作業員が待機する免震重要棟と呼ばれる建物に貼り出された『汚染水マップ』では、4号機のタービン建屋地下はほぼ水没したことが示されていました。所長からは、『4号機の地下には絶対に近づくんでねぇ』と言われています。
『汚染水マップ』には、1号機の溜まり水から1000ミリシーベルト以上の放射線量が計測されたことも記されていました。これは、作業員の年間被曝限度量250ミリシーベルトの4倍に相当するほどの凄まじい線量です」
吉岡さんによると、建屋内での仕事を拒否する作業員もいるという。
「そんな地獄のような環境で、誰が働きたいと思いますか。肌が水にじかに触れただけで、大量被曝し命を失うかもしれないんですよ。死にに行くようなものでしょう。
中には、被曝を恐れて会社を辞めた作業員もいます。現在でもあちこちに溜まった汚染水を避けながらの仕事で、作業は遅々として進んでいません。大雨が降ったら、足場はさらに悪くなります。仲間内では『雨が多くなり汚れた水が増えたら、被曝する前に職場放棄するべ』と半分真剣に話しているんです」
巨大タンカーで輸送せよ
作業員がこれほど恐れる汚染水。これから来る梅雨や台風に備え、東電はどのような対策を立てているのだろうか。
「資材が飛ばされないようにシートを被せることを徹底し、建物内に雨水が流入しないよう(周囲に)土嚢を積みます。屋根のない建屋では、水位の変動をしっかり監視し対応する所存です」(広報部)
開いた口が塞がらない・・・。東電は本気で、豪雨をシートと土嚢で防げると思っているのだろうか。京都大学原子炉実験所の小出裕章助教が憤る。
「土嚢を積むなどとお粗末なことを言う前に、東電は溜まった汚染水を除去する方法を考えるべきです。核燃料は冷却しなければなりませんが、現在のように外から注水を続けていると、その水がそのまま汚染水になってしまいます。大量の雨が降れば、汚染水の量はさらに増えます。最も重要なのは、外から水を入れるのではなく、原子炉内の大量の水を循環させて核燃料を冷却するシステムを早く確立することなのです。
しかし循環冷却回路を設置するには、まず現在ある汚染水を除去しなければなりません。放置していては放射線量が高すぎて、作業は効率的にできず、工事は進まないでしょう。10万tにのぼる福島第一の汚染水は集中廃棄物処理施設や仮設タンクに少しずつ送られていますが、その容量は1万~2万tしかないうえ、ほぼ満杯に近づいています。早急に、新たな汚染水の保管場所を確保すべきです」
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