大王製紙は29日付で創業家3代目の井川意高社長(46)が会長に就き、佐光正義副社長(55)が社長になる。4年ぶりに非創業家の社長に戻るが、井川氏は会長就任後も主力の家庭紙や海外事業を担当し「二人三脚」で業績回復をめざす。権力が分立する異例の新体制について両者に聞いた。
――創業家出身社長がわずか4年で交代する。
井川氏「社長就任時に任期は2期4年、長くても3期6年と公言してきた。就任当時は一部で『長期政権誕生か』などとささやかれたが創業家出身者が長く社長に就くのは社員の士気にも影響する。前言通りに退いたというのが理由の8割だ」
「残りの理由は業績悪化だ。任期中は減収減益で収益力が落ちた。責任を感じている。特に家庭紙は増益を見込んでいたのに、経常利益ベースで目標の半分(35億円)にとどまった」
――会長ながら主力事業を管掌する。なぜ社長に一元化しないのか。
井川氏「家庭紙と海外は重要課題で、社長のままだと十分目配りできない恐れがある。そこで手分けしようと考えた。経営トップは当然社長だ。取締役会議長も新社長になる佐光氏が務める」
佐光氏「国内の紙・板紙事業を担当する。営業はもちろん、メーカーとして生産(の効率化)も重要な任務の1つだ。連結売上高を5000億円(11年3月期は4101億円)に引き上げる目標には、家庭紙・海外と国内の両輪が欠かせない」
――業界トップの家庭紙をどう立て直すのか。
井川氏「販売量を優先するあまり、値下げに頼ってしまったのが問題。製品の特長を訴えられず、ブランドも毀損した。現場のトップが営業や代理店をコントロールできず、製造・販売のコストもかさんだ。既に現場には安易に値下げするなと指示しており、製品そのもので差別化できるよう開発も見直していく」
――海外事業は。
井川氏「東南アジア諸国連合(ASEAN)を強化する。2012年からタイで紙おむつの工場が立ち上がる。『メードインジャパン』ではなくなり、市場での立ち位置も変わるため、市場調査に力を入れる。現地企業を事実上買収したベトナムや、インドネシアも重点的に開拓する」
「ただ中国市場は難しい。このほど現地合弁企業の出資比率を下げたのも、相手と意見が食い違ったためだ。ASEANよりも優先順位は低い」
――需要がしぼむ一方の国内も対策が必要だ。
佐光氏「需要は伸びないといっても依然2800万トンの市場がある。代理店を使う販売手法は変えないが、代理店の情報をうのみにせず、当社の営業担当者が積極的に最終顧客まで足を運ばないといけない。提案型の営業を仕掛けて、価格以外の要素で勝負する」
意高氏は創業者の直系で、同族出身の役員の中でも存在感は圧倒的。「満を持しての社長登板」となった4年前は記者会見を開いた。今回は会見は無し。“静かな交代劇”は逆に臆測も呼んだ。
インタビューには両氏が一緒に応じたが、発言時間の9割を井川氏が占めた。看板事業の「エリエール」ブランドを担当し、業界活動もする以上、井川氏の力が社内で弱まることはないだろう。
だが、会長と社長が事業を分け合う二重構造は「意思決定が曖昧」との印象を投資家に与えかねない。二人三脚は本当に持続可能なのか。少なくとも最終決定権者が誰なのか、早く明確にした方がいい。
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