2011年4月7日15時2分
東日本大震災で被災した福島第一原子力発電所について、米原子力規制委員会(NRC)がまとめた報告書が、原子炉内に注入した海水の塩が炉を厳しい状況に陥らせているという認識を示していることがわかった。東京電力は炉内の核燃料を冷やすため、緊急措置として近くの海から一時的に消防車のポンプで海水を注入していた。
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NRCの報告書(3月26日付)で強く示唆されているのが、海水を原子炉の核燃料の出す熱(崩壊熱)を冷やすのに使う弊害だ。
報告書では、1〜3号機では、原子炉の圧力容器の底に、燃料が壊れてたまっていると分析。燃料は、一時注入していた海水に溶け込んでいた塩分が結晶化したものに覆われており、冷却水の流れが妨げられている、とみている。
注水ノズルも塩分で妨げられており、十分に機能していない可能性があるという。そのため、核燃料から出る熱をどれだけ冷やせているか、測るのが難しかったという。
さらに、1号機の圧力容器の温度は今でも200度以上の計測値を示し、なかなか下がらない。2、3号機よりも結晶化して核燃料を覆った塩分の量が多く、冷却をより難しくしていたと推定される。
その上、報告書によれば海水は真水(淡水)に比べて、核燃料の出す放射線の影響で水素ガスを発生させやすい。海水には酸素も含まれるため、水素と酸素がまじって、水素爆発する危険性も高まる。
報告書は海水注入が格納容器の中に「危機的な状況を作り出す」としている。そのため窒素の注入と、格納容器内から外部にベント(排気)をし、格納容器内の圧力を下げることを提案している。そうすれば「最大限の注水ができるようになる」という。
福島第一原発では3月11日の地震後に停電や非常用発電機が止まった影響で、1〜3号機で、原子炉の核燃料を冷やす冷却機能を失った。