集合動産譲渡担保の再考察:4ページ


(4) 集合動産譲渡担保の対外的効力


 次に集合動産譲渡担保の外部的効力について考察してみたい。

判例は 最高裁昭和62年11月10日判決において、集合動産譲渡担保の対抗要件具備の方法として、集合動産譲渡担保が設定された場合、

「債務者がその構成部分である動産の占有を取得した時は債権者が占有改定の方法によってその占有権を取得する旨の合意に基づき、債務者が右集合物の構成部分として現に存在する動産の占有を取得した場合には、債権者は、当該集合物を目的とする譲渡担保権につき対抗要件を具備するに至ったものであるということができ・・・」

「この対抗要件の具備の効力は、その後構成部分が変動したとしても、集合物としての同一性が損なわれない限り、新たにその構成部分となった動産を包含する集合物について及ぶものと解すべきである。」
とした。

したがって、この考え方によれば集合動産譲渡担保においては、対抗要件は占有改定で足りるものである、と解される。

この判例の考え方については学説でも様々に議論されるところであるが、道垣内先生は

「所有権移転の対抗要件ですら占有改定で足りる法制度において、譲渡担保のみの公示に力を注ぐ意義は乏しいと思われる。」(注K道垣内・前掲259頁)とされている。

 確かに、所有権ですら占有改定で対抗要件が備わるとされるのだから、譲渡担保において占有改定では足りないとする根拠はいかに考えられるか。

 しかし逆に、なぜ集合動産譲渡担保の対抗要件が占有改定であるのか、という疑問も生じてくる。

譲渡担保の法的構成につき所有権的構成をとるならば、たしかに、占有改定によって担保権者のもとに移転した占有を設定者のもとに改定することになる。

また、設定者留保権説によっても担保権者に移転した占有を占有改定によって設定者のもとにもどすことになる。
これはこれで理解できるのだが、先の理由から譲渡担保の法的構成を徹底した担保的構成である「担保権説」をとるならば、担保権者には占有は移転しない。ただ単に担保権者はは譲渡担保権を取得するのみで、占有は設定者のもとから動くものではない。

設定者の所有動産に非占有型担保権を設定するのみである。
ということは、占有改定によって移転するべき占有は移転することはない。
しかし、従来から譲渡担保は占有改定によって対抗要件をそなえるとされてきた。
これは当初の所有権的構成から考えられたものであり、譲渡担保の構成につき「担保権説」をとるならば、はじめから占有は移転しない。なぜならば所有権は設定者のもとにあるのだから、占有も単なる担保権の設定によっては移転しないはずである。

以上の理由から譲渡担保の法的構成につき担保権説をとると、譲渡担保権の設定は必ずしも占有改定による必要はないと考えられる。

 したがって、集合動産譲渡担保を担保権説から考えるに、対抗要件は占有改定による、という考えはあくまで所有権的な構成からのものであり、担保権的に考えるならば妥当しない。道垣内先生の指摘は担保権説には妥当しない。

   判例のように「集合物論」にたつと、対抗要件は占有改定でたりるとする。集合物論者のほとんども対抗要件は占有改定であるとするが、その多くが占有改定では対抗力が弱く問題があると指摘されている。しかし、「いったん動産譲渡担保が非占有の非典型担保であることを認めた以上、その公示上の難点は宿命であり・・」(注L中舎寛樹「民法トライアル教室」143頁)と、公示力の弱さを認め、外部公示をあきらめる見解もあれば、明認方法を要求する見解もある。(注M吉田真澄「集合動産と譲渡担保の可否」ジュリスト「民法3」77頁)

しかし、個々の動産の個性は無視し「集合物」という概念をみとめそこに譲渡担保を設定するものが集合動産譲渡担保であると解する「集合物論」からはなぜ、対抗要件のときだけ観念しないはずの個々の動産に対抗要件を要求するのか。
推察するに、集合物論の論者も集合物に対する占有改定では、対抗要件として弱いことは認めているものと考えられるから、それを認めて外部公示の場合のみに個々の動産というものを観念せざるをえないのではないか。

 以上のように、集合物論(特に所有権的構成の集合物論)にたつと、対抗要件は占有改定になるのでどうしても外部的公示が弱くなるため、場所的要素を含む「特定」にも外部的な公示の要素を要求することになり、その結果として集合動産譲渡担保の価値を低くしてしまう。
実務の場において、占有改定で対抗力が備わる、などと悠長なことをしていたら、情をしらない第三者に即時取得されておしまいである。そのため、実務では一応は判例上、占有改定で対抗要件はそなわっているとされてはいるが(確かに判例ではそれで充分とされている)占有改定のみではなく、個別動産に明認方法を付する、担保目的物の詳細な目録を作成し厳しく管理する、などの方法で集合動産譲渡担保を扱っている。(注N堀龍兒「動産非典型担保の実務上の問題点」別冊NLB no.31「担保法理の現状と課題」170頁)

 これは実務家の間では早くから集合動産譲渡担保の必要性が論じられ、未だ集合動産譲渡担保の法的構成につき争いがあって、判例上も明確ではなかったため、民法の一物一権主義の枠内で構成したためであると考えられる。

 しかし、昭和54年に最高裁が前出の判決で明確に集合物論をみとめ、昭和62年11月10日判決で対抗要件は占有改定で足りる、と判示したあと当初は集合物論によって対抗要件が占有改定でたりるとされたので実務でも安心して集合動産譲渡担保を用いることができるようになり、このような実務家の対応も変革するであろうという指摘があったが(注O伊藤進・前掲98頁)、現在にいたっても実務は分析論によっているようである。

 この理由は、集合動産譲渡担保の最大の問題点が対抗要件であり、最高裁は占有改定でたりるとしたが、実際問題占有改定では外部公示が弱いことが明白であるためと考える。
 そのため、実務家の間では明認方法が強く主張されている。(注P堀龍兒・前掲171頁)現状としては、判例と実務で集合動産譲渡担保に対する考えがかみ合っていないので集合動産譲渡担保も危険な担保としてその価値が低くみられてしまっている。
 この問題を解決する為にも、集合動産譲渡担保のみならず譲渡担保自体の対抗要件に明認方法を認めることが、終局的に譲渡担保全体を今以上に価値のある担保物権とし、経済的効用も高まると考える。
ここでの結論としては、集合動産譲渡担保においては担保的構成でかんがえるならば、かならずしも占有改定による対抗要件の具備を要求する場面ではない。
とするならば、取引の安全のためにも明認方法による公示を認めるべきである。  

 

 

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