2011/06/08(水)
1 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:32:50.01 ID:tS9k0vWW0
☆桜田家・玄関
蒼星石「お邪魔しま〜す」
翠星石「お〜、よく来たです蒼星石! ささ、狭苦しい家ですが遠慮なく上がってくれでぇす」
ジュン「居候の分際で何をぬかす」
翠星石「チビ人間こそ扶養家族の分際で何ぬかすですぅ」
ジュン「このやろ……!」
翠星石「ひゃー! チビ人間のチビチビな堪忍袋がまたすぐ破裂です!」
ジュン「くぬ……」
蒼星石「ははは、相変わらずだね二人とも。じゃ、お言葉に甘えて……と」スポッ
翠星石「あれ? 蒼星石、今脱いだそれって、長靴ですか?」
ジュン「しかも長靴の下には、いつもの普通の靴? なんで二重に靴を履いているんだ」
蒼星石「マスターが買ってくれたんだ。そろそろ雨が多くなる季節だし。
最近は僕も外を頻繁に出歩くから、お父様から頂いた靴を保護することにもなる」
☆桜田家・玄関
蒼星石「お邪魔しま〜す」
翠星石「お〜、よく来たです蒼星石! ささ、狭苦しい家ですが遠慮なく上がってくれでぇす」
ジュン「居候の分際で何をぬかす」
翠星石「チビ人間こそ扶養家族の分際で何ぬかすですぅ」
ジュン「このやろ……!」
翠星石「ひゃー! チビ人間のチビチビな堪忍袋がまたすぐ破裂です!」
ジュン「くぬ……」
蒼星石「ははは、相変わらずだね二人とも。じゃ、お言葉に甘えて……と」スポッ
翠星石「あれ? 蒼星石、今脱いだそれって、長靴ですか?」
ジュン「しかも長靴の下には、いつもの普通の靴? なんで二重に靴を履いているんだ」
蒼星石「マスターが買ってくれたんだ。そろそろ雨が多くなる季節だし。
最近は僕も外を頻繁に出歩くから、お父様から頂いた靴を保護することにもなる」
2 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:34:41.54 ID:tS9k0vWW0
ジュン「へぇ〜。そう言えば以前、犬のウンコ踏んづけて
パニックになってた時もあったっけ? 蒼星石は」
蒼星石「……まだ覚えてたんだジュン君」
翠星石「うーむ、おじじは心配りの達人ですね。
ローゼンメイデンたるもの、お父様から頂いた衣服も大切な体の一部ですから
靴を履き替えるだなんて真似は到底できないです」
蒼星石「うん。でも、この靴の上から長靴を履く方法であれば、その問題は解決できる」
ジュン「考えたな結菱さんも。今度から僕の家でもやってみるか。
正直、ローゼンメイデンってのは外でも内でも靴を履きっぱなしだから
家の中が地味に汚れて困ってたんだ。僕には耐えられない」
翠星石「チビ人間が潔癖過ぎるだけです。
そもそも室内では靴を脱ぐという行為自体が意味不明でぇ〜す」
ジュン「ちっ、この西洋人形めが」
蒼星石「でも、それは家に上がる前に靴を拭けばいいことじゃないの?」
ジュン「真紅と雛苺はそうしてくれるんだが
めんどくさがって靴拭きをサボるやつが約一名いる」
翠星石「♪すひ〜 ♪すひひ〜」
蒼星石「口笛吹けてないよ翠星石」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:39:16.31 ID:t9GD8kzQ0
>翠星石「♪すひ〜 ♪すひひ〜」
かわゆすなぁ
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:36:46.42 ID:tS9k0vWW0
☆桜田ジュンの部屋
真紅「なるほど、蒼星石に長靴を……ね。結菱一葉ならではの心遣いだわ」
蒼星石「うん。僕もそれ以来なんとなく外を出歩くのが楽しくてね」
雛苺「あとでヒナも履いてみたいのよ!」
蒼星石「ああ、勿論いいとも」
翠星石「真紅に新しいブローチをプレゼントしておきながら
ものの見事に握り潰されたチビ人間にも見習ってほしいところですね」
ジュン「うるさい」
真紅「暗に、お父様から頂いたこの古いブローチを捨てろと言ってるようなもの。
ジュンの頭蓋骨ではなくブローチの方を握り潰したのが最大限の優しさよ」
ジュン「ありがとうございました」
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:37:33.89 ID:tS9k0vWW0
蒼星石「真紅の方も相変わらず壮絶だね」
真紅「そうかしら?」
雛苺(でもね、でもね蒼星石!)ひそひそ
蒼星石「ん?」
雛苺(そのあと真紅は、ジュンに内緒で破片を全部集めて
時間の螺子を巻いて、ブローチを直したのよ。
そして真紅が一番お気に入りのくんくん人形に、こっそり付けてるの!)
蒼星石(そうなんだ)
雛苺(これはジュンには絶対に絶対の秘密なの! もし、ばらしたら真紅に殴られるのよ)
蒼星石(やれやれ。そういうところも相変わらず……か、真紅は)
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:38:16.98 ID:tS9k0vWW0
ジュン「二人だけで何をひそひそ話してるんだ?」
雛苺「うゅ!?」
蒼星石「あ、いや、その……」
雛苺「えーと、えーっとね!」
蒼星石「よ、よく釣りの時とかに長靴しかひっかからないことがあるけど
あれの中身(人間の足)が、ちゃんとあった場合は
釣果をボウズとすべきか否かについて議論を……」
雛苺「そ、そう! そうなのよ!」
ジュン「そんな恐ろしい内容だったの!?
くすくす笑ってるようにも見えてたんだけど!?」
翠星石「蒼星石はブラックな内容でも、冗談交じりに話す時があるですから」
真紅「右腕が取れたなら左腕も取ればいいじゃない、とか」
蒼星石「あれは冗談じゃなくて、嫌味だったんだけどね」
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:39:18.71 ID:tS9k0vWW0
♪ピロリ〜 ♪ピロリロリ〜〜
真紅「あら何? この音楽は」
蒼星石「あ、ごめん。僕の携帯だ。マスターから通話? 珍しいな……」ピッ
ジュン「それも結菱さんに貰ったやつだったよな」
真紅「確か、マウンテンバイクやクレジットカードまで持ってたわよね蒼星石は」
翠星石「ちょっとしたスネちゃま状態です」
蒼星石「はい、もしもし僕です。どうかしたんですか、マスター?」
雛苺「蒼星石ばっかり、おじいちゃんにいろいろ買ってもらってずるいの〜!
ジュ〜ン! ヒナにもいろいろ買って! 買ってぇ〜!!」
ジュン「この間、パソコンでお絵描きするからってペンタブ買ってあげただろ」
雛苺「パソコンは飽きちゃったの! やっぱりクレヨンと紙の手ざわりが無いと
ヒナのクリエイターソウルは刺激されないのよ!!
だから今度は64色ぐらいあるクレヨンセットがいいの〜」
ジュン「このやろ……!」
翠星石「二人とも蒼星石が通話中なんですから、少しは静かにするです」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:40:09.34 ID:tS9k0vWW0
蒼星石「……ッ!? もしもし!? どうしたんです!?
マスター!? マスター……ッ!?」
ジュン「!?」
真紅「どうかしたの!? 蒼星石?」
蒼星石「分からない! マスターが何も話さずに、いきなり電話が切れた……」
翠星石「おじじの身に何か!?」
ジュン「ひょっとして心臓発作や脳梗塞じゃ……!?」
蒼星石「そ、そんな……!?」
真紅「でも、それだったら蒼星石に電話じゃなくて、119するんじゃないの?」
蒼星石「み、みんな! 来てすぐで悪いけど、僕は家に帰らせてもらう!」
翠星石「なに言ってるですか蒼星石!? おじじの一大事かもしれんのです!」
真紅「ええ、私達も一緒に行くのだわ!」
ジュン「ぼ、僕も行くぞ!」
雛苺「ヒナも!!」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:41:19.17 ID:tS9k0vWW0
☆数十分後・薔薇屋敷・結菱一葉の寝室
蒼星石「マスター!? しっかりして下さい!? マスター!!」
一葉「……」
蒼星石「駄目だ! 全く意識が戻らない!!」
真紅「心が完全に抜けているわね」
翠星石「部屋にはおじじが誰かに襲われて抵抗したような跡があるです」
雛苺「病気とかで倒れたんじゃなさそうなのよ!」
ジュン「だとしたら、いったい誰が結菱さんにこんな事を……!?」
翠星石「しかもこの家の全ての扉や窓には鍵がかかっていたです」
真紅「玄関の扉も蒼星石が開けるまではきっちり閉まっていた」
雛苺「密室殺人なの!」
翠星石「おじじはまだ死んでねーですよ、チビチビ」
一葉「……」
蒼星石「こんなことが出来るのは……!」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:43:01.42 ID:tS9k0vWW0
☆数時間後・薔薇屋敷・座敷牢
雪華綺晶「なるほど。それで私が犯人だとお疑いなのですね。詮無いことを」ぶら〜ん
真紅「逆さ吊りにされても、おすまし顔は相変わらずね白薔薇」ゆっさゆっさ
雪華綺晶「揺らさないでくださいませ、紅薔薇のお姉様」ぶらーんぶらーん
蒼星石「召喚に応じて素直に出頭してきた潔さは認めよう」
雛苺「蒼星石のおじいちゃんも素直に返すのよ!!」
雪華綺晶「やれやれですわ。随分と嫌われましたね、私も」
翠星石「前科の枚挙に暇がないですからね、お前は」
ジュン「アメリカだったらGPS埋め込まれてFBIのデータベースに登録されてるレベル」
雪華綺晶「エーテルから解放されたアストラルである、この私にGPSなど……
なんとも不条理です、不分別ですわ」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:45:32.68 ID:tS9k0vWW0
蒼星石「思い込むというのは何よりも恐ろしいことだ」
雪華綺晶「……その言葉、そっくりそのままお返しいたします蒼星石」
蒼星石「しかも自分が優れていると思い込んでいる時はさらにタチが悪い」
雪華綺晶「……」
蒼星石「自分がアストラル解放体であることに、君が誇りを持つのは自由だし、当然だ。
しかし、そのことで自信を持ち過ぎることは好ましくない」
真紅「その通りなのだわ。素直に私達の目の前に現れたのも
逆さ吊りをあっさり甘受したのも、アストラルである自分ならすぐに逃げられると
思ってのことでしょうけど……」
雪華綺晶「とんでもありません。そんな風には露ほどにも……」
翠星石「いつまでも、お前にいいように逃げられ続けている翠星石達ではないのです」
雪華綺晶「どういうことです?」
雛苺「ズブリ! その雪華綺晶をしばってるナワは特別製なのよ!」
ジュン「ズブリじゃなくてスバリな」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:46:47.54 ID:t9GD8kzQ0
いやらしい
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:48:01.10 ID:tS9k0vWW0
雪華綺晶「なにをのどかな。そこまで言うのなら御覧に入れてみせますわ。
この程度の縄、私がアストラルシフトすれば簡単に抜け出せ……!?」
真紅「どう? 如何に白薔薇とはいえども抜け出せないでしょう」ゆっさゆっさ
雪華綺晶「ば、馬鹿な……? いったいどんな仕掛けを?」ぶらーんぶらーん
蒼星石「白衣観音経で編んだ縄だ。どんな悪霊であろうと、その動きを封じる」
雪華綺晶「わ、私は悪霊ではありませんわ」
翠星石「でも動けなくなってるですよねぇ、白薔薇?」
雪華綺晶「……」ぶらら〜ん
真紅「妖狐玉藻レベルでもないと、その戒めを解くのは不可能」
雪華綺晶「……」
蒼星石「白薔薇風に言うのなら、この縄は
カブトムシの作ったシュラウド……てところかな」
雪華綺晶「インテリぶった比喩は貴女の趣味でしょうに、蒼薔薇のお姉様」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:49:35.69 ID:tS9k0vWW0
翠星石「さてさて、まだまだ余裕ぶっているようですが、それも今だけです」
雛苺「お経のナワは序の口なのよ!」
真紅「当然、これからあなたを拷問にかけるわけだけど」
蒼星石「覚悟はできてるかな、雪華綺晶」
翠星石「おじじを返すなら今のうちですよ!」
雪華綺晶「……」
真紅「どうあっても、しらばっくれるつもりね。よし、ジュン! 始めて頂戴」
ジュン「それでは、コホン! 南無大慈大悲救苦救難……」
雪華綺晶「ぎゃあああ!」ブシュウウウウウ
雛苺「す、すごい効き目なの!! 雪華綺晶から変な煙が出てるのよ!」
翠星石「『ぎゃあああ』なんて白薔薇が叫ぶのも初めて聞いたですぅ」
真紅「なんちゃって幽霊の雪華綺晶には、さぞ辛いでしょうね」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:50:29.79 ID:tS9k0vWW0
ジュン「広大霊感観世音菩薩 摩訶薩南無仏 南無法……」
雪華綺晶「ひぃいいい!」ブスブスブスブス
蒼星石「それにしても想像以上の効果だ」
翠星石「翠星石もびっくりですぅ。
チビ人間のお経なんて適当以外の何物でもないはずですのに……」
ジュン「ぬ〜べ〜を愛読していた僕を舐めるな。アニメ版の方のお経だって言えるんだぞ」
真紅「はいはい」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:50:32.88 ID:IsGNZMNi0
お経効くのかwwwwwwww
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:51:33.73 ID:tS9k0vWW0
雪華綺晶「う……くく……」ぷしゅ〜
真紅「大分お経攻撃がこたえたようね白薔薇」
雛苺「いい加減におじいちゃんを返すのよ!」
雪華綺晶「ですから……本当に私はやってません……」
蒼星石「後ろの壁のシミの数まで数えられるほど体が透けてきてるというのに
まだ白を切るつもりか雪華綺晶」
ジュン「それじゃ読経を再開するぞ?」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:53:14.92 ID:tS9k0vWW0
ホーリエ「……ッ!」ばひゅーん
レンピカ「……ッ!」ばひゅーん
スィドリーム「……ッ!」ぴゅ〜
べリーベル「……!」へろろ〜ん
雪華綺晶「?」
ジュン「!? なんだ人工精霊達が!? どっから出てきた?」
翠星石「しかも、白薔薇を守ろうとしているです!?」
蒼星石「レンピカ!? 人工精霊の君達には、僕達が雪華綺晶を尋問している間に
nのフィールドでのマスターの捜索を頼んだはず……!」
レンピカ「……ッ! ……ッ!!」
真紅「結菱一葉を見つけたですって!? どこで!?」
ホーリエ「……ッ!!」
真紅「記憶の海!? しかも幽霊船に乗ってたぁ!?」
翠星石「ゆ、幽霊船ってどういうことですか!?
