◇「僕のお父さんは 東電の社員です」
4月上旬、毎小編集部に小学6年の男の子から一通の手紙が届きました。文面は、「突然ですが、僕のお父さんは東電(東京電力)の社員です」と始まります。そこには、福島第1原発の事故で、東電の一員として批判を浴びる父親の姿を見ながら、原発について考え続けた彼の意見がつづられていました。【小丸朋恵】
手紙を送ってくれたのは、東京都に住む、ゆうだい君(仮名)。
3月27日の毎小に掲載された「NEWSの窓」の記事「東電は人々のことを考えているか」を読んだことが、手紙を書いたきっかけです。
この記事では、東京電力が福島第1原発の事故をおさめることに失敗し続けていることや、電力が不足するため、関東地方を中心に地域を分けて順番に電気を止める「計画停電」を行い、多くの人に不便な生活を強いていることを挙げて、東電の責任を追及しています。
ゆうだい君は、「たしかに、ほとんどは真実です」と受け止めた上で、こう反論します。
<ですが、(記事の)最後の方に「危険もある原子力発電や、生活に欠かせない電気の供給をまかせていたことが、本当はとても危険なことだったのかもしれない」と書いてありました。そこが、無責任なのです。
原子力発電所を造ったのは誰でしょうか。もちろん、東京電力です。では、原子力発電所を造るきっかけをつくったのは誰でしょう。それは、日本人、いや、世界中の人々です。(中略)発電所を増やさなければならないのは、日本人が、夜遅くまでスーパーを開けたり、ゲームをしたり、無駄に電気を使ったからです。
そう考えていくと、原子力発電所を造ったのは、東電も含み、みんなであると言え、(中略)みんなも無責任であるのです。>
この手紙が書かれた3月末から、さらに1か月半がたちました。福島第1原発の復旧作業はいまだに一進一退が続いています。14日には、中部電力が浜岡原子力発電所(静岡県御前崎市)1~5号機すべての原子炉の運転を止め、あらためて地震や津波への安全対策を見直すことになりました。
日本社会は今、原発から放射性物質が広がる不安と、電力が不足する心配で世論が揺れ、「原発をやめるべきだ」「いや、原発は重要なエネルギー源の一つ」などの議論が高まっています。
そこで、ゆうだい君の手紙は、こう締めくくられます。
<(原発について)みんなで話し合ってきめるべきなのです。そうすれば、なにかいい案が生まれてくるはずです。>
先日、ゆうだい君本人に会い、手紙を書いた時の気持ちを聞きました。手紙を書いたのは、3月27日の毎小を読んですぐ。それまで計画停電で学校や塾が早く終わり、考える時間がたくさんあったので、数時間で一気に手紙を書き上げたそうです。ゆうだい君は<「自分とは違う意見を聞けば、さらに考えが深まります。今は、いろいろな意見交換ができる場所が必要です」>と話していました。(手紙は2面に紹介しています)
原発は必要なのか、いらないのか。必要であれば、誰が管理して、どこに置くのか。いらないのであれば、エネルギー不足にどう対処するのか。クラスの友だちや家族と話し合ってみてください。そして、ゆうだい君の意見を読んで考えたことを、編集部に手紙で送ってください。紙面で紹介します。
【手紙の宛先】
〒100-8051
毎日小学生新聞
「ゆうだい君への手紙」係