東電の持っているKDDI株に、孫先生が興味を示していて、さらにトヨタがKDDIと縁を切りたいのでトヨタ持分も孫先生に譲ろうとしているという話が某ゴシップ経済誌に載ってたけど、実際はどうなんですか、なんていう質問を頂いています。
この辺の裏話は全く分かりませんが、もし私が孫先生で、もしトヨタがKDDIを手放したいと思っているのなら、間違いなく手をつけると思います(笑)。
もちろんお値段によりけりなんですけど、東電持分の8%ちょいとトヨタ持分の11%ちょい、合わせれば20%の議決権、それが今なら4000億程度で手に入るとなれば、そりゃぁまずはツバつけときますよ。ソフトバンクグループの純利益が数千億出ていて(もちろんそれは帳簿マジックなんですけど)、そんな「優良グループ」が「ちょっとKDDI支配したいから4000億ほど貸して」と言って断る銀行もまずいません。
だって、もし同じ支配率を実現するためにTOBかけたら、どんだけカネがかかることか。今市場価格が割安になっているのでプレミアの上乗せはかなりアグレッシブでないとならず、対抗TOBも考慮したプレミアをつけると多分同じだけ買い集めるのに6000~8000億はかかりますよ、きっと。それが破格の4000億。そりゃぁよだれも出ます。
競争相手を資本的に取り込んで競争をうやむやにするというのは孫先生は過去に何度も見せてきた手法でもありますし、もし東電保有分に関してソフトバンクに対する交渉のテーブルが用意されていて、なおかつトヨタ持分の放出まで、なんて話があるのなら、やりますよ。
問題は、トヨタが本当にそんなことを考えているのか?と言う点。こればっかりはトヨタの中の人じゃないと分かりませんけど、いろんな人に聞いた感じのイメージでは、少なくとも現場レベルではそんな空気は全くなさそう。お互いにいろんなシステムの開発で出向し合ってたりするみたい。KDDIもほどほどに配当を増やしているし、営業シナジーもそこそこあるみたいだし、特にトヨタの財務が切羽詰っているわけでもないので、トヨタがKDDIを切り捨てるってのは余りなさそうな話に思えます。
と言うか、トヨタがKDDIを売り払うって、何年かおきに必ず経済ゴシップ誌で出るネタなんですよね。日本一のメーカであるトヨタの資産リストを眺めてると必ずぶち当たる「なんだこのでかい額は」ってのが(不振の)KDDI株なもんで、ゴシップ屋さん的にはそれを「負の遺産」と書き立てて煽るのが通例になっている感じです(笑)。
と言うことで、東電保有分8%だけでもとって役員を送り込む(んで端末・サービスをスパイするとか)くらいのことはするかもしれませんし、それだけでも価値はありそうですけど、トヨタ分まで買って筆頭に、と言うのはちょっと可能性の低い確率な気がします。が、あえて、もしそういうことがあったら、と言うのをちょっと考えて見ますと。
まぁ20%ではちょっと心もとないので、ここは一つ、40%ほどとっちゃったと考えて見ましょう(えぇ~)。要するに完全に一体経営ができるレベル。ソフトバンクもKDDIも固定網と携帯電話網を持っていて、これだけでは特にシナジー効果はないかもしれません。むしろ二重ネットワークで二重投資になるだけです。と言って、加入者だけをごっそり奪い取るにしても、それを収容するキャパシティがソフトバンク網にはありません。
一番おいしいのは、KDDIの持つ物理的なリーチの積極活用。中継網と市内網。中継網は日本でも随一の海底網+地上幹線網をもち、市内網は日本1、2位のケーブルテレビ連合を手中にしているという豪華絢爛さ。制度的に動きの取れないNTTグループを追い上げるのにこれほど恵まれた条件はありません。とはいえサラリーマン社長が指揮を執るKDDIではそれらを余り有効活用できていませんが、もし孫先生が独裁的に指揮を執れるなら、一気に市場をひっくり返すような大博打も出来ます。たとえば、既にケーブルの届いている家庭には、ソフトバンクケータイとセットであればほぼ無料に近い形でケーブルサービスの一部を提供する、とか。ソフトバンクのBB回線のネックは、物理線をNTTに借りているため最低原価を下回った「一発逆転」サービスを提供できないこと。同軸ケーブルでは少なくともその枷から開放されます。さらに、同軸更改時に光化することでさらにNTTを追い上げる芽も見えます。もちろん、ソフトバンクグループのバランスシート拡大パワーを使った各CATV連合への支配率強化も忘れてはいけません。
また、「周波数」もおいしいところです。もちろん周波数だけ奪取しても何もなりません。ただKDDIは既に800MHzなどの使い易い周波数をLTEへ向けてマイグレーションしつつあります。一方ソフトバンク傘下のWCPはTD-LTEへ向けて発進。そう、ソフトバンク携帯サービスの負荷分散先として、この「二つのLTE網」は非常に有望です。大収容力のLTEを、800MHz、1.5GHz、2.5GHzと三系統も一時に手に入るのであれば、それだけでもKDDIを手に入れるに十分な理由となるかもしれません。加えてKDDI傘下のUQもTD-LTE化すれば4系統(しかも端末はWCPと同一バンドで対応可能)。800MHz帯のCDMA2000はさっさと停波してLTE化、2GHz帯のCDMA2000は分社化して海外ファンド辺りに二束三文でポイ(ここで無駄なダブりネットワークを処分)。
KDDI LTEサービスは予定通り始める、だけど、本当に魅力的なプランはソフトバンクモバイルサービスとして提供する。ソフトバンクのスマートフォンには、通話用の2GHz-WCDMAとデータ用のLTE(3バンド対応)が載る。LTEのバックボーンにはもちろんKDDIの骨太幹線網を使うことで、ドコモを圧倒するデータ通信スピードを実現する。同時に、各家庭への同軸のリーチを使って、各家庭にWiFiを配し、屋内スループットでもトップを狙う。ソフトバンクになればこのくらいのことは出来そうです。いまいちソフトバンク自身の網が活躍していませんが(苦笑)。
NTT対抗軸として巨大グループ誕生と言う面白いシナリオが見えはするものの、まぁ余り実現性はないなぁ、と言うことであえてでかい妄想をおっぴろげてみましたが、それにしてもKDDIの東電持分、どこ行くんでしょうね。住商が、って話もあるけど、あれもまだウワサレベルだし。案外KDDIが自分で買っちゃったりして(去年も結構な額の自社株買いしてたし)。と言うことでソフトバンクがKDDIを買収する妄想でした。でわ~。
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