記憶の海にそんなのが出るなんて聞いたことないですよ!!」
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:55:00.17 ID:tS9k0vWW0
雪華綺晶「それはメメントリオンですわね」ぶらーん
雛苺「めめん?」
真紅「とりおん?」
雪華綺晶「……知りたいのなら、この縄をほどいてください」ぶらーん
蒼星石「わ、分かった! 今、縄を切る」チョッキン
雪華綺晶「あと、冤罪だったのですから、謝罪もしてください」すたっ
翠星石「メンゴメンゴですぅ」
雪華綺晶「いまひとつ心がこもっていませんが、ま、いいでしょう」
ジュン「いいんだ。アメリカだったら人生2〜3回詰むぐらいの
賠償金を求めての訴訟を起こしてもおかしくないくらいだぞ」
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:55:40.74 ID:tS9k0vWW0
翠星石「それより、そのエヴァンゲリオンってのは何です?」
雪華綺晶「メメントリオンですわ、翠のお姉様」
蒼星石「レンピカ達がマスターを見つけた幽霊船が、それなのか?」
雪華綺晶「はい。メメントリオン(mementolion)つまり『記憶食い』の名が示す通り
記憶の海に現れては、人々の記憶や心、精神を食い荒らす
nのフィールドのモンスターです」
雛苺「そんな怖いのがいるなんて知らないのよ!?」
真紅「nのフィールドは広大だわ」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:58:07.98 ID:tS9k0vWW0
雪華綺晶「私もメメントリオンの全てを知っているわけではないのですが
その怪物はヤドカリのような生態で
先ずは自分の住処と鎧を兼ねる船の記憶を奪います」
ジュン「船の記憶? なんだそりゃ」
雪華綺晶「記憶が宿るのは人ばかりではありません。
機械や建造物にだって心や精神は存在します」
ジュン「本当かよ? にわかには信じられない……が
お前達ローゼンメイデンが存在するんだ。さもありなんってところか」
雪華綺晶「ただし、メメントリオンは非常に弱いモンスターで
船であろうと人であろうと、死んだ存在しか
その心を食べることが出来ないとされています」
雛苺「うゅ? どういうこと?」
真紅「現実世界の船を沈めたり、人を殺したりするような力までは無いということよ」
翠星石「あくまで、沈没船や死人の心を自分の糧としているということですね」
蒼星石「でも、そうだとしたら今回の僕のマスターの事例は……!?」
雪華綺晶「はい。若干、今までのメメントリオンとは異なる行動と言えますわ。
しかし何事にも例外や不測の事態というのは起こるもの。
それに先ほども言った通り、私の知っていることがメメントリオンの全てでもない」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:00:07.92 ID:tS9k0vWW0
ジュン「……結菱さんを助ける方法は!?」
雪華綺晶「あります。メメントリオンはエサを捕まえても
その消化には100年単位を要します。完全に心を溶かされる前に
記憶の海を漂うメメントリオンから結菱一葉を連れ戻すのです」
真紅「要は力ずくで取り返せってことね。分かりやすくていいことだわ」
翠星石「セメントだかモメンドウフだか知らないですが
蒼星石のマスターである、おじじに目をつけたのが運の尽きです。
ぎったんぎったんにしてやるですよ!!」
蒼星石「相手がモンスターとは言え、必要以上に痛めつけるつもりはないさ。
僕はマスターさえ無事で取り返せれば、それで……」
雪華綺晶「私、必要以上に痛めつけられてませんでした?」
蒼星石「ただ、マスターが怪我でもしてたら
自分でも何をするか分からないけどね」シャキンシャキン
翠星石(ハサミをチョキチョキさせながら
蒼星石が呟くのは、かなり頭に血が昇っている証拠ですぅ……)ひそひそ
ジュン(メメントリオンのためにも結菱さんを無事に取り返さないとな)ぼそぼそ
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:02:13.86 ID:tS9k0vWW0
★数十分後・記憶の海岸線
翠星石「スィドリーム達がアメンホテプを見つけたのは、ここの沖合だそうですが」
雪華綺晶「メメントモリですってば。しかし……」
真紅「やはり移動しているようね。どこにも見当たらないのだわ」
雛苺「またベリーベル達に探してもらう?」
蒼星石「人工精霊達は先の捜索で結構疲れてしまっている。
出来れば、これ以上の無理はさせたくないけど」
雪華綺晶「そのためにも私が水先案内人としてついて来たのですわ、お姉様方」
ジュン「雪華綺晶? 海に入って何を?」
雪華綺晶「私のお友達を呼びます」
真紅「お友達?」
翠星石「お前、友達なんていたですか?」
蒼星石「とても友達が出来るタイプには見えないんだけど」
雛苺「食堂でも席が見つからなくて立ったまま食べるぐらい不器用っぽいの」
雪華綺晶「ここぞとばかりに言いたい放題ですわね……と、来ましたよ」
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:03:35.90 ID:tS9k0vWW0
ジュン「来たって……?」
真紅「海よ! 海から何か来る!?」
サメA「しゃーく!!」ざばば
サメB「しゃーく!!」ざばば
ジュン「げぇっ! ジョーズ!?」
雪華綺晶「いえ、ジョーズ(ホオジロザメ)ではありません。シロワニです」
ジュン「どっちでもいいよ!! 人食い鮫なことには変わりないだろ!!」
蒼星石「シロワニは人を襲わないよ。
ホオジロザメだってわざわざ人間を狙って食べるわけでもないし」
真紅「でも、雪華綺晶は人食い薔薇を飼ってたわよね?」
雪華綺晶「さあ、そうでしたっけ?」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:06:26.29 ID:tS9k0vWW0
翠星石「人は襲わないって言われてても、海で泳いでて
こんなのが近づいて来たらションベンちびるですよ……」
雛苺「このサメさん達が雪華綺晶のお友達なの?」
雪華綺晶「如何にも。海のことなら海の者に頼るのが一番ですわ。
では、早速ですがサメさん、私達はここの沖合にいた
メメントリオンを探しているのですが、ご存知でしょうか?」
サメA「しゃーくしゃーく!」
サメB「しゃくしゃーく!!」
雪華綺晶「なるほど」
ジュン「なんて言ってるんだ?」
雪華綺晶「A『御存知もリア・ディゾンもあるめーよ、てやんでぃバーロー』
B『さっきまでそこに居座ってたから、怖くて海底の隅で震えて
タコノマクラ(※)を涙で濡らしてたぜコンチクショー』……とのことです」
ジュン「全訳しなくていいから、かいつまんで教えてくれ」
翠星石「て言うか、図体はでかい割に肝っ玉の小さいやっちゃですねぇ」
蒼星石「シロワニは基本的には臆病でおとなしいサメだからね」
※タコノマクラとはウニの一種
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:07:32.10 ID:ulzbFWM/0
サメwww
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:08:00.53 ID:tS9k0vWW0
真紅「で、グラビア界の黒船リア・ディゾン……じゃなかった
幽霊船メメントリオンは何処へ行ったの?」
雛苺「リア・ディゾンがどこ行っっちゃったかも気になるけど
今はメメントリオンの方が大事なのよ!」
ジュン「そうだな。リア・ディゾンの現在に興味は尽きないが
結菱さんの安全確保の方が優先だ」
雪華綺晶「リア・ディゾンにそこまで食いつかれても困ります。
……と、サメさん? メメントリオンは今、何処か分かります?」
サメA「しゃしゃーく!」
サメB「しゃーくっく!」
雪華綺晶「メメントリオンは今、別の海域の沖で停泊しているそうです。
また、リア・ディゾンはハッスルでハードゲイと戦っているそうです」
ジュン「それインリン・オブ・ジョイトイだろ、しかも随分と昔の」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:09:50.91 ID:tS9k0vWW0
真紅「……メメントリオンは結局、大海原にいるのよね」
蒼星石「そこまで、どうやって行けばいいんだろうか?」
ジュン「泳ぐのはちょっと無理だな。
ただでさえ冷たい海な上に、記憶の海水は心に沁みる」
サメA「しゃーくしゃく!!」
サメB「しゃしゃしゃーく!」
雪華綺晶「良ければ自分達の背に乗りませんか? と言ってますが」
ジュン「油断させといて海の真ん中で僕らの皮を剥いで食べようってんじゃないだろうな」
雛苺「ヒ、ヒナは球体関節とかが歯にはさまるから、きっと美味しくないのよ!!」
雪華綺晶「因幡の白兎じゃあるまいし、このサメさん達はそんなことしませんわ」
蒼星石「他にいいアイデアもないし、今は時間が惜しい。ここはサメさんの好意に甘えるか」
真紅「そうね」
翠星石「マ、マジですか……」
雪華綺晶「では庭師の双子と私はこちらのサメさんに乗りますので
紅薔薇のお姉様達はそちらのサメさんにお願いしますわ」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:12:11.46 ID:tS9k0vWW0
サメA「しゃしゃしゃしゃーっく!」ザババババ
雛苺「うわーい。サラマンダーよりはやーいのー」
ジュン「はしゃぐな、雛苺! 海に落ちるぞ!」
真紅「でもサメ肌だから案外、滑り落ちにくいのだわ」
サメB「しゃーしゃっしゃっしゃ!」ザババババ
蒼星石「イルカやシャチには乗ってみたいと思ってたけど
まさかサメに乗ることになるとはね」
翠星石「おじじの安否が不明な今じゃ、楽しむゆとりもないですぅ」
蒼星石「それもそうだけど、イルカやシャチは哺乳類だけどサメは魚類だし」
翠星石「そこは拘りのポイントなのですね」
雪華綺晶「ほらほら、見えてきましたよお姉様方。あれがメメントリオンです」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:14:48.31 ID:tS9k0vWW0
幽霊船「……ゴオオオオオオオオオオ」
真紅「あれが……!」
翠星石「トリートメント……!!」
蒼星石「メメントリオン」
雛苺「この『ゴオオオオ』って音は何なの? 怖いのよ」
雪華綺晶「元が沈没船ですから、あちこちに穴が開いているのです。
通り抜ける風が船体内に反響して鳴っているのですわ」
ジュン「まるで死霊の呻き声みたいだな」
雪華綺晶「外観の特徴も、ベリーベル達が見た船と相違なさそうです。
結菱一葉は……あの中にいます」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:17:05.23 ID:tS9k0vWW0
ジュン「で、近づいてきたのはいいが、どうやって乗り込むんだ?」
雪華綺晶「今も言いましたとおり、メメントリオンの船体は穴だらけです。
船底かそこらの穴から中に進入しましょう」
翠星石「いきなり強行突破ですか?
その前に白薔薇! お前が偵察なりなんなりしてこいですぅ」
真紅「そうね。雪華綺晶なら
ふわふわ〜と飛んだり壁抜けできるからうってつけなのだわ」
雪華綺晶「白衣観音経のダメージが思いのほか深くて、上手く飛んだりできないのです」
ジュン「マジでか」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:21:06.68 ID:tS9k0vWW0
雪華綺晶「では、もっと近づいて中に入れそうな穴を探しましょう。サメさんお願いします」
サメA「しゃーく!」すぃー
サメB「しゃしゃ!」すぃー
翠星石「むむむ……?」
蒼星石「どうかしたのかい翠星石?」
翠星石「いや、この船……どっかで見たような気が……?」
ジュン「翠星石もか? 僕もなんとなくだけど見覚えがあるような」
雪華綺晶「……元は名のある客船とかだったのもしれませんね」
真紅「ひょっとしてタイタニック号とか?」
雛苺「ディカプリオがいるかもなのよ!?」
蒼星石「まさか。ボロボロなのは確かだけど、そこまで古い時代の船でもなさそうだ」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:23:41.98 ID:tS9k0vWW0
★メメントリオン・船腹
雪華綺晶「……どうやら、この穴からなら中に行けそうですわ」
サメA「しゃーくっく!」
サメB「しゃーく!!」
雪華綺晶「はい。では、帰りの時は、またよろしくお願いしますわ」
サメA「しゃしゃーく」ざばば
サメB「しゃーしゃっ」ざばば
ジュン「どこに行ったんだ? あのサメ達は」
雪華綺晶「また私が呼ぶまで、海底で友達のサンマと三人麻雀(サンマ)しているそうです」
ジュン「ああ、そう」
雪華綺晶「これが本当の海底摸月……なんちゃって」
ジュン「みんな、先を急ぐぞ」
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:25:41.48 ID:tS9k0vWW0
★メメントリオン・船倉
真紅「ついに幽霊船潜入作戦開始ね」
雛苺「金糸雀が好きそうなシチュエーションなのよ!」
蒼星石「慌てて出発したから金糸雀や水銀燈は呼べなかったけど……」
翠星石「金糸雀は兎も角、水銀燈は呼んでおくべきだったですかね?」
ジュン「あいつは敵だとウザいけど、仲間だと心強いからな」
雪華綺晶「今さら、そんなことを言っても始まりませんわ。
それにメメントリオンは見た目こそ巨大な威容ですが
シロワニさん達のように大人しく弱いモンスター」
真紅「それが本当なら、腹の中を私達のような異物が歩きまわっても
さしたる抵抗は無いと予想できるわね」
翠星石「そうであればいいのですが……なんにせよ
おじじを早いとこ救出しなくてはならんことに違いはないです」
蒼星石「マスター、もうしばらくの我慢を。今すぐ助けるから……!」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:27:36.50 ID:tS9k0vWW0
骸骨A「ところがぎっちょん!」ガチャンッ
骸骨B「思い通りにならぬのが、この世の理!」ガタッ
骸骨C「俺っちたちの住処に土足で入ろうたぁ、ふてぇ野郎どもだ!」カタタッ
ジュン「ッ!?」
雛苺「ガ!」
真紅「ガガ……ガ!?」
翠星石「ガオガイガー!? ……じゃなくて」
蒼星石「ガイコツ!!」
雪華綺晶「そんな馬鹿な!?」
骸骨A「出会いがしらで失礼! 如何にも我らは骸骨、おまけに海賊」
骸骨B「しかもメメントリオンを外敵から守る用心棒。または雑用係とも言う」
骸骨C「密航者いや不法侵入者ども! 覚悟は出来ておるな!!」
ジュン「うわわわわわわ! 骸骨だ! 海賊だ! 本物だ!!
