2011年4月13日 20時14分 更新:4月14日 7時16分
【カイロ伊藤智永】エジプト検察当局は13日、ムバラク前大統領(82)と息子2人を、1~2月の反政府デモに対する暴力的弾圧に深く関与し、多数の死傷者を出した容疑などで拘束した。大統領在任中、地位を利用し家族ぐるみで不正に蓄財していた容疑でも調べる。拘束期間は15日間。刑事訴追は必至とみられる。民衆が望む民主化への重要なステップとして、約30年間続いた独裁政権腐敗の中枢にメスが入る。
ムバラク氏は2月11日の退陣後、家族と共に同国東部シナイ半島の高級保養地シャルムエルシェイクに隠とんし、事実上の軟禁状態にあった。4月12日夕、同地の病院に入院したが、検察はこの日夜から13日未明にかけて病院内で事情聴取し、入院したまま拘束。
兄アラア氏(49)と弟ガマル氏(47)の息子2人は12日夜、シャルムエルシェイクで事情聴取された後、カイロ近郊の拘置所に入れられた。
ガマル氏は反政府デモで辞任するまで与党国民民主党(NDP)の政策委員長の要職を務め、父親の後継者として次期大統領候補とも見られていた。立場を利用し、政権運営に実権をふるっていたとされ、デモ弾圧への関与が疑われている。
保健省は、デモ弾圧によって、少なくとも365人が死亡、5500人以上が負傷したと発表している。
ガマル氏は、友人のビジネスマンや政治家らによる公金横領も疑われており、捜査が進行中。アラア氏も裕福なビジネスマンだ。
英ガーディアン紙は、一家が不正蓄財によって海外に総額700億ドル(約6兆円)もの資産を保有していると報道。欧米各国は、資産を凍結している。
エジプトでは、治安部隊にデモ弾圧を指示した当時の内相らが訴追されたほか、NDP元幹事長や大統領と議会の助言機関である諮問評議会(シューラ)の議長など、前政権の有力者が汚職容疑で次々と拘束されている。