画像1:読売新聞2010年11月21日付の原発広告。シンポジウム主催の「地球を考える会」と、共催の「NPO法人 ネットジャーナリスト協会」の資金源に、電力会社の“黒いカネ”が入っていることは巧妙に隠蔽されている
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全国紙は事故の直前まで、原発の広告を盛んに掲載し、原発マネーで潤っていた。その結果、原発の安全性を指摘する記事はタブーとなり、事故を未然に防げなかった。過去1年分の広告を調べたところ、なかでも読売新聞が全面広告だけで10回と、群を抜いて原発をPRしていたことが分かった。しかも、なんと読売は現役の論説委員まで広告に登場して原発を宣伝。さらに、電力業界からのカネで運営していることを隠すため、「フォーラム・エネルギーを考える」「地球を考える会」「ネットジャーナリスト協会」といったダミーのNPO法人らを複雑に絡ませ、一見すると市民運動であるかのように見せかけつつ原発を盛んに喧伝するという悪質な手法を多用していた。もはや読売は、国策推進のためのPR紙というほかない。
【Digest】
◇原発全面広告・新聞ワーストランキング
◇論説委員が原発PR
◇資金の出所不明…ナゾの広告主
◇血税、東電マネーも注入
◇電気事業連合会“巨額寄付”
◇ネットジャーナリスト協会の“ブラック会計”
◇「基準に沿って審査して掲載」読売
◇原発全面広告・新聞ワーストランキング
CM、
雑誌広告に引き続き、新聞の原発広告に疑問を持った筆者は、実態を調べるため、図書館に向かった。調査対象は、全国紙の朝日、読売、毎日、日経、産経新聞の1年間分(2010年4月1日~2011年3月31日)の原子力発電所のことが前面に出ている原発の全面広告とした。「原発全面広告・新聞ワーストランキング」は、以下の順になった。
順位 |
新聞 |
原発全面広告掲載回数 |
第1位 |
読売新聞 |
10回 |
第2位 |
産経新聞 |
5回 |
第3位 |
日経新聞 |
3回 |
第4位 |
毎日新聞 |
2回 |
第5位 |
朝日新聞 |
1回 |
◇論説委員が原発PR
ワースト第1位は掲載回数10回と圧倒的な差で読売新聞となった。読売は掲載数のみならず、その中身も異様だ。(2010年度分の原発全面広告の全てを記事末尾よりPDFダウンロード可)
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画像2:読売新聞論説委員の井川陽次郎氏。読売の原発広告に大々的に2回も出ている |
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まず、驚くべきことに読売は、現役の論説委員が、顔写真アップつきで原発広告に出演していたのである。その論説委員の名は、井川陽次郎氏。井川氏は、政府の原子力安全・保安部会の委員もつとめている。これほどまでに、「編集」と「広告」の境が全くない新聞社も珍しい。
たとえば2010月2月19日付の原発広告「これからの原子力 安全規制を考える」で井川氏は、東京大学大学院の城山英明教授と対談。
そこで井川氏は「原子炉の運転で日本の安全基準は世界的に高い、と思う」と述べ、「世界有数の地震国であるという特殊事情を踏まえても、原子力発電の稼働率がこうも低迷していると、海外から、日本の規制体系には問題があるのではないか、と見られても仕方ありません」などといい、日本の原発が軽微なトラブルでも運転を停止し、再開までに時間がかかることなどを、非科学的、非合理といって問題視する発言をしている。
このように井川氏は原発の安全性に全く疑問を抱いているフシはないが、この広告掲載の約3週間後に東日本大震災は起こっている。
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画像3:2010年12月11日付の読売新聞の原発広告。広告主は「NPO法人 あすかエネルギーフォーラム」と「フォーラム・エネルギーを考える」 |
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◇資金の出所不明…ナゾの広告主
読売の原発広告で驚いたのはそれだけではない。なんと資金の出所がよくわからない団体が主催するシンポジウムの記事広告が複数あったのだ。
たとえば2010年12月11日付に「放射線ってなあに? ~私たちの暮らしの中の放射線~」というシンポジウムの記事広告がある。これは同年10月31日に東京電力の電力館TEPCOホールで開催したシンポ。内容は、東京とニューヨークを1回往復した時に受ける放射線量の方が、原子力発電所周辺の放射線の年間目標値(規制値)よりも多い、といった数値を示し、放射線は怖くないと訴えるシンポジウムとなっている。