映画やゲームで見たのとまるっきり同じだよーっ!!」ドタバタ
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:29:07.46 ID:tS9k0vWW0
真紅「落ち着きなさいジュン!」
ジュン「ここっこ、これが落ち着いていられるか!? ガイコツだぞガイコツぅ!!」
骸骨A「いいね、いいねぇ、そのリアクション。お化け冥利に尽きるってもんよ」
骸骨B「たっぷりと可愛がってやるぜ……!」
蒼星石「ま、待って下さい! 勝手にメメントリオンに忍び込んだことは謝ります!」
骸骨C「む?」
蒼星石「僕達はメメントリオンに精神を囚われた人間を救うためにここへ来ました!」
骸骨A「知ってるぜ。結菱一葉だろ?」
翠星石「え!?」
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:31:42.03 ID:tS9k0vWW0
骸骨B「ついでに言うならお前達のことも知っている。
『あの方』に教えてもらったからな、真紅に雛苺、翠星石に蒼星石、雪華綺晶
そして桜田ジュン……だろ?」
雛苺「ど、どうしてヒナ達のことも知ってるの!?」
雪華綺晶「あの方……とは誰です?」
蒼星石「それよりも、僕達のことまで知っているのなら話は早い!
マスターを、結菱一葉を返してください! なら、すぐにでも出ていきます!」
骸骨C「残念がら、はいそうですか、とはいかねぇな。
一葉は俺達の大切なお客さんだからよ」
骸骨A「だが、会わせてやることはできるぜ。メメントリオンの腹の底で、だがな!!」
骸骨B「なに、おとなしくしてりゃ痛い目には遭わないさね!!」ガバッ
骸骨C「ひゃっはーっ!!」ダダダダッ
ジュン「うわわ! 襲いかかって来るぅ!?」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:32:58.95 ID:tS9k0vWW0
真紅「く! 仕方ない強行突破よ!」
翠星石「ええい! やってやるです!!」
蒼星石「真紅は右! 翠星石は左! 僕は真ん中を片付ける!!
雛苺と雪華綺晶はジュン君を!!」
雛苺「うぃ!」
雪華綺晶「分かりました! 片付けます!!」
ジュン「守るんだよ!!」
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:35:15.71 ID:tS9k0vWW0
真紅「ローズテイル!!」
骸骨A「あじゃぱー!!」ドカーン
翠星石「如雨露殺法・二の太刀『地摺り正眼』!!」
骸骨C「ぎえぴーーっ!!」バコーン
蒼星石「閂枝剪定!!」
骸骨B「あばらばらばーーっ」ドンガラガッシャーン
雛苺「やったのよ!」
雪華綺晶「流れるような攻撃。流石ですわお姉様方!」
骸骨A「て、てめえらよくも!!」カチャカチャ
骸骨B「骸骨じゃなきゃ死んでたよ!」ゴキンゴキン
骸骨C「正確には、もう死んでるけどな俺達」ガココ
ジュン「げ! 骨が元に戻ってくぞ!」
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:36:07.27 ID:tS9k0vWW0
真紅「埒が開かないわ! ここは逃げるわよ!」
蒼星石「そうしよう! 走れるかいジュン君!?」
ジュン「ああ、僕なら大丈夫だ!! しかし、どっちへ逃げる!?」
雪華綺晶「僅かながら、生命体と思われる反応をあちらの方向から感じますわ。
おそらく結菱一葉かと……!」
翠星石「よし全力で逃げるですよ! チビ苺も遅れるなです!」
雛苺「はいなの!!」
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:38:39.94 ID:tS9k0vWW0
★メメントリオン・船内通路
ジュン「しかし何者だったんだ、あのガイコツ達?」
雪華綺晶「分かりません。元々はメメントリオンに捕らえられた死者だと思いますが。
……あ、みなさん、船内はどこも朽ちて脆いですし
穴ボコだらけなので足元にはご注意を」
翠星石「……食べられずに、そのままここに住みついちゃったんですかね?」
真紅「メメントリオンを守る……と言ってたわよね」
雪華綺晶「ヤドカリが貝がらにイソギンチャクを用心棒として
くっつけることならありますが……」
雛苺「メメントリオンも同じことを? でも弱〜いヨウジンボウさんだったのよ」
翠星石「翠星石達に簡単にやられちゃっていたですしね」
蒼星石「確かに。自分達を海賊だとも言っていたが、それにしては随分と
骨の細いガイコツ達だった。そして何よりも気になるのは……!」
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:39:58.06 ID:tS9k0vWW0
ジュン「僕達のことを知っていた。しかも『あの方』って誰のことだ?」
真紅「こういった展開パターンだと大概の白幕、いえ黒幕は雪華綺晶だったんだけど」
翠星石「白薔薇はここにいるですし」
蒼星石「ということは、黒幕は誰だ? 僕達のことを知っていて
ガイコツ達に入れ知恵できる人物……?」
雛苺「むぅ〜?」
骸骨D「あ、おい! いたぞ! こっちだ!!」ドタドタ
骸骨E「間違いない! ローゼンメイデンだ! やっぱりこっちに来てやがった!」バタバタ
骸骨F「よっしゃ俺に任せろ!!」ガヤガヤ
骸骨G「いーや! あいつらを捕まえるのは俺だ!!」ダバダバ
翠星石「げげげ、新手のガイコツ達です!!」
蒼星石「ちっ! やはり、あの三人だけじゃなかったか!!」
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:40:40.22 ID:tS9k0vWW0
ジュン「どうする!?」
真紅「まともに相手すると消耗するだけなのだわ!」
蒼星石「できるだけ、戦闘は避けながら
雪華綺晶が生命反応を感じた所に向かおう!」
雪華綺晶「こちらですわ! お姉様方!」
ジュン「しょうがない! また走るか!!」
雛苺「レッツらゴーなのよ!!」
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:42:09.11 ID:tS9k0vWW0
★メメントリオン・甲板
ジュン「はぁはぁ……な、なんとか逃げて来たのはいいが……!」
雛苺「外に出ちゃったのよ」
真紅「こっちで方向は合っているの白薔薇?」
雪華綺晶「ええ、間違いありませんわ」
蒼星石「ああ。ここまで来れば僕でもマスターの生命波動を感じる。
あそこだ。あの部屋の中にマスターがいるのを感じる」
翠星石「操舵室……ですか!」
雪華綺晶(しかし、何かがおかしい。ガイコツ達の追跡が途中で急に緩んだ。
まるで私達に、ここへと来て欲しかったように……?)
ジュン「っ!? 操舵室の扉が開く? 誰か出てくるぞ!!」
翠星石「ひょっとして、おじじ!?」
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:44:53.93 ID:tS9k0vWW0
骸骨H「……」ガシャンガシャン
真紅「結菱一葉……では、なさそうね」
雛苺「いくらおじいちゃんでもガイコツになるにはまだ早すぎるのよ」
骸骨H「……」ピタリ
蒼星石「……船長とお見受けします」
骸骨H「何故……そう思う?」
蒼星石「ジャック・スパロウみたいな海賊帽を被ってらっしゃる」
骸骨H「ははは。なるほど、これか。たまたま海に浮かんでいたのを拾って
気に入ったから被っているだけなんだが……」
蒼星石「それと……なんとなくですが、貴方の立ち居振る舞いには気品を感じる」
骸骨H「世辞だとしても嬉しいね。しかし僕は船長ではない。
敢えて言うなら船長代理補佐心得……てところかな」
翠星石「な、なんですか、そりゃ!? 翠星石達をからかっているのですか!?」
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:46:56.70 ID:tS9k0vWW0
骸骨H「からかっているわけじゃない。君達も知っての通り
この船の今の支配権はメメントリオンが握っている。
しかも、この船の本来の船長に到っては、とうの昔に成仏している」
雪華綺晶「では、あなた達は何なのです? 根っからの海賊には見えませんし
メメントリオンに捕らわれ、消化の時を待つだけの囚人にも見えない」
骸骨H「消化? ふむ、なるほど。
君達が血相を変えて……一葉を救いに来たのはそういうことか」
蒼星石「やっぱり……居るんですね? その奥の部屋に」
骸骨H「ああ。しかし彼はまだ帰る気は無いようだよ?」
蒼星石「戯言を!!」
骸骨H「逸るな。周りをよく見ろ蒼星石」
蒼星石「ッ!?」
骸骨達『ワー! ワー!』
雛苺「ガイコツさん達が一杯なのよ!!」
雪華綺晶「……囲まれてますね」
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:48:42.93 ID:tS9k0vWW0
骸骨達『ワー! ワー!』
翠星石「ワーワー言っとるですぅ……」
蒼星石「くっ!」
骸骨H「ここで提案だが蒼星石、僕は君との果し合いを所望する」
蒼星石「な!?」
骸骨H「君の事は話にはよく聞いている。本当に話どおりの人物か、剣で確かめたい」
ジュン「おいおいおい……」
蒼星石「僕が応じるとでも?」
骸骨H「君が勝てば一葉を返す」
蒼星石「……!! 保証は?」
骸骨H「僕は嘘が嫌いだ」
蒼星石「……みんなと相談したい」
骸骨H「認める」
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:50:40.89 ID:tS9k0vWW0
真紅(ちょっと蒼星石!? 本当に決闘に応じるつもり?)
翠星石(時代錯誤も甚だしいですよ!? あのキャプテンモドキは!)
蒼星石(僕だって100%信じているわけじゃない。だけど、僕が彼と戦っている間は
周りのガイコツだって手を出してこないはずだ)
ジュン(だといいがな)
蒼星石(そこで僕は戦いながら、あの船長代理補佐心得を操舵室から遠ざける。その隙に……)
雛苺(おじいちゃんを助けるのね)
蒼星石(ああ。マスターを保護したら、そのまま海に飛び込んでくれ。僕もすぐ後を追う)
雪華綺晶(分かりました。武運を、蒼星石)
蒼星石(君達も)
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:52:07.85 ID:tS9k0vWW0
蒼星石「話は決まった! 僕は果し合いに応じる」
骸骨H「グッド!」
蒼星石「……折角だ。戦う前に君の名前も聞いたい」
骸骨H「それも、僕に勝てたら教えてあげよう」
蒼星石「ならば切る!」ダッ
骸骨H「おっと」ガキン
蒼星石「……!」
骸骨H「随分と気が早いな。踏み込みも浅い。そんな奴だったとは聞いてないぞ?
マスターの命が心配だと、本来の自分を出せないのか?
