益田圏域の分娩(ぶんべん)を一手に担っていた益田赤十字病院(益田市乙吉)が産科医不足から分娩の受け入れ制限を行う。直接的には、麻酔科医が減ったことを理由に鳥取大医学部が医師を引き揚げたためだ▲だが、その原因は、医療費抑制のため政府が行った医学部の定員削減や、04年度に義務化された臨床研修で新人医師が研修先を選べるようになり、医局を下支えする研修医が地方大学で激減したことなどだ。医療過誤やそれによる訴訟のリスク、宿直などきつい勤務実態、少子高齢化による需要の変化などのため、産科や小児科などには学生が集まりにくいともいう▲市民の中に「病院の経営陣の責任じゃないのか」との声があると聞いたが、そうではない。病院側や、協力する島根大医学部は「益田での分娩の灯を消してはならない」と懸命だ。医師の養成のあり方を含めた国の医療制度そのものの問題なのだが、首相がたかだか1年で次から次へと替わるようでは重要な改革の実行はおぼつかない。【江田将宏】
毎日新聞 2011年6月8日 地方版