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原発:推進維持でも各国、世論恐れ 沈静化待つ中国

 福島第1原発の事故で世界各国・地域の政府の対応は割れている。ドイツやスイス、台湾が「脱原発」にかじを切る一方、米仏露は原発推進の姿勢を堅持している。新規の原発計画を一時停止した中国などは原発推進を前提に反原発ムードの沈静化を待つ構えだ。【岩佐淳士】

 ドイツのほか、「脱原発」に傾いたのは台湾。5月下旬、稼働中の原発6基を18~25年に順次廃炉にする方針を決定。また、スイス政府も稼働中の5基を19~34年に廃炉にする政策を決めた。イタリア政府は4月中旬、原発再開計画の無制限凍結を表明。ただ、ベルルスコーニ首相は、「原子力は全世界にとっての未来だと確信している」と持論を改めて強調し、反原発の世論が収まるのを待つ措置との見方もある。

 一方、発電量の約8割を原子力に依存する「原発大国」のフランスは原発推進の立場を堅持している。世界有数の産業を抱え、今回の事態をむしろドイツへの電力輸出の商機と捉えるむきもある。サルコジ大統領は開発中の次世代原発について「安全性は(現行の原発より)10倍高い」とアピールしている。

 米国のオバマ大統領は3月末に「次世代原発の設計・建設に日本の(福島第1原発)事故の教訓を生かしたい」と演説。輸入原油への依存度を減らすため、原子力を含む「クリーンエネルギー」を推進する政策を改めて強調した。新興国への原発輸出を図るロシアも引き続き原発推進の構えだ。

 新興国は世論の動向を気にしている。中国政府は3月中旬、新規原発の建設計画の審査・承認手続きを一時停止したが、「導入予定の次世代原発はより安全」とも強調した。あくまで国民の不安解消が狙いで、原発増設の方針に変更はない。

 一方、韓国の李明博(イミョンバク)大統領はこれまで通り原発推進の方針だが、原発誘致が大きな争点となった4月末の江原道知事選では原発反対を掲げた野党候補が当選した。インド、トルコ、ベトナムも原発の建設・計画を継続しながらも、国内での反原発運動の盛り上がりを警戒している。

毎日新聞 2011年6月2日 東京朝刊

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