道路上に引かれた線路の上を、鉄道の車両よりも小さな電車がコトコト走る、路面電車。その歴史は古く、100年以上も前の明治28年に、京都電気鉄道といった名で京都に登場したのが始まりだ。以降、庶民の足として、日本各都市で普及し、活躍をしてきた。
最盛期には67都市で運行されていたが、1970年代頃から、人々はより便利なバスや車に流れ、各都市から次々と姿を消していった。現在では、わずか18都市でのみ走ることとなった路面電車だが、それでも生き残った路面電車は、各地で毎日人々を乗せて走っている。
北海道の函館では、総合学習で市電について学んだ子供たちが「市電に乗る人が少ない」ことに驚き、市電の応援歌を作った。また、毎日のように線路脇に立ち、路面電車の写真を撮り続ける96歳の男性は、東京の路面電車の変遷を見続けてきた。そして広島では、1945年8月6日の原爆投下から、わずか3日後に復旧し、人々を勇気付けた被爆電車が今も街を走り続けている。
どんな時も、人々に寄り添いながら走り続けてきた路面電車。今再び、次世代の乗り物としても注目を集めている。街や暮らしと共に変遷し、100年以上経った今も、人々の生活と深く密着している路面電車を、全国18都市で取材し、その歴史と今、そして路面電車と深く関わる人々の物語を紹介していく。