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税金の無駄づかい? 謎の新駅『筑後船小屋駅』に大物政治家の影が!?

週プレNEWS 5月15日(日)23時18分配信

■野原の中の無人駅が、突如、新幹線駅に

 3月12日。九州新幹線が博多駅から鹿児島中央駅まで全線開通、新駅もいくつか誕生した。実におめでたい話……にみえるが、地元住民からは「なんでこんな辺鄙なところに駅ばつくるのか、わからん。税金のムダ遣いばい」との声が聞かれる新駅もある。

 新幹線の建設費は3分の2を国が、3分の1を地元自治体が負担する。つまり、国民の税金が投入される。本稿では、新駅の実際の利用状況を調査し、それが効果的な投資であったといえるのかを考えてみたい。

 福岡県南部の筑後市内に設置された筑後船小屋駅(ちくごふなごやえき)。この駅も“税金のムダ遣い”と囁かれる駅のひとつだ。まずは、この場所に新幹線の新駅をつくる必要はなかったのではと考える根拠を列記していこう。

 筑後市は人口約4万9千人。北に久留米市、南にみやま市を挟んで大牟田市という中核都市の間に位置する小さな市だ。例えば、東海道新幹線の平均駅間距離は34.5km。翻えって筑後船小屋駅から隣の久留米駅へは15.8km、新大牟田駅へは17.8kmと東海道新幹線の平均駅間距離と比べて半分ほどしかない。ゆえに、38年前に九州新幹線の建設構想が生まれた当初はこの地に新駅を設置する計画はなかった。

 その後、なんらかの動きがあって筑後市内に新幹線の新駅を設ける必要が生じたとしても、設けるのであれば筑後船小屋駅から3.6km博多寄りにある筑後市の中心駅・羽犬塚に併設するのが利用客数の多さから考えて合理的であろう。

 一方で筑後船小屋駅は市街地からは遠く離れ、周辺は見渡す限り野原。民家は遠くに見えるのみ。もともとあった在来線の駅(船小屋駅。新幹線の開通に伴い、筑後船小屋駅に改称)は各停が止まるのみで飲み物の自販機が1台置かれるだけの無人駅だった。その程度の利用者しかいない場所になぜか新幹線の新駅がつくられたのだ。併設する在来線駅の利用者はこう話す。

「例えば博多に行くとしても、在来線の快速ならば新幹線と20分しか変わらない。ならば、1200円も特急料金を払ってまで新幹線を使うことはない」

 果たして、こうした悪条件を乗り越えてまで投資に見合う利用者がいるものなのだろうか。小誌は開通後のある一日に、始発から終電まで改札口に立ち、実際の乗降客を数えてみた。

 4月13日(水)。この駅に停発車する列車は朝6時発の始発博多行きから、23時58分この駅止まりまで、上下合わせて計59本。その結果、全乗降客数は577人。1列車あたり約9.8人であった。特に鹿児島方面への利用者は少なく、乗降客は平均2人で、ゼロの列車も目立った。

 駅自体は3階建ての立派な建築物だ。だが、同駅周辺には「公園の中の駅」で規制もあるせいか、飲食店やコンビニは一軒もない。ATMもない。駅の中には1ヵ所だけキヨスクがあるが、それも営業時間は7時から19時までだ。駅前にはタクシーが1、2台は止まっているものの、運転手は「この駅につけてても客はおらんけん、商売にはならん」との諦あきらめ顔。駅員はあまりにもヒマなのか、乗降客を数える記者をたびたび偵察しに現れ、そして一日のほとんどの時間、この駅は静寂に包まれていたのだった。


■駅から車で10分の所に自邸が……

 筑後船小屋駅と駅前などの周辺地域の整備を合わせた総事業費は約88億円に上る。そして地元負担金は20億円以上になる。一方で、駅が位置する筑後市は現在約300億円の財政赤字を抱えている。こうした点から筑後船小屋駅の設置反対運動をした弥吉治一郎(やよしじいちろう)筑後市議は次のように語る。

「借金だらけの筑後市がどうやってそんな大金払っていくとですか? 地方税のアップとかに跳ね返るのは目に見えてるじゃなかと」

 だが、当の筑後市役所はこの駅の一日の乗降客数見込みを在来線と合わせて平均3千人とする調査結果を出していた。小誌の調査ではその2、3割程度の利用客数しかない。どういった根拠で見込み数を算出したのか尋ねたところ、「えっ、調べたんですか!? あれは、その〜……あくまでも今後のことを踏まえての数字で……。駅周辺の公園には県立美術館の分館もできる予定ですから」(筑後市商工観光課のO氏、N氏)と、不機嫌そうに答えるばかりであった。

 筑後船小屋駅の設置反対を訴えた別の筑後市議はこう話す。

「結局、新しい新幹線のどこに駅をつくるかなんてことは、そのときの地元の実力者の意向が反映しますからね」

 地元の実力者とは誰か。参考までに筑後船小屋駅から車で約10分走ると、自民党道路族の大物で、この地域(衆議院福岡7区)を選挙区とする古賀誠衆議院議員の自邸があり、5分の場所には古賀誠議員の母堂の自宅がある。駅のすぐそばには、古賀誠議員と二人三脚で成長してきた大物福岡県議・蔵内勇夫氏の自宅や事務所がある。

 そして、古賀誠議員の中選挙区時代の選挙区内(旧福岡3区)には、九州新幹線の全通に合わせて「久留米」「筑後船小屋」「新大牟田」と3つもの新幹線駅が設けられた。

 古賀誠議員の初当選は31年前。前述のように九州新幹線に筑後船小屋駅設置の計画など皆無だった頃だ。だが、氏はその頃から地元でことあるごとに「土建屋を育てないと日本は滅びるばい」と語ってきた。そして今年、投資効率がいいとは思えない新駅ができた。

 氏の政治資金収支報告書を見ると、長年、地元の土木建設業者から多額の政治献金を受け取ってきたことがわかる。氏の後援会元幹部が話す。

「誠ちゃんがつくった“誠”新幹線と“誠”駅っちゅうことで、この前、仲間5人と筑後船小屋から鹿児島まで遊びに行ったとたい。そんときは1車両にオレらだけ。快適な旅ば楽しめて、感謝しとるばい」

 筑後船小屋駅の設置に大きな影響を及ぼした“功績”からか、古賀誠議員は3月12日の開通日には同駅でテープカットをし、祝賀会に参加する予定だった。だが、これらは前日に起きた東日本大震災の影響ですべて中止となったが……。前出の弥吉筑後市議は訴える。

「こうした新幹線の新駅などで一時は土木建設業者は潤うかもしれないが、長い目で見ると赤字財政や増税などで地域住民全体を苦しめることになる。今後はこの駅の費用対効果と設置の責任を厳しく問い詰めていきたい」

(取材・文/鎌倉三次)

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最終更新:5月15日(日)23時18分

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