さいたま市に本部を構える「花まる学習会」。小学生以下を対象とした80教室を関東一円で展開、そのオリジナルの教材は多数出版されるほどの人気の学習塾だ。さぞかし高い進学率を売りにした受験対策の塾かと思いきや、その授業内容は"塾"の概念を大きく超えるユニークなもの。しかも掲げる教育方針はなんと、「一人でメシが食える大人になること」。
実は高濱には社会への強い危機感がある。そのキーワードとして高濱が挙げるのは、「合わない」という言葉だ。上司と合わない、会社と合わない、親と合わない…。合わないという言葉に逃げ込み、合わせるための必死の努力をしない、育ち切れていない大人たち…。
高濱は、生きていく困難を自分で乗り越えるための"たくましさ"を、子供たちの中に育てたいと思っている。野外学習の機会を積極的に取り入れているのも、パズルや「なぞペー」と名づけられたクイズ形式の教材を使った独特の授業も、そうした教育方針の一環だ。こうして、花まる学習会の教室には、好奇心に満ちた子どもたちの輝く表情があふれている。
大人にだって必要なはず!未来を拓く「学び」の哲学に迫る。
"知力"と"人間力"を10歳までに身につけろ!
「キューブキューブ」や「なぞペー」といった独自の教材が、"知力"を身につける花まる学習会の学び。
その一方で重要なのが野外での"感動・愛され経験"だ。自然との触れ合いや、親元を離れて他人と一緒に過ごすことで巻き起こる様々なトラブル。それを経験することで子供たちに、"人間力"を身につけさせる。この"知力"と"人間力"が身につくことで、子供は「食える大人」へと成長していく。
子供を「食える大人」にすることこそ、代表・高濱正伸の教育理念。
実は子どもより、親への教育が肝心!…迷える親たちへの高濱のアドバイスとは?
子供を「食える大人」にするには、親のあり方が重要だと高濱は強く語る。
小学校などで開かれる講演会に度々招かれては、親がどうあるべきかを伝え続けてきた。そして親子一緒の野外教室では、親までも育ててしまう。
「今の子供は、ゲームなど中心で、野外での貴重な経験をしていない。それは今の子供を持つ親にも言えること」。参加した父親も…、「父親のイメージはなんとなくあったが、一緒に学んでいると思う。」
目指すのは、社会を勝ち抜く大人じゃない!「食える大人」を育てる
花まる学習会を立ち上げた髙濱も、ここまで全てが順調に来たわけではない。
3浪して東大へ。大学でも4留。そんな髙濱だからこそ分かることがある。それは、机の上での勉強だけでは"食える大人"になれないということだ。
全国に60万人以上いるとされるニート(無業者)たち。厚生労働省のアンケート調査では、その80%以上が仕事をしていく上で不安を感じ、70%近くが、自分の意見が合わない人と付き合いたくないと答えている。悩める若者たちも、髙濱を頼ってやってくる。高濱はそんな彼らに、こう語る。
「会社が合わない、○○君と合わないって、自分が合うところがどこにあるの?合わないのは当たり前で、それを乗り越えていくのが人生!」
【ゲストプロフィール】
1959年 熊本県人吉市生まれ
1993年 東京大学大学院修士課程修了後、埼玉県で「花まる勉強会」設立。
1997年 「花まる学習会」に名称変更
算数オリンピックの問題作成委員。
独自教材「なぞぺー」「算数脳ドリル立体王」シリーズなど多数。
どんな時代にも対応できる「理想の教育」というのはない。富国強兵の時代から優秀な兵士と工場労働者が求められてきたが、当時のコンセプトに代わる考え方とシステムはいまだに確立されていない。高濱さんは、子どもたちを「メシが食える大人」に育てようとしている。今、自分の力で「うまいメシ」を食える大人は少ない。「楽しそうだから早く大人になりたい」そういう子どもたちが増えることが、日本の教育には必要である。
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