放射性物質:教育現場に戸惑い 国の安全基準定まらず

2011年4月15日 20時57分

 東京電力福島第1原発事故で大量に放出された放射性物質の影響が懸念される中、登校の可否などに関する国の安全基準が定まらないまま、大半の市町村では新学期が始まった。福島市教委は各学校に対し、屋外での活動を自粛するよう独自の通知を出したが、「健康安全が第一とは言いつつも、子どものストレスを考えるといつまでも屋内でいいのかという問題もある。国が早く基準を示してほしい」(学校教育課)と国に早期の対応を求めている。

 安全基準をめぐっては3月30日、福島県教育委から国の現地対策本部に相談があったのを受け、文部科学省などが検討を進めている。原子力安全委の代谷誠治委員が13日、安全基準の検討状況を問われ、「子どもは(年間の累積被ばく放射線量を)成人の半分の10ミリシーベルト程度を目安に抑えるべきだ」と発言。ところが、高木義明文科相が14日の参院文教科学委員会で「基準は年20ミリ」と答弁すると、代谷委員も同日の会見で「できるだけ子どもの被ばくを少なくするのは通常のことなのでそう言ったが、安全委の決定ではない」と修正した。

 福島県は4月上旬、県内の小中学校や幼稚園などの校庭や園庭で大気中の放射線量を調査した。市民団体「原発震災復興・福島会議」が集計した結果、75.9%(1242施設)が、原子力施設で不要な放射線被ばくを避けるため法令で設定されている放射線管理区域基準(3カ月で1.3ミリシーベルト)を1時間あたりに換算した値の0.0006ミリシーベルトを上回っていた。特に福島市などの県北地域や南相馬市などの太平洋沿いの北部地域では96~99%で管理区域基準の数値を超えていた。

 文科省の原子力災害対策支援本部は、安全基準について「登校の可否だけを示すのか、学校生活上の留意点を示すガイドライン的なものになるのか、まだ未定。慎重に検討している」と話す。14日からは放射線量が特に高い50施設で改めて土壌と大気を調査しているという。福島会議の中手聖一・世話人は「始業式のために遠方の避難先から戻ってきた子どもも多い。保護者の不安は募っており、管理区域基準の値を超える学校では当面、授業中止や集団疎開などの措置を取るべきだ」と訴えている。【須田桃子、西川拓】

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