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iPS細胞:量産へ「魔法の遺伝子」 山中・京都大教授ら発見

 マウスやヒトの人工多能性幹細胞(iPS細胞)の作成効率を大幅に上げる遺伝子を、京都大の山中伸弥教授らのチームが発見した。この遺伝子には、がん化しやすい不完全なiPS細胞の増殖を抑える効果がある。9日付の英科学誌ネイチャーに発表する。

 Glis1(グリスワン)と呼ばれる遺伝子。iPS細胞は、皮膚など既に分化した一般の細胞を、受精卵の細胞同様に戻す「初期化」という工程を経て作られ、初期化には4種類ほどの遺伝子を細胞内に入れる方法が用いられる。前川桃子・京大助教(分子生物学)らは、産業技術総合研究所が蓄積した遺伝子のうち約1400種を使い、他の遺伝子と組み合わせては細胞内に入れる作業を繰り返し、Glis1遺伝子を見つけ出した。

 Glis1は、他の初期化遺伝子の働きを促進したり、初期化が不完全だった細胞の増殖を抑える働きもあるといい、Glis1を使う方法では、できあがった細胞に占めるiPS細胞の割合が、マウスで従来の約5倍、ヒトで約4倍にもなった。

 従来の初期化遺伝子は、胚性幹細胞(ES細胞)で働く遺伝子群から発見されたのに対し、Glis1は、卵子や初期の受精卵の中で強く働く遺伝子。山中教授は「卵子にはES細胞にない秘密があると考えられてきたが、Glis1は間違いなくその一つ。魔法の遺伝子を見つけた」と話している。【須田桃子】

毎日新聞 2011年6月9日 東京朝刊

 

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