ここから本文です

木星の衛星イオ、火山の下にマグマの海

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト 5月16日(月)14時2分配信

 木星の衛星イオの地殻の下には、深いマグマの海が隠れていることを示す最新研究が発表された。

 イオは地球の月よりわずかに大きい程度だが、太陽系で最も火山活動の活発な天体だ。それほどの噴火を起こすイオの内部には、溶けた部分がどれだけあるのかという長年の議論に、今回の発見が回答を示した。

「イオには、常に400かそれ以上の活火山が存在する」と、今回の研究を率いたカリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の惑星物理学者、クリシャン・クーラナ氏は話す。「火山活動は強力で、火山プルーム(噴煙)が約500キロ上空まで噴き上がり、宇宙空間にまで達することもある」。

 しかし今回、広大なマグマの海が見つかったことで、「なぜこれほど多くの火山が存在し、溶岩はどこから出て来るのかという謎」が解けたという。

 クーラナ氏のチームは、NASAの宇宙探査機ガリレオが収集したデータを再分析して今回の発見に至った。ガリレオは1995〜2003年に木星の軌道を周回し、その間に、イオを含む木星の各衛星へのフライバイ(接近通過)を繰り返した。

 ガリレオのデータは、イオが木星の巨大な磁場を屈折させていることを、電磁誘導というプロセスを用いて明らかにしていた。この電磁誘導は、「空港の金属探知機に使われている原理とよく似たものだ」とクーラナ氏は述べている。

 クーラナ氏によると、マグマは導電率が高いという。この特性は、イオの地下に存在するとみられるものに近い、溶けた岩石を用いた実験で明らかになった。

 木星の磁場がイオを通り抜ける際、イオにあるマグマの海と相互作用を起こし、溶けた岩石の層の外縁に潮流が生じる。潮流は自ら電磁波を発生させ、その電磁波の作用で木星の磁力線が屈折することが、ガリレオのデータによって突き止められた。

 データによれば、イオのマグマは地表から約30〜50キロ地下の、地殻とマントルの間の層に存在するようだ。マグマの層は厚さが少なくとも50キロあり、最大で320キロに達する可能性もある。

 さらに、マグマはおそらく完全な液体ではなく、溶けた岩石や結晶が入り混じったマグマの軟らかさは、解けかけた雪と同程度だとクーラナ氏は言う。

 この熱い“ぬかるみ”は、木星の巨大な重力が引き起こす潮汐力によって生まれる。木星の軌道を周回するイオが潮汐力にゆっくりと“揉まれる”ことで、岩石の結晶が互いにこすれあい、膨大な量の熱が生み出される。

 マグマの海は、ひとたび形成されると内部に潮汐エネルギーを集め、マグマ層を熱い状態に保つと考えられる。「ドロドロしたマグマの海は、摩擦熱を起こすにはうってつけの環境だ」とクーラナ氏は話す。

 クーラナ氏によれば、イオの火山は多量のイオン化ガスを放出しており、それもまた木星の磁場と相互作用するため、今回のような発見はこれまで不可能だったという。

 磁場とマグマの海が起こすもう1つの相互作用を、この余計なデータと区別して検知できるコンピューターモデルが必要であり、それを開発するのに今まで時間がかかった。

 イオにマグマの海が存在する証拠を示した今回の研究は、5月12日に「Science」誌オンライン版で発表された。

Richard A. Lovett for National Geographic News

【関連記事】
木星の衛星イオの溶岩 (写真集:木星)
地球のマントル深部に液体マグマ層?
土星衛星タイタンに氷の火山?
木星の衛星イオ (写真集:惑星)
木星の衛星エウロパに魚が生息?

最終更新:5月16日(月)14時2分

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイト

 

ナショナルジオグラフィック 公式日本語サイトの前後の記事

 
注目の情報
これが7000万円台、憧れの一戸建

吹き抜けのリビング、大きな収納…この広さがこの価格で手に入るとしたら心も決まるハズ。120平米超だから叶う、ゆとりある暮らしを実現!やっぱり…庭つき一戸建てに住みたい![SUUMO]
庭つきの家、こんなに広い…。
PR

注目の情報


PR