Record 03 : 『世界音楽全集』 (2004.1.12)
 ステレオがあっても“レコード”がなければ宝の持ち腐れです。しかし当時のレコードは高価で、そう簡単に次々に買えるようなものではありませんでした。(当時は、一般的に、「レコードは高価なもの」でした。だから“名曲喫茶”などというのがあり、レコード演奏がウリの喫茶店などというものが存在し得たのです)

 丁度この頃、“安価なレコード”として登場したのが《ソノシート》でした。朝日ソノラマ、勁文社、いろいろな会社から続々と売り出されました。

 薄いビニール製だったので、音は良くなかったのですが、とにかく安価で音楽が聞くことができたので大ブームとなりました。

 我が家にステレオが来た1960年、その冬(11月)からほぼ毎月1冊の割合で筑摩書房から『世界音楽全集』というソノシート本が発行されました。曲・演奏者の紹介、解説、エッセイとソノ・シートが4枚ほど入っている30頁ぐらいの構成の本でした。

 この頃『少年少女世界文学全集』とか“全集モノ”を、子供の教育のためと思ったのでしょう、母親が買ってくれた時期でもありました。

 ステレオでは“ラジオ”を聞くのが主になっていましたが、この『世界音楽全集』はよく聞きました。しかし、もう現物は手もとになく、その後の引越し続きで無くしてしまいました。

 今回、この文章を書くにあたって調べたところ、いるんですねぇ、これを持っていた人や探している人。第一巻・第二巻は“40万部”も売れたとありました。スゴイ数字ですよ、当時としては。

 学校というところは、本屋さんが常に出入りしていて、母親は多分パンフレットか何かを見せられたのではないかと思います。ですから私は月刊誌を本屋さんで買ったことがないんです。母親に毎月頼んでいましたから。

 第一回配本の一曲目が「G線上のアリア」だったことはシッカリと覚えていました。(このソノシートのこともうろ覚えだった80過ぎの母親も、このことだけは覚えていました)

 とにかく私がよく聞いたのは『吹奏楽』で、これを聞きながら指揮棒を振るマネをしていました。以下の曲目が入っていたようです。

 「旧友」「士官候補生」「美中の美」「勝利の父」「軍鑑行進曲」「双頭の鷲の旗の下に」「君が代行進曲」「ボゲイ大佐」

 これで“スーザ”という名前を知りましたし、「双頭の鷲」が好きだったのもスペクターの前哨戦だったのかと・・・。(笑)

 今回、「なぜ“マーチ”が一番のお気に入りだったのか」を考えて見たのですが、簡単に答えが出ました。《野球》です!ラジオの野球中継、ニュース映画のテーマ・ソングは必ず“マーチ”でした。まだまだ私の中では“野球”が中心点に居座っていたという証拠ですね。ラジオ中継を聞きながら“スコア・ブック”をつけてましたからね。(一打席ごとに打率を計算したりしていました。ひょっとして“数字好き”?(笑))

 もちろんマーチに限らず、この『世界音楽全集』は、他にかけるレコードがないということもあって、よく聞きました。一ヶ月置きのリリースですから、一冊を集中的に聞けるんですね。まだ小学六年生ですから“ジャンル”という意識が全くありません。「鳴っている音を聞く」というような感覚で、かなり聞き込みましたから体に染み込んだ、というカンジです。いわゆる“クラシックの有名な曲”をこの時期に覚えた、ということになります。(東北生まれだから“民謡”をやることになった、などという、よくいわれる因果論からいうなら、私はクラッシックに進まなければならなかった、となりますが・・・。(笑))

 《全40巻》だったようですが、全巻を購入したかは不明です。

 筑摩書房ではこのクラシック編の大売れに気をよくしたのか、1961年4月から『世界ポピュラー音楽全集』(全10巻)を発刊しました。確かこっちは買ってもらえなかったような記憶があるのですが、ジャケットは見覚えがあります。親戚か友人が持っていたのを見たのではないかと思います。こちらも同時に買ってもらっていれば“ポップス”に興味を持つのが少し早まったかもしれません。



 私の本格的なポップス時代の前に、クラシック時代!(そんなエエもんかぁ!)があった、ということですね。

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