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東日本大震災:被災の高田高校卓球部 インターハイ出場へ

29年ぶりの快挙を成し遂げた県立高田高校卓球部=岩手県大船渡市の大船渡東高校体育館で2011年6月6日午後6時53分、金秀蓮撮影
29年ぶりの快挙を成し遂げた県立高田高校卓球部=岩手県大船渡市の大船渡東高校体育館で2011年6月6日午後6時53分、金秀蓮撮影

 津波が校舎の3階まで達し、道具もユニホームも流された岩手県立高田高校(同県陸前高田市)卓球部が今月2日、盛岡市であった高校総体県大会の男子学校対抗の部で29年ぶりに優勝した。部員たちは練習場所を貸してくれたライバル校や支援してくれた人々への感謝の気持ちを胸に、インターハイでの活躍を誓っている。

 県大会決勝の相手は昨年10月の新人戦決勝でストレート負けを喫した専大北上。これまで勝ったことがない優勝候補を相手に、選手たちは奮闘した。2-2で迎えた最終戦のシングルスで、今野文陽(ふみあき)選手(3年)が「全戦全敗中」という相手選手を3-1で降し、優勝を決めた。喜び合う部員たちの輪の中には震災で父親を亡くし盛岡市内の高校へ転校した“チームメート”佐々木将人君(同)の姿もあった。「やってくれそうな気はしていたけど……。奇跡だと思いました」。金野晋一主将(同)は振り返る。

 3月11日の大地震発生時、体育館で練習していた部員たちは全員高台へ避難した。間もなく押し寄せた津波は、自分たちの学びやも容赦なくのみ込んだ。部員は身を寄せ合い毛布にくるまって、夜を明かした。

 震災後は部活動どころではなかった。「大会、あるのかな」。部員たちは不安を打ち消すように声をかけ合い、卓球台がある部員の自宅で練習を始めた。

 自宅が流された伊藤仁士監督(38)も練習場所を探し始めた。市内の公民館や体育館は避難所や遺体安置所、救援物資の倉庫になっていた。やっと見つけたのが、隣接する大船渡市の地区公民館。十分な広さはなかったが、本格的な練習を再開できた。今は県立大船渡東高校体育館の半分を借りて練習に励んでいる。

 「インターハイ出場は入学当時から掲げていた目標。震災を理由に負けるのは嫌だった」と今野選手。伊藤監督は「津波で練習場所は失ったが、選手たちの気持ちは残っていた」と語る。苦境を乗り越えた12人の部員たちは「全国8強」という新たな目標を掲げている。【金秀蓮】

毎日新聞 2011年6月8日 10時19分(最終更新 6月8日 10時27分)

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