2011年4月15日 21時13分
東京電力福島第1原子力発電所の事故で避難や屋内退避を余儀なくされた人を対象に、当面の生活費として1世帯当たり100万円(単身者は75万円)の一時金仮払いが決まったが、本格賠償への道は遠く、住民らの不安は消えない。福島県の佐藤雄平知事は15日、県災害対策本部会議で「一時金は入り口に過ぎない」と強調した。
「東電は一時金で補償を終わらせようとしているのではないか」。同県伊達市の避難所に身を寄せる南相馬市の会社員、佐藤光俊さん(51)は疑う。原発から約25キロ離れた自宅が津波で全壊、妻も仕事を失った。両親、妻、2人の子供を養っていかなければならないが、勤務先は避難指示が出た原発20キロ圏内。「金より安定した仕事がほしい」と訴える。
年金生活者の夫と暮らす同市のパート職員、高野ユリ子さん(59)も勤務先のトマト栽培・販売会社が被災して転職先を探しており、「仕事をくれた方がありがたい」。
20キロ圏外で計画的避難区域に指定される見通しの飯舘村の農業、菅野今朝男さん(62)は「圧倒的に足りない」。ワサビの出荷が制限され、約300万円の損失が見込まれる。「金額の話じゃねえ。農家の命である空気、水、土、今まで通りの生活を元に戻してもらいたい」と語気を強めた。
埼玉県加須(かぞ)市に両親と避難している福島県双葉町の建築業、栗田浩文さん(46)は「助かる」としつつ「対応が遅すぎる」。突然の避難指示で手持ちの現金はほとんどなかった。「とにかく最初に5万円でもいいから欲しかった」
同市に夫や3人の子供と避難している同町の自営業、笠原美貴子さん(39)はこれまでホテル滞在費を含め20万円以上を出費。日々の風呂代や子らの服代などがかさむ一方、事業再開も見通せず「全然足りない」と嘆いた。【前谷宏、松谷譲二、町田結子】