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東日本大震災:福島第1原発事故 事故調、原子力行政と一線 解明の重責担う

 ◇「権限なし」の中

 東京電力福島第1原発事故の原因究明などを担い、7日初会合が開かれた政府の「事故調査・検証委員会」は航空機や鉄道事故の調査を手掛けてきた専門家や、法曹関係者らが顔をそろえる一方、独立性を保つため、原子力行政を推進してきた「事故の被告側」とも言える専門家らは排除された。菅直人首相は「政府として調査に全面的に協力する」と支援を約束したが、委員からは「制度的な担保がなく委員会としての権限がない」(高野利雄・元名古屋高検検事長)との発言が出た。(6面に調査項目)

 委員会を見渡すと、「失敗学」の第一人者として知られる委員長の畑村洋太郎・東京大名誉教授と、技術顧問の安部誠治・関西大教授は、いずれも尼崎脱線事故の再発防止のためJR西日本の新しい安全計画を検討する「安全推進有識者会議」の委員を務めた。作家の柳田邦男氏も米スリーマイル島原発事故(79年)をテーマにした作品を著すなど、事故調査に精通した人物だ。

 事務局には原発の設計に携わった民間の専門家を入れ、関係者の聴取も順次実施するが、委員会は当事者に協力を依頼する立場。法的な調査権限は与えられておらず、複雑で専門性の高い事故原因などについてどこまで真実に迫れるか未知数だ。

 初会合で畑村氏は「責任追及を目的にしない」と明言し、「100年後の評価に堪えられるよう協力してほしい」と調査への協力を呼びかけた。だが日本には証言者の免責制度がなく、司法当局が報告書で認定した事実関係などを用いないという保障がないため、証言者に真実を語ってもらう上でもハードルが高い。

 世界的に原発政策の位置づけを揺るがした深刻な事故の原因や背景を解明し、再発防止策をどう提示できるか。報告内容は、日本が国際的な信頼を取り戻すための大きなカギを握ると言え、制約の中で真相究明を求められる事故調の果たすべき役割は重い。【河内敏康、奥山智己、足立旬子】

毎日新聞 2011年6月8日 東京朝刊

 

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