それともこっちが素の自分で、マスターの前では猫を被っているのかな?」
蒼星石「戦いの最中にベラベラと!!」
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:53:39.54 ID:tS9k0vWW0
翠星石「確かに蒼星石らしくないっちゃあ、らしくない攻撃ですぅ……」
真紅「不用意すぎる斬り込みなのだわ」
雪華綺晶「相手が達人だったら、今の隙で完全に返り討ちにあってましたわ」
ジュン「大丈夫なのかよ……あいつ」
雛苺「それは多分ダイジョーブなのよ」
ジュン「へ?」
蒼星石「でやっ! とりゃ! はっ!」
骸骨H「ほっ! ほっ! ほっ! やるねぇ。
だが足元が覚束ないぞ! この腐った甲板、思うようには踊れないかい!?」
蒼星石「……く」
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:55:21.17 ID:tS9k0vWW0
真紅「足場に慣れてない、不利な今の状況で蒼星石と船長代理補佐心得は互角」
雪華綺晶「いずれ蒼薔薇のお姉様が圧倒し始めるはずです」
雛苺「そうなのよ! 本当の蒼星石はもっともっと強いんだから!」
翠星石「それに、あのキャプテンモドキはキザったらしいくせに
強さは他のガイコツ達と変わりないですぅ。
剣を持ってるから厄介なだけで、素手だったら全然ダメダメっぽいです」
ジュン「え、そうなんだ……」
蒼星石「もらった!!」ヂョキーン
骸骨H「ぬ!? しまった! 剣を!?」ポッキリ
ジュン「やった! 奴の剣を鋏でちょん切ったぞ!!」
真紅「これで蒼星石の勝ちは決まったも同然ね」
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:56:59.21 ID:tS9k0vWW0
翠星石「隙を突いておじじを救出するまでもなかったですね」
雪華綺晶「それは相手が約束を守れば……の話ですわ」
骸骨達『ワーワー!』
翠星石「……ガイコツ達は変わらずワーワー言ってるだけで観戦中ですよ」
雛苺「きっと約束どおり、おじいちゃんを返してくれるの!」
真紅「それはどうかしら? あの船長代理補佐心得はまだやる気みたいだわ」
骸骨H「あーあ。この剣もお気に入りだったのにな」
蒼星石「その剣……装飾用でしょ? 実戦にはとても耐えられない」
骸骨H「そこまでお見通しか」
蒼星石「勝負はついた。マスターを返してもらおう」
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:59:24.05 ID:tS9k0vWW0
骸骨H「思い込む……とは何よりも恐ろしいことだ」
蒼星石「!?」
骸骨H「しかも自らの能力を優れた物だと過信している場合はさらにタチが悪い」
蒼星石「この期に及んで減らず口を」
骸骨H「さて蒼星石、君が僕の剣を刈ろうと狙っていたのは知っていた。
僕が右手に持っている、この剣をね」
蒼星石「……?」
骸骨H「剣が挟まれた瞬間、君の意識は僕の右手と剣だけに集中した。
その時を狙えば、いくら戦いの素人の僕でも君の虚をつく事はできる」
雪華綺晶「船長代理補佐心得の左手がない!?」
翠星石「いつの間にか切り離していたですか!」
真紅「まずい! 奇襲よ! 蒼星石、気をつけて!!」
蒼星石「下か!?」
骸骨H「気づいた時には、もう遅い」
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:01:48.61 ID:5/HGMEYF0
蒼星石「しまっ……! 足を掴まれ……!?」
骸骨H「足場に慣れたのは結構だが、やはり一日の長は僕にある。
この甲板に空いた穴がどこでどう繋がっているかまで僕は知り尽くしている。
僕の長話を聞いてくれてたお陰で、なんとか左手をそこまで移動させることも出来た」
蒼星石「……腕を切り離すなんて、痛みを感じてないのか」
骸骨H「ま、骸骨だからね。それはそうと、動けない君が相手なら
この折れた飾りの剣でも、まだ役に立つと思うけど、どうかな?」
蒼星石「なるほど。それじゃあ、君が掴んだのは
僕の本当の足ではないことにも感付いてないか」ぴょんっ
骸骨H「え!? 馬鹿な! 足は掴んでいるはず! 動けるはずは!!」
蒼星石「君が大喜びで掴んだ足は……長靴にその辺の砂や木片を詰めた物なんだよ。
戦いながら君の意識が僕の足に集中していたのには気づいていた。
ただ、腕を切り離してくるとまでは流石に予想しなかったけど」
骸骨H「戦っている間に、長靴に詰め物を……!? そんな素振りは……? まさか!?」
蒼星石「そう。この腐った甲板には随分と足を取られた。そのついでにね」
骸骨H「転んでもただでは起きない……か」
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:03:27.71 ID:5/HGMEYF0
骸骨達『ちくしょー! 蒼星石が長靴さえ履いてなければ!』
骸骨達『せめて! せめて奴の足首が掴めるブーツだったら!』
骸骨達『て言うか、あいつ長靴の下にも普通のブーツ履いてるぞ。なんでだ?』
骸骨H「……完敗だ。やはり君は話どおりの素晴らしい人物。約束どおり一葉は返そう」
蒼星石「!?」
骸骨H「何を驚いている? 僕が約束を反故にするとでも?」
蒼星石「い、いや。そういうわけでは」
骸骨H「……僕の名前は結菱二葉だ」
蒼星石「なっ!?」
真紅「なんですって!?」
骸骨H「いつまでの骸骨の姿を晒すのも失礼か。
亡霊には変わりないが生前の顔を見せるとしよう」ボフンッ
雛苺「あ、顔が人間になったの」
二葉「あくまで見た目が変わっただけだよ雛苺ちゃん。
実質は先ほどまでの醜い骸骨と変わらない」
ジュン「そ、そんなことより二葉って……結菱さんの!?」
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:05:20.07 ID:5/HGMEYF0
翠星石「双子の弟ですよ!! 確か……外国の女と駆け落ち中に船が沈没して死んだ」
ジュン「……てことは、ひょっとしてこの船は!?」
二葉「いかにも。この船はダイナ号の記憶が元となっている」
ジュン「ダイナ号!? そうか! 見覚えがあると思ったらやっぱり!
ネットで沈没の事故を調べた時に写真が載ってた!!」
雪華綺晶「……もう一つ聞きたいことがあります。
あなた達に私達のことを教えた『あの方』とは」
一葉「それは多分、私のことだろう」てくてく
蒼星石「マ、マスター!?」
二葉「兄さん。もう出てきたのかい」
一葉「何が『もう出てきたのかい』だ、馬鹿者が。
ちょっと蒼星石達を驚かせるだけだと言うから黙って見てれば……」
二葉「だったらもっと早く止めに出てきなよ。何だかんだ言っても
兄さんは僕の兄さんだ。自分だって楽しんでたんだろ?」
一葉「む……それはまあ、その……」
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:08:18.59 ID:5/HGMEYF0
蒼星石「マスター! 無事ですか!? お怪我は!?」
一葉「大丈夫だ。随分と手荒にここに運ばれはしたが、擦り傷一つ無い」
二葉「ごめんごめん。メメントリオンを説得して
兄さんを呼ぶ手筈は整ったんだけど、肝心のフィールド間を繋ぐ扉を
開けていられるのが本当に短い間だけだったもんでさ」
一葉「オマケに骸骨の姿でいきなり現われて、引きずり込みおって。
お前と違って私はもう年なんだ。ショック死するかと思ったぞ」
二葉「死んだら僕達と一緒に、ここで暮らせばいいじゃないか」
元骸骨A「ああ、二葉さんの御兄弟ってんなら歓迎するよ」
元骸骨B「全くですわね」
一葉「ふん。急かされなくても、いずれちゃんと死んでやる」
ジュン「ほ、他のガイコツ達も人間の姿に戻ってる?」
翠星石「うわあ、どいつもこいつも育ちの良さそうな顔してやがるです」
真紅「最初からその姿だったら、とても海賊とは思えなかったわね」
ジュン「て言うか、女性もいたのか。全然、分かんなかった」
雪華綺晶「ひょっとして彼らは皆、ダイナ号の」
二葉「皆ではないが殆どはそうだ。乗客あるいは乗組員。船と一緒に死んだ……ね」
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:10:42.03 ID:5/HGMEYF0
雪華綺晶「そしてメメントリオンに船もろとも心を捕食された」
二葉「そういうことだ」
翠星石「じゃ、じゃあ二葉達は、みんなメメントリオンに消化されちゃうって事ですか!?」
二葉「そこのところだが、どうもお互いメメントリオンに対する認識の違いがある」
真紅「認識の違いと言われても、私達はそもそもメメントリオン自体知らなかったのだわ」
雪華綺晶「死人の記憶と精神を100年単位で消化するモンスター……としか」
二葉「間違ってはいないが、それはメメントリオンをあまりに単純化しすぎている」
雪華綺晶「と言うと」
二葉「ダイナ号で死んだ全ての人がメメントリオンに捕らわれたわけではない」
雛苺「うゅ?」
元骸骨C「ここにいる死人達には、そんなことよりも重要な一つの共通点があるんだな」
蒼星石「共通点?」
二葉「大なり小なり、罪の意識を持ったまま死んだ者達だ」
ジュン「罪……?」
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:15:12.74 ID:5/HGMEYF0
二葉「バク……という空想上の動物がいるだろう? 悪夢を食べるっていう」
雪華綺晶「メメントリオンも……罪悪感の記憶だけを食べると?」
二葉「『記憶食い』と言われるけど、僕達の記憶を食べて消してくれるわけじゃない。
考える時間を与えてくれるだけさ。罪の懺悔か、あるいは罰としての投獄かは分からないが」
真紅「それじゃあまるで、記憶の消化ではなく……浄化!?」
二葉「そうとも言える。自分の罪に、いきなり途切れた人生に……納得をつけた奴から
ふわっと昇天して行っちゃうのさ。そりゃ、いい顔して逝ったよ、みんな」
元骸骨D「メメントリオンが、ダイナ号に引越しする前からいた占い師だったか詩人だったかが
私達にこのモンスターの存在を教えてくれたのですが
彼も真紅さんと同じようなことを言ってました」
二葉「メメントリオンは巨大な浄化機構だ。償いをせずに死んだ罪人達に報いと救いを与える。
そうしなければ犯した罪の穢れや恨みだけが澱んで残る。
そしてそれは子々孫々、あるいは無関係の者にさえ降りかかる『呪い』となる」
雪華綺晶「呪いが人を害すれば……記憶の海も穢される。
記憶の海が穢れればメメントリオンも生きていけなくなる……」
元骸骨E「そうそう。どうして『呪い』が、この海を汚すことになるんだかまでは
馬鹿な俺達には分からないんだけど、実際にこうなっちまうとさ」
元骸骨F「他に信じるものも無いことですし」
二葉「それなりに筋は通った話のように思えた。そう言ってた占い師か詩人も
その後すぐに成仏したし、他の古株たちも何人かいたが、みんな成仏していった」
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:16:36.21 ID:5/HGMEYF0
雛苺「ねぇねぇ? だったらどうしてフタバは、ここにいるの? 何か悪いことしたのよ?」
ジュン「やっぱり駆け落ちしたことに、罪の意識が……ですか?」
二葉「その通りだ。兄さんから彼女を奪ったし、兄さんを置いて結菱家から逃げ出した」
一葉「……」
二葉「兄さんにも彼女にも結構な迷惑をかけた事は全て聞いた。
そして蒼星石、君のお陰で兄さんが救われたことも」
蒼星石「そんな大袈裟な……」
一葉「大袈裟ではない。私は真実だけを話した」
蒼星石「マスター……」
二葉「一言謝りたいと思って、兄さんを呼んだんだが話をしているうちに
ローゼンメイデンだ何だと面白いことになってきてね。
仲間のみんなにも話を聞いてもらってたんだ。そうこうしていたら……」
翠星石「翠星石達が乗り込んできた……ですか」
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:19:16.27 ID:5/HGMEYF0
真紅「やれやれだわ」
蒼星石「最初からそうだと言ってくれてれば」
二葉「ははは、すまない。しかし僕達にもこの船を守るという建て前は一応ある。
メメントリオンは偉大だが脆弱な存在だ」
ジュン「そうだとしても、やっぱりやりすぎだと思いますよ僕は」
元骸骨A「俺もそう思ったけど、桜田君のビビリっぷりが素敵過ぎて、ついノリノリに」
元骸骨B「娯楽というものがありませんからね、ここには」
ジュン「……」
幽霊船「……ボオオオオオオオオオオ」ガコン
真紅「な、何!?」
一葉「船が動き出したぞ?」
二葉「我らが救い主のオネムの時間だな。
兄さんを呼ぶという僕のワガママを聞いてもらったし、疲れたんだろう。
じきにダイナ号は、メメントリオンは海に沈む」
蒼星石「え!?」
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:21:22.37 ID:5/HGMEYF0
元骸骨C「あ、勿論オレ達は平気なんだな。どうせ、その内また浮上するし」
一葉「二葉……!」
二葉「そんな顔するなよ兄さん。短い間だけど話せて嬉しかった」
元骸骨D「ええ、私達も一葉さんのお話が聞けて楽しかったですし」
元骸骨E「ああ。勇敢で可愛いお嬢ちゃん達にも会えた」
元骸骨F「明日にでも何人か成仏しているかもしれませんね」
元骸骨G「ボクなんて今すぐにでも……あっ」ばしゅーん
二葉「あらら、逝っちゃった」
ジュン「こんな軽いノリで成仏していいのかよ」
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:23:24.68 ID:5/HGMEYF0
サメA「しゃーく!」バシャシャ
サメB「しゃしゃ!」バシャシャ
サンマ「んまさー!」バシャシャ
二葉「あ、サメだ。珍しいな、どうしてこんなところに?
僕達に食べるところなんて無いはずだし……しかも何故かサンマもいる?」
雪華綺晶「友人です」
一葉「ゆ、友人……?」
雛苺「船が沈み始めたから心配して来てくれたのね」
ジュン「サンマまで」
蒼星石「マスター……急がないと」
一葉「分かってる。最後に……弟と二人だけで、もう少し話をさせてくれ」
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:25:26.16 ID:5/HGMEYF0
二葉「今さら畏まって言うこともないけど、それじゃ兄さん、僕は行くよ。お元気で」
一葉「お前もな……と言うのは、おかしいか」
二葉「いや、ありがとう」
一葉「……罪の意識はまだ晴れないのか? 私も彼女も、お前を恨んでなどいないのだぞ」
二葉「分かってる。あとは僕自身の気持ちの問題、納得の付け所だけだ」
一葉「そうか、ではまた……な」
二葉「うん、また」
一葉「……勘違いしているようだったから、念のためにもう一度、言ってやるがな。
私はちゃんと死ぬからな。罪の意識を抱えてメメントリオンの世話になどならん。
ここで私を待ち続けるつもりだったのなら見当違いも甚だしい」
二葉「シラフでそんな台詞、普通の人なら恥ずかしくてとても言えるもんじゃないよ。
よほどの聖人君子か、大嘘つきでもない限りね」
一葉「二葉……」
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:30:32.96 ID:5/HGMEYF0
二葉「しかし、蒼星石と戦って分かった。
彼女が兄さんの心の闇をメメントリオン以上に清めてくれていたことを」
一葉「……」
二葉「けれども蒼星石の中にも闇はある。それを照らすのは兄さんの役目だ」
一葉「分かっている。それが出来るまで死ぬつもりはない。ちゃんと死ぬとはそういう事だ」
二葉「なるほど。それではその時までには、僕もちゃんと死んでおくことにする」
一葉「信じていいんだな、その言葉」
二葉「当然」
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:31:56.29 ID:JjPNSYJ70
ジジイかっこいいよジジイ
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:32:09.46 ID:5/HGMEYF0
蒼星石「マスター! 早くー!! もうサンマの上しか席が残ってませんよー!」
一葉「ああ、すぐ行く! じゃあな馬鹿者、海の底で風邪引くなよ」
二葉「兄さんこそ。記憶の海の水は冷たいから気をつけな。年なんだろ?」
一葉「……ふん」
二葉(今のメメントリオンに残された力でも、兄さん達を現実世界に送り返せるんだけど
何回も馬鹿者って呼ばれてムカついたし、知らんぷりしとこっと……)
長靴を履いた蒼星石と記憶の海賊 『完』
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:33:03.11 ID:RC7mUTKa0
乙!!
