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特集地軸2011年06月09日(木)

最後の大物戦犯

 一言では言い尽くせない不快な響きがある。民族浄化。1990年代、旧ユーゴスラビア紛争のボスニア・ヘルツェゴビナ内戦で民族浄化を指揮したセルビア人勢力の元軍最高司令官が先月末に拘束され、オランダの国際戦犯法廷に引き渡された▲
 ジェノサイド(民族大量虐殺)などの罪で95年に起訴され、逃亡を続けていたラトコ・ムラディッチ被告。3年前の政治指導者ラドバン・カラジッチ被告に次ぐ最後の大物戦犯拘束のニュースは世界を駆け巡った▲
 イスラム教徒とクロアチア人を加えた3勢力が争ったボスニア内戦。市街地でゲームのように市民を狙い撃つ民兵、後ろ手に縛られて発見された遺体の数々。当時の映像がいや応なく記憶によみがえる▲
 ムラディッチ被告が指揮したスレブレニツァの虐殺では7千人以上が犠牲となった。民族浄化は大勢の命を奪った上、組織的なレイプなどが行われた点で非人道性が際立っていた▲
 しかも3勢力いずれもが同様行為に手を染めた。紛争は領土争いの側面が強かったことも明らかになり、民族主義が利用され制御不能に陥ったさまが浮き彫りとなった▲
 「私は同胞と祖国を防衛した」「自分が自由であることを見届けるまで生きたい」。先日の予備審理に出廷したムラディッチ被告。鋭い眼光ながら弱々しい体で訴える69歳の姿に、一民族主義者の末路を見る思いがした。

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