欧州合同原子核研究所(CERN、ジュネーブ)は5日、宇宙や自然界にほとんど存在せず、物質と出合うと消滅する「反物質」の一種を、実験装置の中に16分余りとなる1000秒間閉じ込めることに成功したと発表した。物質と反物質は宇宙誕生の大爆発ビッグバン直後は同じ量存在していたと仮定されている。長時間の反物質閉じ込めによって、より精度の高い観察、実験が可能となり、なぜ宇宙が物質だけでできているのかなど、宇宙の進化の謎解明に道が開かれたといえる。
日本の理化学研究所なども参加する国際実験チームは次の段階として、反物質が物質と同じ色なのかどうかを今年中に調べたいとしている。
国際チームが長時間の閉じ込めに成功したのは、水素原子を構成する陽子と電子それぞれの反粒子でできた「反水素原子」で、昨年11月には約0.2秒の閉じ込めに成功したと発表していた。
今回は、反陽子と陽電子を実験装置の中で混合する際、運動エネルギーを極力近づけるようにするなど技術が向上した結果、飛躍的に記録が伸びた。成果は5日付の英科学誌ネイチャーフィジックス電子版に掲載された。(ジュネーブ共同)
毎日新聞 2011年6月6日 2時00分