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:34:34.04 ID:JjPNSYJ70
乙です
---------------
当ブログについて
※欄444さんありがとうです。
読み物:ローゼン
お絵かき掲示板
画像掲示板
ジュン「へぇ〜。そう言えば以前、犬のウンコ踏んづけて
パニックになってた時もあったっけ? 蒼星石は」
蒼星石「……まだ覚えてたんだジュン君」
翠星石「うーむ、おじじは心配りの達人ですね。
ローゼンメイデンたるもの、お父様から頂いた衣服も大切な体の一部ですから
靴を履き替えるだなんて真似は到底できないです」
蒼星石「うん。でも、この靴の上から長靴を履く方法であれば、その問題は解決できる」
ジュン「考えたな結菱さんも。今度から僕の家でもやってみるか。
正直、ローゼンメイデンってのは外でも内でも靴を履きっぱなしだから
家の中が地味に汚れて困ってたんだ。僕には耐えられない」
翠星石「チビ人間が潔癖過ぎるだけです。
そもそも室内では靴を脱ぐという行為自体が意味不明でぇ〜す」
ジュン「ちっ、この西洋人形めが」
蒼星石「でも、それは家に上がる前に靴を拭けばいいことじゃないの?」
ジュン「真紅と雛苺はそうしてくれるんだが
めんどくさがって靴拭きをサボるやつが約一名いる」
翠星石「♪すひ〜 ♪すひひ〜」
蒼星石「口笛吹けてないよ翠星石」
6 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:39:16.31 ID:t9GD8kzQ0
>翠星石「♪すひ〜 ♪すひひ〜」
かわゆすなぁ
3 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:36:46.42 ID:tS9k0vWW0
☆桜田ジュンの部屋
真紅「なるほど、蒼星石に長靴を……ね。結菱一葉ならではの心遣いだわ」
蒼星石「うん。僕もそれ以来なんとなく外を出歩くのが楽しくてね」
雛苺「あとでヒナも履いてみたいのよ!」
蒼星石「ああ、勿論いいとも」
翠星石「真紅に新しいブローチをプレゼントしておきながら
ものの見事に握り潰されたチビ人間にも見習ってほしいところですね」
ジュン「うるさい」
真紅「暗に、お父様から頂いたこの古いブローチを捨てろと言ってるようなもの。
ジュンの頭蓋骨ではなくブローチの方を握り潰したのが最大限の優しさよ」
ジュン「ありがとうございました」
4 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:37:33.89 ID:tS9k0vWW0
蒼星石「真紅の方も相変わらず壮絶だね」
真紅「そうかしら?」
雛苺(でもね、でもね蒼星石!)ひそひそ
蒼星石「ん?」
雛苺(そのあと真紅は、ジュンに内緒で破片を全部集めて
時間の螺子を巻いて、ブローチを直したのよ。
そして真紅が一番お気に入りのくんくん人形に、こっそり付けてるの!)
蒼星石(そうなんだ)
雛苺(これはジュンには絶対に絶対の秘密なの! もし、ばらしたら真紅に殴られるのよ)
蒼星石(やれやれ。そういうところも相変わらず……か、真紅は)
5 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:38:16.98 ID:tS9k0vWW0
ジュン「二人だけで何をひそひそ話してるんだ?」
雛苺「うゅ!?」
蒼星石「あ、いや、その……」
雛苺「えーと、えーっとね!」
蒼星石「よ、よく釣りの時とかに長靴しかひっかからないことがあるけど
あれの中身(人間の足)が、ちゃんとあった場合は
釣果をボウズとすべきか否かについて議論を……」
雛苺「そ、そう! そうなのよ!」
ジュン「そんな恐ろしい内容だったの!?
くすくす笑ってるようにも見えてたんだけど!?」
翠星石「蒼星石はブラックな内容でも、冗談交じりに話す時があるですから」
真紅「右腕が取れたなら左腕も取ればいいじゃない、とか」
蒼星石「あれは冗談じゃなくて、嫌味だったんだけどね」
7 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:39:18.71 ID:tS9k0vWW0
♪ピロリ〜 ♪ピロリロリ〜〜
真紅「あら何? この音楽は」
蒼星石「あ、ごめん。僕の携帯だ。マスターから通話? 珍しいな……」ピッ
ジュン「それも結菱さんに貰ったやつだったよな」
真紅「確か、マウンテンバイクやクレジットカードまで持ってたわよね蒼星石は」
翠星石「ちょっとしたスネちゃま状態です」
蒼星石「はい、もしもし僕です。どうかしたんですか、マスター?」
雛苺「蒼星石ばっかり、おじいちゃんにいろいろ買ってもらってずるいの〜!
ジュ〜ン! ヒナにもいろいろ買って! 買ってぇ〜!!」
ジュン「この間、パソコンでお絵描きするからってペンタブ買ってあげただろ」
雛苺「パソコンは飽きちゃったの! やっぱりクレヨンと紙の手ざわりが無いと
ヒナのクリエイターソウルは刺激されないのよ!!
だから今度は64色ぐらいあるクレヨンセットがいいの〜」
ジュン「このやろ……!」
翠星石「二人とも蒼星石が通話中なんですから、少しは静かにするです」
8 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:40:09.34 ID:tS9k0vWW0
蒼星石「……ッ!? もしもし!? どうしたんです!?
マスター!? マスター……ッ!?」
ジュン「!?」
真紅「どうかしたの!? 蒼星石?」
蒼星石「分からない! マスターが何も話さずに、いきなり電話が切れた……」
翠星石「おじじの身に何か!?」
ジュン「ひょっとして心臓発作や脳梗塞じゃ……!?」
蒼星石「そ、そんな……!?」
真紅「でも、それだったら蒼星石に電話じゃなくて、119するんじゃないの?」
蒼星石「み、みんな! 来てすぐで悪いけど、僕は家に帰らせてもらう!」
翠星石「なに言ってるですか蒼星石!? おじじの一大事かもしれんのです!」
真紅「ええ、私達も一緒に行くのだわ!」
ジュン「ぼ、僕も行くぞ!」
雛苺「ヒナも!!」
10 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:41:19.17 ID:tS9k0vWW0
☆数十分後・薔薇屋敷・結菱一葉の寝室
蒼星石「マスター!? しっかりして下さい!? マスター!!」
一葉「……」
蒼星石「駄目だ! 全く意識が戻らない!!」
真紅「心が完全に抜けているわね」
翠星石「部屋にはおじじが誰かに襲われて抵抗したような跡があるです」
雛苺「病気とかで倒れたんじゃなさそうなのよ!」
ジュン「だとしたら、いったい誰が結菱さんにこんな事を……!?」
翠星石「しかもこの家の全ての扉や窓には鍵がかかっていたです」
真紅「玄関の扉も蒼星石が開けるまではきっちり閉まっていた」
雛苺「密室殺人なの!」
翠星石「おじじはまだ死んでねーですよ、チビチビ」
一葉「……」
蒼星石「こんなことが出来るのは……!」
11 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:43:01.42 ID:tS9k0vWW0
☆数時間後・薔薇屋敷・座敷牢
雪華綺晶「なるほど。それで私が犯人だとお疑いなのですね。詮無いことを」ぶら〜ん
真紅「逆さ吊りにされても、おすまし顔は相変わらずね白薔薇」ゆっさゆっさ
雪華綺晶「揺らさないでくださいませ、紅薔薇のお姉様」ぶらーんぶらーん
蒼星石「召喚に応じて素直に出頭してきた潔さは認めよう」
雛苺「蒼星石のおじいちゃんも素直に返すのよ!!」
雪華綺晶「やれやれですわ。随分と嫌われましたね、私も」
翠星石「前科の枚挙に暇がないですからね、お前は」
ジュン「アメリカだったらGPS埋め込まれてFBIのデータベースに登録されてるレベル」
雪華綺晶「エーテルから解放されたアストラルである、この私にGPSなど……
なんとも不条理です、不分別ですわ」
14 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:45:32.68 ID:tS9k0vWW0
蒼星石「思い込むというのは何よりも恐ろしいことだ」
雪華綺晶「……その言葉、そっくりそのままお返しいたします蒼星石」
蒼星石「しかも自分が優れていると思い込んでいる時はさらにタチが悪い」
雪華綺晶「……」
蒼星石「自分がアストラル解放体であることに、君が誇りを持つのは自由だし、当然だ。
しかし、そのことで自信を持ち過ぎることは好ましくない」
真紅「その通りなのだわ。素直に私達の目の前に現れたのも
逆さ吊りをあっさり甘受したのも、アストラルである自分ならすぐに逃げられると
思ってのことでしょうけど……」
雪華綺晶「とんでもありません。そんな風には露ほどにも……」
翠星石「いつまでも、お前にいいように逃げられ続けている翠星石達ではないのです」
雪華綺晶「どういうことです?」
雛苺「ズブリ! その雪華綺晶をしばってるナワは特別製なのよ!」
ジュン「ズブリじゃなくてスバリな」
15 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:46:47.54 ID:t9GD8kzQ0
いやらしい
16 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:48:01.10 ID:tS9k0vWW0
雪華綺晶「なにをのどかな。そこまで言うのなら御覧に入れてみせますわ。
この程度の縄、私がアストラルシフトすれば簡単に抜け出せ……!?」
真紅「どう? 如何に白薔薇とはいえども抜け出せないでしょう」ゆっさゆっさ
雪華綺晶「ば、馬鹿な……? いったいどんな仕掛けを?」ぶらーんぶらーん
蒼星石「白衣観音経で編んだ縄だ。どんな悪霊であろうと、その動きを封じる」
雪華綺晶「わ、私は悪霊ではありませんわ」
翠星石「でも動けなくなってるですよねぇ、白薔薇?」
雪華綺晶「……」ぶらら〜ん
真紅「妖狐玉藻レベルでもないと、その戒めを解くのは不可能」
雪華綺晶「……」
蒼星石「白薔薇風に言うのなら、この縄は
カブトムシの作ったシュラウド……てところかな」
雪華綺晶「インテリぶった比喩は貴女の趣味でしょうに、蒼薔薇のお姉様」
17 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:49:35.69 ID:tS9k0vWW0
翠星石「さてさて、まだまだ余裕ぶっているようですが、それも今だけです」
雛苺「お経のナワは序の口なのよ!」
真紅「当然、これからあなたを拷問にかけるわけだけど」
蒼星石「覚悟はできてるかな、雪華綺晶」
翠星石「おじじを返すなら今のうちですよ!」
雪華綺晶「……」
真紅「どうあっても、しらばっくれるつもりね。よし、ジュン! 始めて頂戴」
ジュン「それでは、コホン! 南無大慈大悲救苦救難……」
雪華綺晶「ぎゃあああ!」ブシュウウウウウ
雛苺「す、すごい効き目なの!! 雪華綺晶から変な煙が出てるのよ!」
翠星石「『ぎゃあああ』なんて白薔薇が叫ぶのも初めて聞いたですぅ」
真紅「なんちゃって幽霊の雪華綺晶には、さぞ辛いでしょうね」
18 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:50:29.79 ID:tS9k0vWW0
ジュン「広大霊感観世音菩薩 摩訶薩南無仏 南無法……」
雪華綺晶「ひぃいいい!」ブスブスブスブス
蒼星石「それにしても想像以上の効果だ」
翠星石「翠星石もびっくりですぅ。
チビ人間のお経なんて適当以外の何物でもないはずですのに……」
ジュン「ぬ〜べ〜を愛読していた僕を舐めるな。アニメ版の方のお経だって言えるんだぞ」
真紅「はいはい」
19 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:50:32.88 ID:IsGNZMNi0
お経効くのかwwwwwwww
20 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:51:33.73 ID:tS9k0vWW0
雪華綺晶「う……くく……」ぷしゅ〜
真紅「大分お経攻撃がこたえたようね白薔薇」
雛苺「いい加減におじいちゃんを返すのよ!」
雪華綺晶「ですから……本当に私はやってません……」
蒼星石「後ろの壁のシミの数まで数えられるほど体が透けてきてるというのに
まだ白を切るつもりか雪華綺晶」
ジュン「それじゃ読経を再開するぞ?」
21 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:53:14.92 ID:tS9k0vWW0
ホーリエ「……ッ!」ばひゅーん
レンピカ「……ッ!」ばひゅーん
スィドリーム「……ッ!」ぴゅ〜
べリーベル「……!」へろろ〜ん
雪華綺晶「?」
ジュン「!? なんだ人工精霊達が!? どっから出てきた?」
翠星石「しかも、白薔薇を守ろうとしているです!?」
蒼星石「レンピカ!? 人工精霊の君達には、僕達が雪華綺晶を尋問している間に
nのフィールドでのマスターの捜索を頼んだはず……!」
レンピカ「……ッ! ……ッ!!」
真紅「結菱一葉を見つけたですって!? どこで!?」
ホーリエ「……ッ!!」
真紅「記憶の海!? しかも幽霊船に乗ってたぁ!?」
翠星石「ゆ、幽霊船ってどういうことですか!?
