アサリの最後はアラムシロ葬儀社で
いつもは砂の中に隠れているが一本の長い水管を砂から出していて弱った生き物の匂いをかぐとノソノソと出てくる。
余程嗅覚が鋭いらしく死んだ貝を置いておくと、どこに隠れていたかと思うほどゾロゾロと出てくる。
長いアンテナを振りながら進む干潟の掃除屋 アラムシロガイ |
弱ったアサリに集団でとり付いている事があるのでアラムシロガイの集団の下を見るとアサリがいたりする。アサリの口が開いていなければ死んではいないので救出して家に持って帰ると時間を置かなければ美味しく食べられる。
カニの死体に群がっている事も多く、死んだ二枚貝にも群がって集団でムシャムシャ食べている。ゆえに海の掃除屋とも呼ばれるわけだが、元気な生物にはとり付かないのであろうか。
シオフキの死骸に群がるアラムシロガイ |
元気なアサリの上に10個のアラムシロガイを乗せたらどうなるか実験してみた事がある。アラムシロガイ達はしばらくウロウロしていたが結局、皆どこかへ消えてしまった。やはり臨終近い生物の匂いを敏感に感じているようだ。
アラムシロガイ |
アラムシロガイの名前は江戸時代に戸板に乗せた死体にムシロをかけた所から、死肉に群がる貝ということで呼ばれたのではと思う。 貝殻の表面には色々の付着物も多くムシロのようでもあり美しくない。アンテナのような長い水管は先端に大きな穴が一個開いていて不気味な気もする。 だがこの貝も干潟の生態系の中では必要な存在で、アラムシロガイのおかげで死んだ貝や魚などは迅速に処理され殻や骨は地球に戻っていく。 |
殻も汚いし身も小さい上に日ごろの行状も知っているので食べるのは気持ちが悪いが、物は試しと食べてみた。
死肉を食っているくせにその味はちゃんと苦味もあって以外に珍味であった。
アラムシロガイのお味噌汁 |
そういえば人間も牛の死体、マグロの死体、リンゴの死体?、キャベツの死体?と生きたものをそのまま食べているわけでもなかった。
生食いはシラウオの踊り食いくらいのもので、猫がスズメを獲って食べているほうがはるかにグルメなのかもしれない。
もし海で釣った魚に醤油でもかけて、その場で生きたまま食らいついたら、さぞワイルドで美味しいのであろうか。
だが魚は釣れても同行の彼女には一発で逃げられるであろう。