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ドイツ政府が「脱原発」の方針を閣議決定した。17基ある原子力発電所のうち8基をすぐに閉鎖、残り9基も2022年までに段階的に閉鎖する。世界の主要国の一つであり、欧州経済[記事全文]
橋下徹・大阪府知事が代表を務める地域政党・大阪維新の会は先の府議会で、議員定数削減条例案など4議案を提案し、他の主要会派が反対するなかで可決、成立させた。維新の会は、4[記事全文]
ドイツ政府が「脱原発」の方針を閣議決定した。17基ある原子力発電所のうち8基をすぐに閉鎖、残り9基も2022年までに段階的に閉鎖する。
世界の主要国の一つであり、欧州経済を引っ張る国である。原発という巨大なリスクを、徐々に取り除いていこうという決断は重い。
もともと中道左派政権は02年に脱原発の旗を掲げていた。昨年秋、中道保守のメルケル政権は原発の運転期間の延長をいったん決めたが、今回の決定で元の路線に戻った。
福島第一原発の悲惨な事故が、ドイツの脱原発への動きを後押しした事実は、改めて重く受け止めなければならない。
朝日新聞の国際世論調査では、市民の8割以上が原発に反対し、7割近い人々が10年以内の原発閉鎖を望んでいた。
メルケル政権の決断は、この民意に沿ったものだ。右から左まで主要政党の足並みがそろったドイツは今後、政治や社会が一致結束して脱原発への歩みを早めることになろう。
風力や太陽光、バイオマスといった再生可能エネルギーの普及に力を入れる。家屋の断熱性の改善などの省エネを進める。これが対策の2本柱だ。
電力供給のうち原子力は23%を占めている。当面は天然ガスや石炭火力を増強しつつ、現在17%ある再生可能エネルギーによる発電の割合を20年までに35%に倍増させるという。
風力発電地帯の北部から人口の多い南部への送電線をどう増設するか。電力料金の値上がりをどう抑えるのか。課題は山積している。
この国の強みは、脱原発への助走段階で実績をあげていることだ。電力の買い取り制度や送電線開放によって風力や太陽光発電の産業化を進め、新たな雇用と成長を生み出している。
フランスやチェコなど周辺国と電力を融通しあう仕組みがあるが、その割合はごくわずかにすぎない。政府はエネルギー源を他国に依存しない方針だ。
メルケル首相は「未来への巨大なチャンスだ」と国民を鼓舞している。今後、脱原発への離陸に成功すれば、ドイツは21世紀の新しい文明と生活のモデルを示すことができよう。
事情が大きく異なるとはいえ、ドイツの果敢な挑戦から日本は目を離してはなるまい。
社会全体で熟議が積み重ねられてきたドイツに比べて、日本では、原発は国策だからという理由で政界も学界も思考停止に陥っていた。その呪縛をまず断ち切ることから始めよう。
橋下徹・大阪府知事が代表を務める地域政党・大阪維新の会は先の府議会で、議員定数削減条例案など4議案を提案し、他の主要会派が反対するなかで可決、成立させた。
維新の会は、4月の統一選で過半数の議席を得た。これを背景に、異論にはほとんど耳を貸さないまま議決に持ち込む姿勢に懸念を抱かざるを得ない。
現在の109議席を88にする定数削減条例は、維新の会が統一地方選で具体的に掲げた公約である。一定の民意の支持を受けた政策といえるだろう。
議員数の多さが指摘されながら、過去10年間で3議席の減にとどまっていたのも事実だ。
しかし、成立した条例には大きな問題がある。一票の格差が2.2倍から2.88倍に拡大するのだ。市区を単位とする現行の62選挙区を据え置き、人口に応じて削減したためだ。
国政選挙をめぐっては近年、一票の格差を是正しようとする動きが続いている。時代に逆行する格差の拡大といえる。
民意をいかに適正に政治に反映させるか。定数配分は、議会制度の根幹にかかわる問題だ。意を尽くして、じっくり審議すべきだった。
定数見直しの必要性には、主要各派も理解を示していた。次の選挙は4年後だ。今からでも第三者を入れるなどして合意点を探ってはどうか。
今回の議会で維新の会は、教職員を対象にした日の丸・君が代起立斉唱条例も成立させた。選挙公約にすら掲げていなかった全国初の条例である。
他会派は、こうした重要案件を短い審議時間で次々と採決するやり方に対して「性急すぎる」と再三、注文をつけた。
地方自治は、予算案の提出や執行権をもつ首長と、チェック機能や議決権をもつ議会がそれぞれの立場で責任を果たす二元代表制をとっている。
現状では改革が進まないと考える橋下知事は、自ら設立した政党で議会の過半数を押さえ、首長と第1党が一体となって物事を決めていこうとしている。
だが多数派の首長政党が少数意見に耳を貸さなければ、議会は形骸化する。
多数決主義は民主主義の基本である。一方で、多数を握る側が少数派の声をくみあげ、多くの人が納得できる結論に収斂(しゅうれん)させていく作業を怠れば、議会制民主主義は成り立たない。
第1党の党首でもある橋下知事には、そこに思いをはせてもらいたい。このままでは議会は監視機能を失った追認機関になりかねない。