記憶の海にそんなのが出るなんて聞いたことないですよ!!」
22 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:55:00.17 ID:tS9k0vWW0
雪華綺晶「それはメメントリオンですわね」ぶらーん
雛苺「めめん?」
真紅「とりおん?」
雪華綺晶「……知りたいのなら、この縄をほどいてください」ぶらーん
蒼星石「わ、分かった! 今、縄を切る」チョッキン
雪華綺晶「あと、冤罪だったのですから、謝罪もしてください」すたっ
翠星石「メンゴメンゴですぅ」
雪華綺晶「いまひとつ心がこもっていませんが、ま、いいでしょう」
ジュン「いいんだ。アメリカだったら人生2〜3回詰むぐらいの
賠償金を求めての訴訟を起こしてもおかしくないくらいだぞ」
23 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:55:40.74 ID:tS9k0vWW0
翠星石「それより、そのエヴァンゲリオンってのは何です?」
雪華綺晶「メメントリオンですわ、翠のお姉様」
蒼星石「レンピカ達がマスターを見つけた幽霊船が、それなのか?」
雪華綺晶「はい。メメントリオン(mementolion)つまり『記憶食い』の名が示す通り
記憶の海に現れては、人々の記憶や心、精神を食い荒らす
nのフィールドのモンスターです」
雛苺「そんな怖いのがいるなんて知らないのよ!?」
真紅「nのフィールドは広大だわ」
24 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 22:58:07.98 ID:tS9k0vWW0
雪華綺晶「私もメメントリオンの全てを知っているわけではないのですが
その怪物はヤドカリのような生態で
先ずは自分の住処と鎧を兼ねる船の記憶を奪います」
ジュン「船の記憶? なんだそりゃ」
雪華綺晶「記憶が宿るのは人ばかりではありません。
機械や建造物にだって心や精神は存在します」
ジュン「本当かよ? にわかには信じられない……が
お前達ローゼンメイデンが存在するんだ。さもありなんってところか」
雪華綺晶「ただし、メメントリオンは非常に弱いモンスターで
船であろうと人であろうと、死んだ存在しか
その心を食べることが出来ないとされています」
雛苺「うゅ? どういうこと?」
真紅「現実世界の船を沈めたり、人を殺したりするような力までは無いということよ」
翠星石「あくまで、沈没船や死人の心を自分の糧としているということですね」
蒼星石「でも、そうだとしたら今回の僕のマスターの事例は……!?」
雪華綺晶「はい。若干、今までのメメントリオンとは異なる行動と言えますわ。
しかし何事にも例外や不測の事態というのは起こるもの。
それに先ほども言った通り、私の知っていることがメメントリオンの全てでもない」
25 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:00:07.92 ID:tS9k0vWW0
ジュン「……結菱さんを助ける方法は!?」
雪華綺晶「あります。メメントリオンはエサを捕まえても
その消化には100年単位を要します。完全に心を溶かされる前に
記憶の海を漂うメメントリオンから結菱一葉を連れ戻すのです」
真紅「要は力ずくで取り返せってことね。分かりやすくていいことだわ」
翠星石「セメントだかモメンドウフだか知らないですが
蒼星石のマスターである、おじじに目をつけたのが運の尽きです。
ぎったんぎったんにしてやるですよ!!」
蒼星石「相手がモンスターとは言え、必要以上に痛めつけるつもりはないさ。
僕はマスターさえ無事で取り返せれば、それで……」
雪華綺晶「私、必要以上に痛めつけられてませんでした?」
蒼星石「ただ、マスターが怪我でもしてたら
自分でも何をするか分からないけどね」シャキンシャキン
翠星石(ハサミをチョキチョキさせながら
蒼星石が呟くのは、かなり頭に血が昇っている証拠ですぅ……)ひそひそ
ジュン(メメントリオンのためにも結菱さんを無事に取り返さないとな)ぼそぼそ
26 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:02:13.86 ID:tS9k0vWW0
★数十分後・記憶の海岸線
翠星石「スィドリーム達がアメンホテプを見つけたのは、ここの沖合だそうですが」
雪華綺晶「メメントモリですってば。しかし……」
真紅「やはり移動しているようね。どこにも見当たらないのだわ」
雛苺「またベリーベル達に探してもらう?」
蒼星石「人工精霊達は先の捜索で結構疲れてしまっている。
出来れば、これ以上の無理はさせたくないけど」
雪華綺晶「そのためにも私が水先案内人としてついて来たのですわ、お姉様方」
ジュン「雪華綺晶? 海に入って何を?」
雪華綺晶「私のお友達を呼びます」
真紅「お友達?」
翠星石「お前、友達なんていたですか?」
蒼星石「とても友達が出来るタイプには見えないんだけど」
雛苺「食堂でも席が見つからなくて立ったまま食べるぐらい不器用っぽいの」
雪華綺晶「ここぞとばかりに言いたい放題ですわね……と、来ましたよ」
27 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:03:35.90 ID:tS9k0vWW0
ジュン「来たって……?」
真紅「海よ! 海から何か来る!?」
サメA「しゃーく!!」ざばば
サメB「しゃーく!!」ざばば
ジュン「げぇっ! ジョーズ!?」
雪華綺晶「いえ、ジョーズ(ホオジロザメ)ではありません。シロワニです」
ジュン「どっちでもいいよ!! 人食い鮫なことには変わりないだろ!!」
蒼星石「シロワニは人を襲わないよ。
ホオジロザメだってわざわざ人間を狙って食べるわけでもないし」
真紅「でも、雪華綺晶は人食い薔薇を飼ってたわよね?」
雪華綺晶「さあ、そうでしたっけ?」
28 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:06:26.29 ID:tS9k0vWW0
翠星石「人は襲わないって言われてても、海で泳いでて
こんなのが近づいて来たらションベンちびるですよ……」
雛苺「このサメさん達が雪華綺晶のお友達なの?」
雪華綺晶「如何にも。海のことなら海の者に頼るのが一番ですわ。
では、早速ですがサメさん、私達はここの沖合にいた
メメントリオンを探しているのですが、ご存知でしょうか?」
サメA「しゃーくしゃーく!」
サメB「しゃくしゃーく!!」
雪華綺晶「なるほど」
ジュン「なんて言ってるんだ?」
雪華綺晶「A『御存知もリア・ディゾンもあるめーよ、てやんでぃバーロー』
B『さっきまでそこに居座ってたから、怖くて海底の隅で震えて
タコノマクラ(※)を涙で濡らしてたぜコンチクショー』……とのことです」
ジュン「全訳しなくていいから、かいつまんで教えてくれ」
翠星石「て言うか、図体はでかい割に肝っ玉の小さいやっちゃですねぇ」
蒼星石「シロワニは基本的には臆病でおとなしいサメだからね」
※タコノマクラとはウニの一種
29 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:07:32.10 ID:ulzbFWM/0
サメwww
30 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:08:00.53 ID:tS9k0vWW0
真紅「で、グラビア界の黒船リア・ディゾン……じゃなかった
幽霊船メメントリオンは何処へ行ったの?」
雛苺「リア・ディゾンがどこ行っっちゃったかも気になるけど
今はメメントリオンの方が大事なのよ!」
ジュン「そうだな。リア・ディゾンの現在に興味は尽きないが
結菱さんの安全確保の方が優先だ」
雪華綺晶「リア・ディゾンにそこまで食いつかれても困ります。
……と、サメさん? メメントリオンは今、何処か分かります?」
サメA「しゃしゃーく!」
サメB「しゃーくっく!」
雪華綺晶「メメントリオンは今、別の海域の沖で停泊しているそうです。
また、リア・ディゾンはハッスルでハードゲイと戦っているそうです」
ジュン「それインリン・オブ・ジョイトイだろ、しかも随分と昔の」
31 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:09:50.91 ID:tS9k0vWW0
真紅「……メメントリオンは結局、大海原にいるのよね」
蒼星石「そこまで、どうやって行けばいいんだろうか?」
ジュン「泳ぐのはちょっと無理だな。
ただでさえ冷たい海な上に、記憶の海水は心に沁みる」
サメA「しゃーくしゃく!!」
サメB「しゃしゃしゃーく!」
雪華綺晶「良ければ自分達の背に乗りませんか? と言ってますが」
ジュン「油断させといて海の真ん中で僕らの皮を剥いで食べようってんじゃないだろうな」
雛苺「ヒ、ヒナは球体関節とかが歯にはさまるから、きっと美味しくないのよ!!」
雪華綺晶「因幡の白兎じゃあるまいし、このサメさん達はそんなことしませんわ」
蒼星石「他にいいアイデアもないし、今は時間が惜しい。ここはサメさんの好意に甘えるか」
真紅「そうね」
翠星石「マ、マジですか……」
雪華綺晶「では庭師の双子と私はこちらのサメさんに乗りますので
紅薔薇のお姉様達はそちらのサメさんにお願いしますわ」
32 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:12:11.46 ID:tS9k0vWW0
サメA「しゃしゃしゃしゃーっく!」ザババババ
雛苺「うわーい。サラマンダーよりはやーいのー」
ジュン「はしゃぐな、雛苺! 海に落ちるぞ!」
真紅「でもサメ肌だから案外、滑り落ちにくいのだわ」
サメB「しゃーしゃっしゃっしゃ!」ザババババ
蒼星石「イルカやシャチには乗ってみたいと思ってたけど
まさかサメに乗ることになるとはね」
翠星石「おじじの安否が不明な今じゃ、楽しむゆとりもないですぅ」
蒼星石「それもそうだけど、イルカやシャチは哺乳類だけどサメは魚類だし」
翠星石「そこは拘りのポイントなのですね」
雪華綺晶「ほらほら、見えてきましたよお姉様方。あれがメメントリオンです」
33 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:14:48.31 ID:tS9k0vWW0
幽霊船「……ゴオオオオオオオオオオ」
真紅「あれが……!」
翠星石「トリートメント……!!」
蒼星石「メメントリオン」
雛苺「この『ゴオオオオ』って音は何なの? 怖いのよ」
雪華綺晶「元が沈没船ですから、あちこちに穴が開いているのです。
通り抜ける風が船体内に反響して鳴っているのですわ」
ジュン「まるで死霊の呻き声みたいだな」
雪華綺晶「外観の特徴も、ベリーベル達が見た船と相違なさそうです。
結菱一葉は……あの中にいます」
35 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:17:05.23 ID:tS9k0vWW0
ジュン「で、近づいてきたのはいいが、どうやって乗り込むんだ?」
雪華綺晶「今も言いましたとおり、メメントリオンの船体は穴だらけです。
船底かそこらの穴から中に進入しましょう」
翠星石「いきなり強行突破ですか?
その前に白薔薇! お前が偵察なりなんなりしてこいですぅ」
真紅「そうね。雪華綺晶なら
ふわふわ〜と飛んだり壁抜けできるからうってつけなのだわ」
雪華綺晶「白衣観音経のダメージが思いのほか深くて、上手く飛んだりできないのです」
ジュン「マジでか」
36 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:21:06.68 ID:tS9k0vWW0
雪華綺晶「では、もっと近づいて中に入れそうな穴を探しましょう。サメさんお願いします」
サメA「しゃーく!」すぃー
サメB「しゃしゃ!」すぃー
翠星石「むむむ……?」
蒼星石「どうかしたのかい翠星石?」
翠星石「いや、この船……どっかで見たような気が……?」
ジュン「翠星石もか? 僕もなんとなくだけど見覚えがあるような」
雪華綺晶「……元は名のある客船とかだったのもしれませんね」
真紅「ひょっとしてタイタニック号とか?」
雛苺「ディカプリオがいるかもなのよ!?」
蒼星石「まさか。ボロボロなのは確かだけど、そこまで古い時代の船でもなさそうだ」
37 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:23:41.98 ID:tS9k0vWW0
★メメントリオン・船腹
雪華綺晶「……どうやら、この穴からなら中に行けそうですわ」
サメA「しゃーくっく!」
サメB「しゃーく!!」
雪華綺晶「はい。では、帰りの時は、またよろしくお願いしますわ」
サメA「しゃしゃーく」ざばば
サメB「しゃーしゃっ」ざばば
ジュン「どこに行ったんだ? あのサメ達は」
雪華綺晶「また私が呼ぶまで、海底で友達のサンマと三人麻雀(サンマ)しているそうです」
ジュン「ああ、そう」
雪華綺晶「これが本当の海底摸月……なんちゃって」
ジュン「みんな、先を急ぐぞ」
38 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:25:41.48 ID:tS9k0vWW0
★メメントリオン・船倉
真紅「ついに幽霊船潜入作戦開始ね」
雛苺「金糸雀が好きそうなシチュエーションなのよ!」
蒼星石「慌てて出発したから金糸雀や水銀燈は呼べなかったけど……」
翠星石「金糸雀は兎も角、水銀燈は呼んでおくべきだったですかね?」
ジュン「あいつは敵だとウザいけど、仲間だと心強いからな」
雪華綺晶「今さら、そんなことを言っても始まりませんわ。
それにメメントリオンは見た目こそ巨大な威容ですが
シロワニさん達のように大人しく弱いモンスター」
真紅「それが本当なら、腹の中を私達のような異物が歩きまわっても
さしたる抵抗は無いと予想できるわね」
翠星石「そうであればいいのですが……なんにせよ
おじじを早いとこ救出しなくてはならんことに違いはないです」
蒼星石「マスター、もうしばらくの我慢を。今すぐ助けるから……!」
39 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:27:36.50 ID:tS9k0vWW0
骸骨A「ところがぎっちょん!」ガチャンッ
骸骨B「思い通りにならぬのが、この世の理!」ガタッ
骸骨C「俺っちたちの住処に土足で入ろうたぁ、ふてぇ野郎どもだ!」カタタッ
ジュン「ッ!?」
雛苺「ガ!」
真紅「ガガ……ガ!?」
翠星石「ガオガイガー!? ……じゃなくて」
蒼星石「ガイコツ!!」
雪華綺晶「そんな馬鹿な!?」
骸骨A「出会いがしらで失礼! 如何にも我らは骸骨、おまけに海賊」
骸骨B「しかもメメントリオンを外敵から守る用心棒。または雑用係とも言う」
骸骨C「密航者いや不法侵入者ども! 覚悟は出来ておるな!!」
ジュン「うわわわわわわ! 骸骨だ! 海賊だ! 本物だ!!
映画やゲームで見たのとまるっきり同じだよーっ!!」ドタバタ
40 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:29:07.46 ID:tS9k0vWW0
真紅「落ち着きなさいジュン!」
ジュン「ここっこ、これが落ち着いていられるか!? ガイコツだぞガイコツぅ!!」
骸骨A「いいね、いいねぇ、そのリアクション。お化け冥利に尽きるってもんよ」
骸骨B「たっぷりと可愛がってやるぜ……!」
蒼星石「ま、待って下さい! 勝手にメメントリオンに忍び込んだことは謝ります!」
骸骨C「む?」
蒼星石「僕達はメメントリオンに精神を囚われた人間を救うためにここへ来ました!」
骸骨A「知ってるぜ。結菱一葉だろ?」
翠星石「え!?」
41 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:31:42.03 ID:tS9k0vWW0
骸骨B「ついでに言うならお前達のことも知っている。
『あの方』に教えてもらったからな、真紅に雛苺、翠星石に蒼星石、雪華綺晶
そして桜田ジュン……だろ?」
雛苺「ど、どうしてヒナ達のことも知ってるの!?」
雪華綺晶「あの方……とは誰です?」
蒼星石「それよりも、僕達のことまで知っているのなら話は早い!
