福島第1原発事故の原因を究明する第三者機関「事故調査・検証委員会」の初会合が、7日行われた。事故の検証はもちろん、原子力行政の歴史や背景、安全規制の在り方まで切り込み、原子力を根本から問う調査を望む。
東京電力、国にも、国民は不信感を抱いている。格納容器の蒸気を外に逃がす弁の操作(ベント)の遅れ、避難指示などの初動対応や情報遅れが積み重なったからだ。議論は遅滞なく公開する必要がある。
海への汚染水放水で、日本は国際的信頼を失った。インターネットなどを通じて国内外で検証委の議論をリアルタイムで理解できるよう情報発信を心掛けたい。信頼回復には、砂上の楼閣にも似た原発の「安全神話」の虚実を、包み隠さず明らかにすることが必要だ。
畑村洋太郎委員長は「責任を追及する調査はしない」と述べた。調査項目は「何が起こったのか」「なぜこうなったのか」が大きな柱だ。事実を隠さずに語ることが、不利益にならないよう配慮するなど制度的な担保も必要だろう。
事故の教訓を最大限に生かすことが大切だ。調査結果は、国際的にも重要な知見となるはずだ。
「原子力村」の関係者を委員に含めない異例の構成は、従来にはない国の姿勢を示した。一方で原子力の専門家抜きで本当に究明できるのか懸念もある。
検証委事務局には、「事故原因等調査チーム」など四つのチームを置く。事務局は約30人の官僚が中心だ。
高速増殖炉原型炉もんじゅの事故や、茨城県東海村で起きた臨界事故でも、国による調査は、原子力を「通常状態」に戻すことが狙いだった。今回は問題点、うみを出し尽くすことを眼目とすべきだ。国民が納得できる委員会独自の調査結果をまとめ、第三者機関の存在意義を示してほしい。
20世紀は「原子力の世紀」でもあった。核のエネルギーを解き放ち、人類は自らをも滅ぼす力を持った。平和利用といわれた原発もいったん事故が起こると国の存立を危うくしかねない。今回の事故が、それを象徴する。
初会合では「100年後の評価に耐えられる結果」を目標に掲げた。世紀を超えて、われわれの子孫へ付けを回すことがあってはならない。新しいエネルギー政策への道しるべとなる歴史的報告となることを期待したい。
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