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【社会】

政府報告書 「津波15メートル」高さ誤記載 4〜5割増 浸水高と混同

2011年6月9日 07時04分

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 福島第一原発事故の直接的な原因とされる津波について、政府が国際原子力機関(IAEA)に提出した報告書の中で、「津波の高さ」と「浸水高(だか)」を混同して表記していることが分かった。浸水高の方が数字が大きくなるケースが多く、専門家からは津波の過大評価につながるとの批判も出ている。

 政府は、四十ページの概要版では、「津波は一四〜一五メートルに達し、(中略)非常用ディーゼル発電機及び配電盤が冠水して機能を停止」と、想定外の津波による影響を強調している。

 IAEA調査団にも同様の説明をしたためか、調査団の報告書素案でも同様の数字が使われている。

 一方、七百五十ページに及ぶ正式版では、津波の高さは「一〇メートル以上」とした上で、海抜十メートルの地点に立つタービン建屋などが、四〜五メートルの高さまで浸水した跡があるため、「浸水高は一四〜一五メートル」と正確に記載している。

 同じ政府が出した報告書なのに、津波の高さが四〜五割も食い違う結果になっている。概要版はより多くの人が読むだけに、誤解を与える範囲も広い。

 経済産業省原子力安全・保安院も従来の発表資料で「津波の高さは一四〜一五メートル」と明記していたが、耐震安全審査室の担当者は「誤って取り違えた」と釈明している。

 東北大の今村文彦教授(津波工学)は「津波の想定を見直す際にも誤った結果を導く可能性がある」と指摘。

 東日本大震災では、東京電力が耐震設計で想定した揺れを一部で上回っており、福島第一でも建屋やタンク、配管の一部に地震によるとみられる損傷が報告されている。

 名古屋大の鈴木康弘教授(変動地形学)も「津波の規模ばかりに目をとらわれていると、地震が及ぼした影響が軽んじられる恐れもある」としている。

<津波のさまざまな値> 図の通り、津波の規模にはさまざまな値があり、意味も違う。「津波の高さ」は通常の海面から津波の頂部までの高さで、「浸水高」は海面から建物などが水につかった地点までの高さを指す。このほか、津波が陸地を駆け上った地点までの高さを示す「遡上高(そじょうだか)」もある。

(東京新聞)

 

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