2011年4月11日 21時45分 更新:4月12日 0時35分
民主党は11日、東日本大震災の復旧費を盛り込んだ4兆円規模の11年度第1次補正予算案の原案を自民、公明、国民新党に個別に提示した。政府・与党としては今後も復旧・復興に取り組むことで統一地方選前半戦の民主党敗北の責任論を封じ、野党の協力を得たい考えだ。だが、自民党の谷垣禎一総裁が同日の記者会見で「菅直人首相は国民の厳しい声にどう応えるか、自ら判断すべきだ」と退陣を求めるなど、野党は対決色を再び強め始めた。【葛西大博、朝日弘行、念佛明奈】
「早期成立に努力しなければならないが、財源の考え方には隔たりがある」。11日、玄葉光一郎国家戦略担当相(民主党政調会長)と国会内で会談した自民党の石破茂政調会長は年金財源の転用に懸念を示し、「持ち帰って検討する」と賛否を留保した。民主党の岡田克也幹事長は5月の連休中も第1次補正予算案の国会審議を進め、野党の協力を得て早期成立を図る考え。だが統一選前半戦の敗北で早くも目算が狂っている。
野党が問題視する基礎年金の国庫負担分を財源に充てる案は、厳しい財政事情の中しぼり出したもの。政調幹部は「基礎年金の国庫負担分の2.5兆円にもし野党が乗らないと、建設国債は出しても約1兆円が限度。予算額を1.5兆円分減らさないとならない」と指摘する。菅首相は国債発行には否定的とされ、野党側に譲歩しようにも余地を見いだすのは難しい状況だ。
民主党執行部は内憂も抱える。「菅降ろしなどしていたら世論から批判される」(役員会メンバー)という懸念が主流派にも非主流派にもあるため、菅降ろしの動きは顕在化していないが、鳩山グループの中堅衆院議員は「統一選後半戦が終わったら、幹事長はけじめをつけないと党が割れる」と指摘。小沢一郎元代表は11日、都内の個人事務所で側近の松木謙公衆院議員と会い、原発事故の風評被害などについて「日本が大変なことになる」と菅政権を批判した。
岡田氏は後半戦終了後、各都道府県連ごとに総括を行ったうえで5月下旬に東北地方で全国幹事長・選対責任者会議を開き、選挙戦の総括を行う考えだが、党内の不満を抑え込めるかは不透明だ。
「震災対応など協力できることには徹底的に協力する」。谷垣氏は11日の記者会見でこう強調したが、一方で「健全野党として国家国民のためにならないことには断固筋を通す。政策論のない野合は国民への裏切りだ」と述べ、大連立拒否の姿勢を示した。野党は1次補正の早期成立には協力する構えを見せるが、統一地方選での民主党の敗北を受け、スタンスを是々非々へと変えつつある。自民党は11日、基礎年金の国庫負担分2.5兆円を財源に充てる原案に「年金制度の安定性を損なう」とさっそく注文をつけた。
自民党は、子ども手当や農家の戸別所得補償などを撤回し、震災対策に回すよう求めてきた。玄葉氏との会談後、石破氏は「1次補正で全部かたがつかなくてもいい」と記者団に語り、2次補正以降をにらんで菅政権をけん制した。
公明党の石井啓一政調会長も玄葉氏との会談で「基礎年金国庫負担は党内に思い入れが強い人がいる」と指摘。「国庫負担引き上げ」は自公政権時代に決めただけに、党内調整は容易ではないことをほのめかした。
一方、国民新党の亀井静香代表は11日、民主党の岡田幹事長との会談で原案に難色を示し、(1)仮設住宅の10万戸建設(2)被災者1人あたり10万円の給付(3)被災市町村への50億円の交付--などの追加策を求めた。