかったのだな。
 驚愕後p258、佐々木の「イヤだなあ。まるで告白でもしているみたいじゃないか。誤解されるのは僕の本意ではないのだけれどね」→冗談めかして本音をいうのは、古泉氏や佐々木のような人物がやりそうなこと。でも、そんな遠回りなことは、キョン氏には通じない。

 火曜日。
 驚愕後p261、鶴屋さんの「よっ! キョロスケくん!」発言→うーん、キョン氏の本名に何かしらの関連性がありそうな呼び方だが……。
 驚愕後p263−264、鶴屋さんのキョン氏に対する評価→さすがは鶴屋さん、適確で要点をはずさない完璧な評価だ。
 驚愕後p265−266、谷口氏、相変わらずの俗っぷり。
 驚愕後p267−269、国木田氏、古泉氏や佐々木に劣らないほどの論述を披露。やっぱりこいつはただ者ではないようだ。
 驚愕後p269−270、国木田氏、鶴屋さんへの好意を暴露→そうだったのか。キョン氏がいうとおり、君なら結構うまくやってけるような気がするよ。
 驚愕後p273、涼宮ハルヒが詠んだ一首→百人一首のひとつ。涼宮ハルヒの状況に重ねるならば、「SOS団のこれからの旅路の安全を願ってささげる供物はないけれども、SOS団があるこのすばらしい今の光景そのものをささげます」といったところか。
 驚愕後p277、渡橋ヤスミがつけてた髪飾りは、涼宮ハルヒが小学生のときにつけていたもので中学に入った頃になくしちゃったものと判明→情報爆発のときに、その余波で、渡橋ヤスミ誕生の時間平面に転移してきたんじゃないのか?
 さて、鶴屋家における八重桜観賞会の余興はどうなるのか?
 そして、SOS団結成一周年記念のプレゼントの中身は?

 蛇足→今後の予想
 八重桜観賞会には、佐々木と橘京子もご招待されるのではないか。鶴屋家は、橘京子の組織の方のスポンサーにもなってそうな気がするから。
 そこに藤原氏まで来れば、さらなるサプライズだ(藤原時間軸と朝比奈時間軸が融合すれば、朝比奈時間軸の方を通って、こっちに来れるだろう)。
 周防九曜までくれば、もはやカオスだけど。
 国木田氏、谷口氏、会長、喜緑江美里も呼ばれそうだな。


55−9.登場人物について
 佐々木。
 涼宮ハルヒと同質な部分以外はことごとく真逆。
 そして、キョン氏にとっては、友人「以外」ではありえない存在。
 キョン氏とは、噛み合う部分はあっても、同質な部分が皆無。ちなみに、涼宮ハルヒとキョン氏は同質な部分があって他の部分は互いに噛み合っている感じだ(だからこそ、国木田氏が危惧するような強力な反発力も生じない)。
 分裂・驚愕の描写を見る限りでは、どんな状況でも極限まで冷静沈着。たぶん、怒っても動揺しても、その冷静沈着さは失われないのだろう。
 溜め込んでいた感情が爆発して大暴走みたいな展開も予測していたのだが、そんなのは全くなしだった。

 藤原氏。
 根は悪い奴ではないのだろうけどね。
 禁則に縛られながら不毛とも思われる時間平面修復作業の繰り返しに従事するうちに、すっかりグレてしまったようだ。
 そして、姉を失った悲しみから暴走。
 キョン氏から見れば本当に嫌な奴でしかないのだろうが、情状酌量の余地がないわけではない。

 橘京子。
 「陰謀」と比べると一気にヘタレ化が進んだ。
 彼女には荷が重かったのだよ。
 佐々木とは今後も仲良くしてやってほしいね。
 古泉氏との間に恋愛フラグが立ったっぽいが、さて今後どうなることやら。

 周防九曜。
 存在感もコミュニケーション能力も性格(?)も、時と場所によってムラがありすぎるキャラ。
 今後も不気味キャラとして活躍してくれるだろう。

 朝倉涼子。
 いやぁ、キャラがブレませんな、この人は。
 臨時バイトじゃない完全復活はいつだ?

 喜緑江美里。
 キョン氏は悪くいうけど、長門有希のお目付役にはふさわしいのではないだろうか。
 なにごとも無難にこなす感じ。

 渡橋ヤスミ。
 ご主人様(涼宮ハルヒ)の忠実なる下僕にして、涼宮ハルヒの無意識を反映した分身。
 その下僕属性が、朝比奈みくる(小)を虜にするぐらいかわいらしい。
 彼女が再登場するとすれば、それはすなわち、涼宮ハルヒの力を必要とするぐらいの大ピンチが襲来ということにほかなるまい。