先日、とあるNPO法人が、セックス経験のない大学生等を対象に、性生活の学習と体験の機会を合宿形式で提供する『成人合宿』なるものを企画し、世間の波紋を呼びました。(※1)
実際に開催されるかどうかはともかくとして、こうした合宿が注目されること自体、未経験男女のコンプレックスの強さを象徴しているように思われます。女性の場合は、「自分に性的な魅力が乏しいのでは?」という悩みが強いのかもしれません。
一方で、交際・結婚するのであれば絶対処女じゃなきゃ!という、いわゆる『処女厨』な男性もこの世には数多く存在します。こうした処女信仰は、性に対するひとつの価値観にすぎないように思えますが、実は、複数の研究により、生物学的にみても『男性(オス)は処女が好き』という事実が判明しています。
■1:交尾を誘うフェロモンたっぷりな処女蜘蛛
ドイツ人生物学者が発表した研究内容によれば、オスの蜘蛛は経験豊富なメスよりも処女のメスを好むことが明らかに。(※2)
研究では、21匹のメスを同数のオスの蜘蛛に選ばせた結果、処女のメスが12匹のオスを獲得。処女が支持率6割近くのモテぶりを発揮しました。生物学者によれば、処女のメスはオスを呼び寄せるフェロモンを出しており、しかもこのフェロモンは、一度でも交尾をするともう出なくなってしまうとのこと。
『もう騙されないで!フェロモン香水は人間に効果なし』という記事でもご紹介した通り、今は人間にも応用できるフェロモンの研究が進んでいるので、このメス蜘蛛フェロモンも非モテ女子の救世主になるような使い方を見つけてほしいものですね。
■2:菜の花畑の過酷な恋愛事情
生物学者・池田清彦氏の著作(※2)によれば、モンシロチョウも処女がお好き。
野や畑で見られるモンシロチョウの姿は、春の訪れを感じさせる風物詩ですが、実は飛び回っている大半がオス。彼らはメスが蛹から羽化するのを今か今かと待ち構えているのです。というのも、モンシロチョウのメスは、一度の交尾で受精・産卵できるので、その後は二度とと交尾しなくなるという習性があります。(まれに例外もありますが)そのため、自分の子孫を残したいオスのモンシロチョウは是が非でも処女のメスと交尾しようと、まだ翅も固まらないうちから虎視眈々というわけなのです。
チョウは大体こんな感じなので、ほとんど処女がいないとのこと。ウブなメスを我が物にしようと企むモンシロチョウの姿は、まさに新入生の女子生徒を狙ってコンパに誘う大学生のようです。うららかな菜の花畑でも、実は壮絶な駆け引きが繰り広げられているのかもしれませんね。
■3:いるわいるわ…昆虫界の『処女厨』たち
同じく池田氏の著作によれば、黄や黒のだんだら模様が優美なギフチョウも処女好きで、羽化したばかりのメスを狙って交尾します。とはいえ、メスがオスに犯されまくりというわけではありません。
ギフチョウの場合、事後も入念で、受精後のメスの生殖腔に粘液で蓋をして他のオスとセックスできないようにしてしまいます。いわば蝶バージョンの『貞操帯』を作ってしまうというわけです。
このほか昆虫では蚊によく似たユスリカという昆虫もなかなか筋金入りの『処女厨』で、メスの蛹を食い破って交尾に持ち込むという荒業を披露。ここまでくると、光源氏もびっくりのロリコンじゃないか……とも思われますが、昆虫界の種の保存サバイバルがそれだけ苛酷だということでしょう。ちなみに、オスに求愛されないメスは、サナギのまま死んでしまうそうなので、メスは生きるためにオスと交尾しなければいけないのです。
このような昆虫の生態を人間のオスに当てはめると、『処女好き』というのは、確実に自分の子孫を残したいという本能の現れといえるかもしれません。
いかがでしたか? オスの『処女好き』は、単なる個人の価値観の問題を超えて、本能にも依拠したものということが、蜘蛛やチョウの事例から垣間見えるのではないでしょうか。
もし女性で処女であることにコンプレックスを持っている方がいらっしゃったら、どうか自信をもって素敵な恋を見つけてほしい……。そう願わずにはいられません。
【参考】
※1.ネットで募集の「成人合宿」 初体験のお相手は抽選で決定-ZAK・ZAK
※2.男性が処女を好きになるのは本能? 蜘蛛の世界でもオスは処女のメスを好むことが判明-デジタルマガジン
※3.池田清彦(2010)『メスの流儀 オスの流儀』 静山文庫
【協力】
※ ガンガンJOKER『アラクニド』 村田真哉
(著:中田綾美)