マスターを、結菱一葉を返してください! なら、すぐにでも出ていきます!」
骸骨C「残念がら、はいそうですか、とはいかねぇな。
一葉は俺達の大切なお客さんだからよ」
骸骨A「だが、会わせてやることはできるぜ。メメントリオンの腹の底で、だがな!!」
骸骨B「なに、おとなしくしてりゃ痛い目には遭わないさね!!」ガバッ
骸骨C「ひゃっはーっ!!」ダダダダッ
ジュン「うわわ! 襲いかかって来るぅ!?」
42 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:32:58.95 ID:tS9k0vWW0
真紅「く! 仕方ない強行突破よ!」
翠星石「ええい! やってやるです!!」
蒼星石「真紅は右! 翠星石は左! 僕は真ん中を片付ける!!
雛苺と雪華綺晶はジュン君を!!」
雛苺「うぃ!」
雪華綺晶「分かりました! 片付けます!!」
ジュン「守るんだよ!!」
43 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:35:15.71 ID:tS9k0vWW0
真紅「ローズテイル!!」
骸骨A「あじゃぱー!!」ドカーン
翠星石「如雨露殺法・二の太刀『地摺り正眼』!!」
骸骨C「ぎえぴーーっ!!」バコーン
蒼星石「閂枝剪定!!」
骸骨B「あばらばらばーーっ」ドンガラガッシャーン
雛苺「やったのよ!」
雪華綺晶「流れるような攻撃。流石ですわお姉様方!」
骸骨A「て、てめえらよくも!!」カチャカチャ
骸骨B「骸骨じゃなきゃ死んでたよ!」ゴキンゴキン
骸骨C「正確には、もう死んでるけどな俺達」ガココ
ジュン「げ! 骨が元に戻ってくぞ!」
44 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:36:07.27 ID:tS9k0vWW0
真紅「埒が開かないわ! ここは逃げるわよ!」
蒼星石「そうしよう! 走れるかいジュン君!?」
ジュン「ああ、僕なら大丈夫だ!! しかし、どっちへ逃げる!?」
雪華綺晶「僅かながら、生命体と思われる反応をあちらの方向から感じますわ。
おそらく結菱一葉かと……!」
翠星石「よし全力で逃げるですよ! チビ苺も遅れるなです!」
雛苺「はいなの!!」
45 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:38:39.94 ID:tS9k0vWW0
★メメントリオン・船内通路
ジュン「しかし何者だったんだ、あのガイコツ達?」
雪華綺晶「分かりません。元々はメメントリオンに捕らえられた死者だと思いますが。
……あ、みなさん、船内はどこも朽ちて脆いですし
穴ボコだらけなので足元にはご注意を」
翠星石「……食べられずに、そのままここに住みついちゃったんですかね?」
真紅「メメントリオンを守る……と言ってたわよね」
雪華綺晶「ヤドカリが貝がらにイソギンチャクを用心棒として
くっつけることならありますが……」
雛苺「メメントリオンも同じことを? でも弱〜いヨウジンボウさんだったのよ」
翠星石「翠星石達に簡単にやられちゃっていたですしね」
蒼星石「確かに。自分達を海賊だとも言っていたが、それにしては随分と
骨の細いガイコツ達だった。そして何よりも気になるのは……!」
46 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:39:58.06 ID:tS9k0vWW0
ジュン「僕達のことを知っていた。しかも『あの方』って誰のことだ?」
真紅「こういった展開パターンだと大概の白幕、いえ黒幕は雪華綺晶だったんだけど」
翠星石「白薔薇はここにいるですし」
蒼星石「ということは、黒幕は誰だ? 僕達のことを知っていて
ガイコツ達に入れ知恵できる人物……?」
雛苺「むぅ〜?」
骸骨D「あ、おい! いたぞ! こっちだ!!」ドタドタ
骸骨E「間違いない! ローゼンメイデンだ! やっぱりこっちに来てやがった!」バタバタ
骸骨F「よっしゃ俺に任せろ!!」ガヤガヤ
骸骨G「いーや! あいつらを捕まえるのは俺だ!!」ダバダバ
翠星石「げげげ、新手のガイコツ達です!!」
蒼星石「ちっ! やはり、あの三人だけじゃなかったか!!」
47 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:40:40.22 ID:tS9k0vWW0
ジュン「どうする!?」
真紅「まともに相手すると消耗するだけなのだわ!」
蒼星石「できるだけ、戦闘は避けながら
雪華綺晶が生命反応を感じた所に向かおう!」
雪華綺晶「こちらですわ! お姉様方!」
ジュン「しょうがない! また走るか!!」
雛苺「レッツらゴーなのよ!!」
48 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:42:09.11 ID:tS9k0vWW0
★メメントリオン・甲板
ジュン「はぁはぁ……な、なんとか逃げて来たのはいいが……!」
雛苺「外に出ちゃったのよ」
真紅「こっちで方向は合っているの白薔薇?」
雪華綺晶「ええ、間違いありませんわ」
蒼星石「ああ。ここまで来れば僕でもマスターの生命波動を感じる。
あそこだ。あの部屋の中にマスターがいるのを感じる」
翠星石「操舵室……ですか!」
雪華綺晶(しかし、何かがおかしい。ガイコツ達の追跡が途中で急に緩んだ。
まるで私達に、ここへと来て欲しかったように……?)
ジュン「っ!? 操舵室の扉が開く? 誰か出てくるぞ!!」
翠星石「ひょっとして、おじじ!?」
49 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:44:53.93 ID:tS9k0vWW0
骸骨H「……」ガシャンガシャン
真紅「結菱一葉……では、なさそうね」
雛苺「いくらおじいちゃんでもガイコツになるにはまだ早すぎるのよ」
骸骨H「……」ピタリ
蒼星石「……船長とお見受けします」
骸骨H「何故……そう思う?」
蒼星石「ジャック・スパロウみたいな海賊帽を被ってらっしゃる」
骸骨H「ははは。なるほど、これか。たまたま海に浮かんでいたのを拾って
気に入ったから被っているだけなんだが……」
蒼星石「それと……なんとなくですが、貴方の立ち居振る舞いには気品を感じる」
骸骨H「世辞だとしても嬉しいね。しかし僕は船長ではない。
敢えて言うなら船長代理補佐心得……てところかな」
翠星石「な、なんですか、そりゃ!? 翠星石達をからかっているのですか!?」
50 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:46:56.70 ID:tS9k0vWW0
骸骨H「からかっているわけじゃない。君達も知っての通り
この船の今の支配権はメメントリオンが握っている。
しかも、この船の本来の船長に到っては、とうの昔に成仏している」
雪華綺晶「では、あなた達は何なのです? 根っからの海賊には見えませんし
メメントリオンに捕らわれ、消化の時を待つだけの囚人にも見えない」
骸骨H「消化? ふむ、なるほど。
君達が血相を変えて……一葉を救いに来たのはそういうことか」
蒼星石「やっぱり……居るんですね? その奥の部屋に」
骸骨H「ああ。しかし彼はまだ帰る気は無いようだよ?」
蒼星石「戯言を!!」
骸骨H「逸るな。周りをよく見ろ蒼星石」
蒼星石「ッ!?」
骸骨達『ワー! ワー!』
雛苺「ガイコツさん達が一杯なのよ!!」
雪華綺晶「……囲まれてますね」
51 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:48:42.93 ID:tS9k0vWW0
骸骨達『ワー! ワー!』
翠星石「ワーワー言っとるですぅ……」
蒼星石「くっ!」
骸骨H「ここで提案だが蒼星石、僕は君との果し合いを所望する」
蒼星石「な!?」
骸骨H「君の事は話にはよく聞いている。本当に話どおりの人物か、剣で確かめたい」
ジュン「おいおいおい……」
蒼星石「僕が応じるとでも?」
骸骨H「君が勝てば一葉を返す」
蒼星石「……!! 保証は?」
骸骨H「僕は嘘が嫌いだ」
蒼星石「……みんなと相談したい」
骸骨H「認める」
52 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:50:40.89 ID:tS9k0vWW0
真紅(ちょっと蒼星石!? 本当に決闘に応じるつもり?)
翠星石(時代錯誤も甚だしいですよ!? あのキャプテンモドキは!)
蒼星石(僕だって100%信じているわけじゃない。だけど、僕が彼と戦っている間は
周りのガイコツだって手を出してこないはずだ)
ジュン(だといいがな)
蒼星石(そこで僕は戦いながら、あの船長代理補佐心得を操舵室から遠ざける。その隙に……)
雛苺(おじいちゃんを助けるのね)
蒼星石(ああ。マスターを保護したら、そのまま海に飛び込んでくれ。僕もすぐ後を追う)
雪華綺晶(分かりました。武運を、蒼星石)
蒼星石(君達も)
53 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:52:07.85 ID:tS9k0vWW0
蒼星石「話は決まった! 僕は果し合いに応じる」
骸骨H「グッド!」
蒼星石「……折角だ。戦う前に君の名前も聞いたい」
骸骨H「それも、僕に勝てたら教えてあげよう」
蒼星石「ならば切る!」ダッ
骸骨H「おっと」ガキン
蒼星石「……!」
骸骨H「随分と気が早いな。踏み込みも浅い。そんな奴だったとは聞いてないぞ?
マスターの命が心配だと、本来の自分を出せないのか?
それともこっちが素の自分で、マスターの前では猫を被っているのかな?」
蒼星石「戦いの最中にベラベラと!!」
54 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:53:39.54 ID:tS9k0vWW0
翠星石「確かに蒼星石らしくないっちゃあ、らしくない攻撃ですぅ……」
真紅「不用意すぎる斬り込みなのだわ」
雪華綺晶「相手が達人だったら、今の隙で完全に返り討ちにあってましたわ」
ジュン「大丈夫なのかよ……あいつ」
雛苺「それは多分ダイジョーブなのよ」
ジュン「へ?」
蒼星石「でやっ! とりゃ! はっ!」
骸骨H「ほっ! ほっ! ほっ! やるねぇ。
だが足元が覚束ないぞ! この腐った甲板、思うようには踊れないかい!?」
蒼星石「……く」
55 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:55:21.17 ID:tS9k0vWW0
真紅「足場に慣れてない、不利な今の状況で蒼星石と船長代理補佐心得は互角」
雪華綺晶「いずれ蒼薔薇のお姉様が圧倒し始めるはずです」
雛苺「そうなのよ! 本当の蒼星石はもっともっと強いんだから!」
翠星石「それに、あのキャプテンモドキはキザったらしいくせに
強さは他のガイコツ達と変わりないですぅ。
剣を持ってるから厄介なだけで、素手だったら全然ダメダメっぽいです」
ジュン「え、そうなんだ……」
蒼星石「もらった!!」ヂョキーン
骸骨H「ぬ!? しまった! 剣を!?」ポッキリ
ジュン「やった! 奴の剣を鋏でちょん切ったぞ!!」
真紅「これで蒼星石の勝ちは決まったも同然ね」
56 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:56:59.21 ID:tS9k0vWW0
翠星石「隙を突いておじじを救出するまでもなかったですね」
雪華綺晶「それは相手が約束を守れば……の話ですわ」
骸骨達『ワーワー!』
翠星石「……ガイコツ達は変わらずワーワー言ってるだけで観戦中ですよ」
雛苺「きっと約束どおり、おじいちゃんを返してくれるの!」
真紅「それはどうかしら? あの船長代理補佐心得はまだやる気みたいだわ」
骸骨H「あーあ。この剣もお気に入りだったのにな」
蒼星石「その剣……装飾用でしょ? 実戦にはとても耐えられない」
骸骨H「そこまでお見通しか」
蒼星石「勝負はついた。マスターを返してもらおう」
57 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/23(月) 23:59:24.05 ID:tS9k0vWW0
骸骨H「思い込む……とは何よりも恐ろしいことだ」
蒼星石「!?」
骸骨H「しかも自らの能力を優れた物だと過信している場合はさらにタチが悪い」
蒼星石「この期に及んで減らず口を」
骸骨H「さて蒼星石、君が僕の剣を刈ろうと狙っていたのは知っていた。
僕が右手に持っている、この剣をね」
蒼星石「……?」
骸骨H「剣が挟まれた瞬間、君の意識は僕の右手と剣だけに集中した。
その時を狙えば、いくら戦いの素人の僕でも君の虚をつく事はできる」
雪華綺晶「船長代理補佐心得の左手がない!?」
翠星石「いつの間にか切り離していたですか!」
真紅「まずい! 奇襲よ! 蒼星石、気をつけて!!」
蒼星石「下か!?」
骸骨H「気づいた時には、もう遅い」
58 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:01:48.61 ID:5/HGMEYF0
蒼星石「しまっ……! 足を掴まれ……!?」
骸骨H「足場に慣れたのは結構だが、やはり一日の長は僕にある。
この甲板に空いた穴がどこでどう繋がっているかまで僕は知り尽くしている。
僕の長話を聞いてくれてたお陰で、なんとか左手をそこまで移動させることも出来た」
蒼星石「……腕を切り離すなんて、痛みを感じてないのか」
骸骨H「ま、骸骨だからね。それはそうと、動けない君が相手なら
この折れた飾りの剣でも、まだ役に立つと思うけど、どうかな?」
蒼星石「なるほど。それじゃあ、君が掴んだのは
僕の本当の足ではないことにも感付いてないか」ぴょんっ
骸骨H「え!? 馬鹿な! 足は掴んでいるはず! 動けるはずは!!」
蒼星石「君が大喜びで掴んだ足は……長靴にその辺の砂や木片を詰めた物なんだよ。
戦いながら君の意識が僕の足に集中していたのには気づいていた。
ただ、腕を切り離してくるとまでは流石に予想しなかったけど」
骸骨H「戦っている間に、長靴に詰め物を……!? そんな素振りは……? まさか!?」
蒼星石「そう。この腐った甲板には随分と足を取られた。そのついでにね」
骸骨H「転んでもただでは起きない……か」
60 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:03:27.71 ID:5/HGMEYF0
骸骨達『ちくしょー! 蒼星石が長靴さえ履いてなければ!』
骸骨達『せめて! せめて奴の足首が掴めるブーツだったら!』
骸骨達『て言うか、あいつ長靴の下にも普通のブーツ履いてるぞ。なんでだ?』
骸骨H「……完敗だ。やはり君は話どおりの素晴らしい人物。約束どおり一葉は返そう」
蒼星石「!?」
骸骨H「何を驚いている? 僕が約束を反故にするとでも?」
蒼星石「い、いや。そういうわけでは」
骸骨H「……僕の名前は結菱二葉だ」
蒼星石「なっ!?」
真紅「なんですって!?」
骸骨H「いつまでの骸骨の姿を晒すのも失礼か。
亡霊には変わりないが生前の顔を見せるとしよう」ボフンッ
雛苺「あ、顔が人間になったの」
二葉「あくまで見た目が変わっただけだよ雛苺ちゃん。
実質は先ほどまでの醜い骸骨と変わらない」
ジュン「そ、そんなことより二葉って……結菱さんの!?」
61 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:05:20.07 ID:5/HGMEYF0
翠星石「双子の弟ですよ!! 確か……外国の女と駆け落ち中に船が沈没して死んだ」
ジュン「……てことは、ひょっとしてこの船は!?」
二葉「いかにも。この船はダイナ号の記憶が元となっている」
ジュン「ダイナ号!? そうか! 見覚えがあると思ったらやっぱり!
