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米原子力規制委:耐震不安「無視」…福島と同型のマーク1

日米のマーク1
日米のマーク1

 東日本大震災で被災した東京電力福島第1原発の1~5号機と同型の原子炉格納容器「マーク1」の安全性について、米原子力規制委員会(NRC)が80年に再評価した際、原子炉格納容器の圧力上昇を抑える圧力抑制プールの耐震強度が十分でない可能性を予測しながら、米国内の電力会社の意見を参考に「無視できる」と結論づけていたことが、毎日新聞が入手したNRCの「安全性評価報告書」で分かった。日本の原子力安全委員会もこの報告書と同様の国内指針を作成していた。しかし、米国のマーク1は地震の少ない東側に集中しており、日本の安全基準のあり方を根本的に検証する必要がありそうだ。【吉富裕倫】

 ◇米原子力規制委、80年に結論

 米国の原発の安全性を監督するNRCの内部文書から、マーク1の問題点が明らかになったのは初めて。開発した米ゼネラル・エレクトリック(GE)社などによると、マーク1は世界5カ国・地域に38基あり、米国24▽日本10(廃炉決定の中部電力浜岡原発1、2号機を含む)▽台湾2▽スイス1▽スペイン1。

 マーク1の世界的販売開始後の70年代、圧力抑制プールの設計が十分な強度を想定していなかったことがGE社の技術者の内部告発などから発覚した。

 報告書によると、同プールは、格納容器内に高温高圧の水蒸気が充満した時に冷却、圧力を下げて爆発や炉心溶融などを防ぐ役割であることから、危険情報を知ったNRCは安全性の異例の再評価を決定。再評価チームは、地震で圧力抑制プールの内壁への振動圧力や水面の揺れによる水蒸気管の露出などから、水蒸気が冷やされることなく過度の圧力がかかる可能性を指摘した。

 しかし、プール内壁に対する最大圧力を「最高95%の確率で0.8PSI(1平方センチあたり56グラム)以下」とする推計値をもとに電力会社側は「地震による冷却水の揺動を無視するよう」提案。NRC側も最終的に「無視できる」とした。

 この報告書に基づく形で、日本の原子力安全委員会も、87年決定の「BWR(沸騰水型軽水炉)・MARK1(マーク1)型格納容器圧力抑制系に加わる動荷重の評価指針」で圧力抑制プール内の地震揺動を検討項目に含めなかった。

 ◇日本に10基 技術者「調査必要」

 報告書について、福島第1の建設を請け負った東芝でマーク1の設計を担当した渡辺敦雄・沼津工業高等専門学校特任教授(環境工学)は、「原発の技術は確率論。冷却材喪失と地震、余震の同時発生は無視できると考えられていた」と語り、「(日本の指針は)米国の考え方を輸入したもの。私もNRCと同じ意見だった」と明かした。

 一連の事故原因と報告書指摘の問題点との直接の関係は明らかになっていないが、渡辺氏は「地震で圧力抑制プールの水蒸気管が水面から露出して格納容器全体の圧力を高めた可能性がある」と指摘、事故との因果関係を含めた強度調査の必要性を訴えた。しかし、東電広報部はマーク1の安全性について「(原子力安全委員会の)評価指針に従った」と対応に問題なかったとの見解を示した。NRCのスコット・バーネル広報担当官は、「報告書は米国の原発に対するもので、日本の原発に対するものではなく、米側が見直す必要はない」と述べた。

 【ことば】マーク1

 米ゼネラル・エレクトリック社が40年以上前に開発した初期型。電球のバルブのような形状で、沸騰水型軽水炉を収める上部と下部にあるドーナツ形状の圧力抑制プールが特徴。80年代以降、上部と下部を一体にして容積を増やすなどしたマーク1改良型、マーク2へと移行した。

毎日新聞 2011年6月9日 2時31分

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