[97.02.25]

ひかり味噌、飯島グリーン工場で大寒仕込実施

信州味噌の中堅メーカー、ひかり味噌(株)(長野県下諏訪町、0266・27・8848)は、このほど飯島グリーン工場(上伊那郡飯島町)で恒例の大寒仕込みを実施。“心を込めて”初回分(45t)のコメ味噌を仕込み、同社の今年度の味噌造りが事実上スタートした。

 南アルプス山麓の同工場周辺は、前日からの雪で白一色と、大寒仕込みにふさわしい舞台装置。雪の舞う早朝から、社長以下全員が集合し、昨秋新設なった製麹棟内にしつらえた祭壇に、玉串をささげて味噌の出来ばえと作業の安全を祈願。

 この日に合わせて製麹した糀もでき、大豆の蒸煮も完了し、あとは仕込みをまつばかりとなった。これに先立って、蒸煮した大豆をマスクメロン大に丸める恒例の味噌玉づくりがスタート。冷気にふれて一段と湯気をあげる大豆をとりわけ、全員心を込めて約80個の味噌玉をまたたく間につくりあげた。味噌玉は、放置した自然の菌をとり込んだあと、その後の仕込みで種味噌として利用する。

 初回の仕込みは、宮城県産ササニシキと道産大粒白目一等大豆を各15t使った10割麹。赤穂の自然塩で仕込み、塩分は12%。製品で45tになり、これを5tタンクに入れて天然蔵で貯蔵。4月中旬までに6〜7回仕込み、年間で約300tの長期熟成の天然醸造味噌になる。初回に仕込んだものが出回るのは歳暮の時期で、高級品の「禅」や「名匠」さらに7年熟成の「極」(500g小売3500円)などとして、市場に流れていく。

 天然醸造味噌は、同社出荷量の約1割を占め、年々増加する傾向にある。「伝承されてきた味噌造りの原点を学ぼう」(林善八郎社長)と始めた大寒仕込みも、今年で13回目を迎え、全社一丸となった取組みが、回を重ねて着実に仕込み技術や品質向上につながってきたようだ。

 また、同工場も稼働19年目を迎えて設備更新期に入り、コンピュータの連続仕込みを導入するなど、昨年5月からリニューアルに着手。その一環で「業界最大」の自動円盤製麹装置(直径16m、1回でコメ30tを処理)と保冷ストッカーを設置。両設備とも自動洗滌機能をそなえた最新鋭で昨秋から稼働している。
 旧製麹機はいずれ解体し何らかの「新設備導入を検討中」。

 なお、今回初めて地元町民に見学と格安販売を案内し、地域に溶け込む企業を目指している。

 また、前日には全員参加の研修会を開催。林社長は「20世紀は戦いの世紀で、人類がわが物顔で支配してきた。21世紀は地球環境再生を目指し、企業経営に取り組みたい。そのため、まず謙虚な心を養いお客様に喜ばれる味噌造りを目指したい」と提言。そのためにも「もったいない。恐れ多いということを肝に命じ、『足るを知る』心が大切」と『もったいない』を今年のキーワードとして提起した。このあと、環境微生物学博士の高嶋康豪氏が「21世紀を生きる東洋の心」と題して記念講演。東洋的な価値観が21世紀のポイントと指摘した。

日本食糧新聞社