広告主は「NPO法人 あすかエネルギーフォーラム」と「フォーラム・エネルギーを考える」とある。一体これらは何なのか。
「NPO法人 あすかエネルギーフォーラム」HPによると、この団体は「消費者の視点でエネルギー問題を考え行動することをモットー」に活動しているという。が肝心のどういう資金で運営しているのかはサッパリわからない。そこで、監督官庁である東京都に聞いてみると、東京都HPに「NPO法人情報提供システム」という検索ページがあり、情報を掲載しているという。
検索してみると、たしかに「あすかエネルギーフォーラム」の財務諸表は載っていた。最新の平成21年度分の収入は、啓発事業やモニタリング事業などの「事業収入」が計4,280万円。ほかには会費・入会金収入が22万3000円などとなっている。だがスポンサーがどこなのか依然として不明だ。そこで同法人の事務局に「資金源はどこですか?」と聞いてみたところ、次のような答えが返ってきた。
「財源は、会費と、エネルギー関連のNPO支援金、そして『フォーラム・エネルギーを考える』からです」。
まず、会費は財務諸表によると微々たるもの。NPO支援金とは、国や自治体の委託事業などを指すので、これはスポンサーには当てはまらない。つまり、もう一つの広告主である「フォーラム・エネルギーを考える」がスポンサーということになる。
「フォーラム・エネルギーを考える」――。実は、読売の昨年度の原発広告計10回のうち、4回はこの団体が広告主となっている。となると、この団体の資金源を調べねばなるまい。
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画像4:東京都港区西新橋にある愛光ビル。「フォーラム・エネルギーを考える」の事務所が同ビル8階にある |
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◇血税、東電マネーも注入
「フォーラム・エネルギーを考える」HPによると、この団体は1990年に首都圏で起きた電力の供給不足をきっかけに、暮らしに欠かせないエネルギーを生活者の立場から考えるため、日本生産性本部内に発足した、という。
「公益財団法人 日本生産性本部」とは、都内渋谷区に本部を置く団体。この団体は「①雇用の増大、②労使の協力・協議、③成果の公正分配からなる運動三原則を掲げ、経営者、労働者、学識経験者の三者構成による中立機関」という(HPより)。会長は牛尾治朗(ウシオ電機取締役会長)、副会長は椎名武雄(日本IBM名誉相談役)、古賀伸明(連合会長)などが就いている。
この組織内に、「フォーラム・エネルギーを考える」がある。メンバー数は169名(2011年4月1日現在)。松田英三(読売新聞論説委員)、東嶋和子(元読売新聞記者、科学ジャーナリスト)、舛添要一(参院議員)、山谷えり子(同)、山名元(京大教授)、木場弘子(キャスター)、露木茂(東京国際大学教授、フリーアナウンサー)、進藤晶子(元TBSアナウンサー)、大山のぶ代(声優)、今井通子(登山家、医学博士)、ダニエル・カール(タレント)、ケント・ギルバート(同)、安藤和津(同)、出光ケイ(スポーツジャーナリスト)、小松左京(SF作家)、小泉武夫(東京農業大学名誉教授)、堺屋太一(評論家)といった面々が名を連ねている。
活動履歴をみると(よほど後ろめたい活動とみえ、6月5日現在、このページは削除されてしまった)、全国で原発PRのシンポを開催しており、たとえば先月の記事で雑誌原発広告のワースト1位で登場した木場弘子氏は、広告塔として引っ張りだこで全国のシンポに出ていた。
だがこのHPには、肝心の資金の出所が記載されていない。筆者は、電話したうえで、事務局を訪れ、事務局長に話を聞いた.....この続きの文章、および全ての拡大画像は、会員のみに提供されております。
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画像5:赤線囲み箇所が「フォーラム・エネルギーを考える」を含むエネルギー関連の財務諸表。電気事業連合会からの巨額の寄付金の実態は、会計事務所の指示により記載していないという |
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画像6:上から順に「NPO法人 ネットジャーナリスト協会」の役員リスト、寄付金収入、事務所写真、事務所のある日本プレスセンタービル |
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