ネットで沈没の事故を調べた時に写真が載ってた!!」
雪華綺晶「……もう一つ聞きたいことがあります。
あなた達に私達のことを教えた『あの方』とは」
一葉「それは多分、私のことだろう」てくてく
蒼星石「マ、マスター!?」
二葉「兄さん。もう出てきたのかい」
一葉「何が『もう出てきたのかい』だ、馬鹿者が。
ちょっと蒼星石達を驚かせるだけだと言うから黙って見てれば……」
二葉「だったらもっと早く止めに出てきなよ。何だかんだ言っても
兄さんは僕の兄さんだ。自分だって楽しんでたんだろ?」
一葉「む……それはまあ、その……」
62 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:08:18.59 ID:5/HGMEYF0
蒼星石「マスター! 無事ですか!? お怪我は!?」
一葉「大丈夫だ。随分と手荒にここに運ばれはしたが、擦り傷一つ無い」
二葉「ごめんごめん。メメントリオンを説得して
兄さんを呼ぶ手筈は整ったんだけど、肝心のフィールド間を繋ぐ扉を
開けていられるのが本当に短い間だけだったもんでさ」
一葉「オマケに骸骨の姿でいきなり現われて、引きずり込みおって。
お前と違って私はもう年なんだ。ショック死するかと思ったぞ」
二葉「死んだら僕達と一緒に、ここで暮らせばいいじゃないか」
元骸骨A「ああ、二葉さんの御兄弟ってんなら歓迎するよ」
元骸骨B「全くですわね」
一葉「ふん。急かされなくても、いずれちゃんと死んでやる」
ジュン「ほ、他のガイコツ達も人間の姿に戻ってる?」
翠星石「うわあ、どいつもこいつも育ちの良さそうな顔してやがるです」
真紅「最初からその姿だったら、とても海賊とは思えなかったわね」
ジュン「て言うか、女性もいたのか。全然、分かんなかった」
雪華綺晶「ひょっとして彼らは皆、ダイナ号の」
二葉「皆ではないが殆どはそうだ。乗客あるいは乗組員。船と一緒に死んだ……ね」
63 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:10:42.03 ID:5/HGMEYF0
雪華綺晶「そしてメメントリオンに船もろとも心を捕食された」
二葉「そういうことだ」
翠星石「じゃ、じゃあ二葉達は、みんなメメントリオンに消化されちゃうって事ですか!?」
二葉「そこのところだが、どうもお互いメメントリオンに対する認識の違いがある」
真紅「認識の違いと言われても、私達はそもそもメメントリオン自体知らなかったのだわ」
雪華綺晶「死人の記憶と精神を100年単位で消化するモンスター……としか」
二葉「間違ってはいないが、それはメメントリオンをあまりに単純化しすぎている」
雪華綺晶「と言うと」
二葉「ダイナ号で死んだ全ての人がメメントリオンに捕らわれたわけではない」
雛苺「うゅ?」
元骸骨C「ここにいる死人達には、そんなことよりも重要な一つの共通点があるんだな」
蒼星石「共通点?」
二葉「大なり小なり、罪の意識を持ったまま死んだ者達だ」
ジュン「罪……?」
64 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:15:12.74 ID:5/HGMEYF0
二葉「バク……という空想上の動物がいるだろう? 悪夢を食べるっていう」
雪華綺晶「メメントリオンも……罪悪感の記憶だけを食べると?」
二葉「『記憶食い』と言われるけど、僕達の記憶を食べて消してくれるわけじゃない。
考える時間を与えてくれるだけさ。罪の懺悔か、あるいは罰としての投獄かは分からないが」
真紅「それじゃあまるで、記憶の消化ではなく……浄化!?」
二葉「そうとも言える。自分の罪に、いきなり途切れた人生に……納得をつけた奴から
ふわっと昇天して行っちゃうのさ。そりゃ、いい顔して逝ったよ、みんな」
元骸骨D「メメントリオンが、ダイナ号に引越しする前からいた占い師だったか詩人だったかが
私達にこのモンスターの存在を教えてくれたのですが
彼も真紅さんと同じようなことを言ってました」
二葉「メメントリオンは巨大な浄化機構だ。償いをせずに死んだ罪人達に報いと救いを与える。
そうしなければ犯した罪の穢れや恨みだけが澱んで残る。
そしてそれは子々孫々、あるいは無関係の者にさえ降りかかる『呪い』となる」
雪華綺晶「呪いが人を害すれば……記憶の海も穢される。
記憶の海が穢れればメメントリオンも生きていけなくなる……」
元骸骨E「そうそう。どうして『呪い』が、この海を汚すことになるんだかまでは
馬鹿な俺達には分からないんだけど、実際にこうなっちまうとさ」
元骸骨F「他に信じるものも無いことですし」
二葉「それなりに筋は通った話のように思えた。そう言ってた占い師か詩人も
その後すぐに成仏したし、他の古株たちも何人かいたが、みんな成仏していった」
65 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:16:36.21 ID:5/HGMEYF0
雛苺「ねぇねぇ? だったらどうしてフタバは、ここにいるの? 何か悪いことしたのよ?」
ジュン「やっぱり駆け落ちしたことに、罪の意識が……ですか?」
二葉「その通りだ。兄さんから彼女を奪ったし、兄さんを置いて結菱家から逃げ出した」
一葉「……」
二葉「兄さんにも彼女にも結構な迷惑をかけた事は全て聞いた。
そして蒼星石、君のお陰で兄さんが救われたことも」
蒼星石「そんな大袈裟な……」
一葉「大袈裟ではない。私は真実だけを話した」
蒼星石「マスター……」
二葉「一言謝りたいと思って、兄さんを呼んだんだが話をしているうちに
ローゼンメイデンだ何だと面白いことになってきてね。
仲間のみんなにも話を聞いてもらってたんだ。そうこうしていたら……」
翠星石「翠星石達が乗り込んできた……ですか」
67 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:19:16.27 ID:5/HGMEYF0
真紅「やれやれだわ」
蒼星石「最初からそうだと言ってくれてれば」
二葉「ははは、すまない。しかし僕達にもこの船を守るという建て前は一応ある。
メメントリオンは偉大だが脆弱な存在だ」
ジュン「そうだとしても、やっぱりやりすぎだと思いますよ僕は」
元骸骨A「俺もそう思ったけど、桜田君のビビリっぷりが素敵過ぎて、ついノリノリに」
元骸骨B「娯楽というものがありませんからね、ここには」
ジュン「……」
幽霊船「……ボオオオオオオオオオオ」ガコン
真紅「な、何!?」
一葉「船が動き出したぞ?」
二葉「我らが救い主のオネムの時間だな。
兄さんを呼ぶという僕のワガママを聞いてもらったし、疲れたんだろう。
じきにダイナ号は、メメントリオンは海に沈む」
蒼星石「え!?」
68 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:21:22.37 ID:5/HGMEYF0
元骸骨C「あ、勿論オレ達は平気なんだな。どうせ、その内また浮上するし」
一葉「二葉……!」
二葉「そんな顔するなよ兄さん。短い間だけど話せて嬉しかった」
元骸骨D「ええ、私達も一葉さんのお話が聞けて楽しかったですし」
元骸骨E「ああ。勇敢で可愛いお嬢ちゃん達にも会えた」
元骸骨F「明日にでも何人か成仏しているかもしれませんね」
元骸骨G「ボクなんて今すぐにでも……あっ」ばしゅーん
二葉「あらら、逝っちゃった」
ジュン「こんな軽いノリで成仏していいのかよ」
69 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:23:24.68 ID:5/HGMEYF0
サメA「しゃーく!」バシャシャ
サメB「しゃしゃ!」バシャシャ
サンマ「んまさー!」バシャシャ
二葉「あ、サメだ。珍しいな、どうしてこんなところに?
僕達に食べるところなんて無いはずだし……しかも何故かサンマもいる?」
雪華綺晶「友人です」
一葉「ゆ、友人……?」
雛苺「船が沈み始めたから心配して来てくれたのね」
ジュン「サンマまで」
蒼星石「マスター……急がないと」
一葉「分かってる。最後に……弟と二人だけで、もう少し話をさせてくれ」
70 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:25:26.16 ID:5/HGMEYF0
二葉「今さら畏まって言うこともないけど、それじゃ兄さん、僕は行くよ。お元気で」
一葉「お前もな……と言うのは、おかしいか」
二葉「いや、ありがとう」
一葉「……罪の意識はまだ晴れないのか? 私も彼女も、お前を恨んでなどいないのだぞ」
二葉「分かってる。あとは僕自身の気持ちの問題、納得の付け所だけだ」
一葉「そうか、ではまた……な」
二葉「うん、また」
一葉「……勘違いしているようだったから、念のためにもう一度、言ってやるがな。
私はちゃんと死ぬからな。罪の意識を抱えてメメントリオンの世話になどならん。
ここで私を待ち続けるつもりだったのなら見当違いも甚だしい」
二葉「シラフでそんな台詞、普通の人なら恥ずかしくてとても言えるもんじゃないよ。
よほどの聖人君子か、大嘘つきでもない限りね」
一葉「二葉……」
71 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:30:32.96 ID:5/HGMEYF0
二葉「しかし、蒼星石と戦って分かった。
彼女が兄さんの心の闇をメメントリオン以上に清めてくれていたことを」
一葉「……」
二葉「けれども蒼星石の中にも闇はある。それを照らすのは兄さんの役目だ」
一葉「分かっている。それが出来るまで死ぬつもりはない。ちゃんと死ぬとはそういう事だ」
二葉「なるほど。それではその時までには、僕もちゃんと死んでおくことにする」
一葉「信じていいんだな、その言葉」
二葉「当然」
72 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:31:56.29 ID:JjPNSYJ70
ジジイかっこいいよジジイ
73 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:32:09.46 ID:5/HGMEYF0
蒼星石「マスター! 早くー!! もうサンマの上しか席が残ってませんよー!」
一葉「ああ、すぐ行く! じゃあな馬鹿者、海の底で風邪引くなよ」
二葉「兄さんこそ。記憶の海の水は冷たいから気をつけな。年なんだろ?」
一葉「……ふん」
二葉(今のメメントリオンに残された力でも、兄さん達を現実世界に送り返せるんだけど
何回も馬鹿者って呼ばれてムカついたし、知らんぷりしとこっと……)
長靴を履いた蒼星石と記憶の海賊 『完』
74 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:33:03.11 ID:RC7mUTKa0
乙!!
75 :以下、名無しにかわりましてVIPがお送りします:2011/05/24(火) 00:34:34.04 ID:JjPNSYJ70
乙です
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当ブログについて
※欄444さんありがとうです。
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この記事へのコメント
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名前: 通常のナナシ #-: 2011/06/08(水) 14:53: :edit1
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名前: 通常のナナシ #-: 2011/06/08(水) 15:00: :edit当ブログについて※489に
名前: 通常のナナシ #-: 2011/06/07(火) 20:36: :edit
メールフォームにて苦情を送りましたが1日経っても何の反応もなく
通常更新を優先されているようなのでのでこちらにも書かせていただきます。
[2011/06/02] 草笛みつ、風邪を引く。
[2011/05/07] 桜田ジュン、飢蛾に遭う。
[2011/04/25] 蒼星石とメカ真紅と薔薇水晶とベス
[2011/04/14] 蒼星石と青い曼珠沙華
[2011/03/09] 水銀燈とアナザーめぐ
[2010/12/14] 薔薇水晶に微笑みを
[2010/08/23] 蒼星石と宇宙鯨
[2010/08/13] 薔薇乙女のうた『空蝉ノ影』
[2010/08/08] 虫愛づる薔薇乙女達あるいは
[2010/07/05] 幸せの蒼星石
[2010/06/28] 翠星石と秘密の基地
の作者です。該当記事を削除してください。お願いします。
タレコミの※444と※464
長靴を履いた蒼星石と記憶の海賊
銀たんと塩の柱に咲く花
の作者も私です。これもまとめないで下さい。本当にお願いします。
理由はぷん太さんのブログの諸方針に賛同できないからです。
VIPに投下していながら、勝手だとお思いでしょうが
ぷん太さんなら作者の意を尊重していただけると信じています。
作者であることの証明はメールフォームにて送った苦情の方に書いてあります。
こう書かれているにもかかわらず
何故掲載するのですか? 管理人の良識を疑います。
情報提供者にはお礼を言っておきながら
作者のことはどうでもいいのですか?
figma 魔法少女まどか☆マギカ 鹿目まどか