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Zeel社長 尾関茂雄氏インタビュー
 現在複数の事業に携わる尾関氏は、自らが掲げる理想のスタイルを「愛の経営」という言葉で表現する。インタビュー後編では、そんな「愛」を標榜しながら広く社会に視野を広げてきた尾関氏の仕事観や価値観に迫る。(聞き手はグリー社長 田中良和)
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「ブレ」のない自分を目指して

田中:

僕がまだグリーを起業する前、よく尾関さんと話をする機会がありましたが、当時はなぜ尾関さんが会社を作ったかが、明確には理解できませんでした。

でも最近になって、ようやくわかりかけてきたような気がします。起業するときのマインドというのは、もっと単純に「起業するという生き方」をしたいかどうかという、シンプルな問いなのではないかと。

起業してからの「生き方・考え方」は、大企業に所属しているのとは絶対に異なるものですよね。自分で起業してみて初めて、これまで見逃していたその点をハッキリ見据えることができました。

尾関:

なるほど。

Zeel社長 尾関茂雄氏インタビュー
田中:

現在尾関さんが経営に携わっている会社は、Zeelの他にもダイニングバーの西麻布Birth、化粧品の輸入販売を行うMc2、ファッションブランドのIZREELと、合計4社ですか。本当に多彩な事業を手がけてらっしゃいますね。

尾関さんの話を振り返ってみると、「面倒くさいことはしたくない」という、ある種、本能的な取捨選択のメカニズムが存在しているような気がします。その感覚に対して忠実に生きているから清々しいですね。

尾関:

自分では、面倒くさいことをしたくない割にはなぜこんなにいろんなことを手がけているのだろうと、時々疑問に思いますよ。面倒なことは、全部やらない方が本当はいいじゃないですか。

Zeel社長 尾関茂雄氏インタビュー
田中
それはその通りですね(笑)。
尾関:

本当に面倒くさくないことだけをやり続けるのであれば、軌道に乗っているアクシブドットコムにずっといたでしょうね。

田中:

面白くなくなったことはしたくないという感覚でしょうか? 快楽主義者なのかな。

尾関:

そうそう。でもそれはよくないなと最近は思い始めていますが。己のことだけ追及していてもいけないと。

田中:

ご自身のブログでも「愛の本質」について語ったり、会社のあり方について「愛と調和」をイメージしたりしていましたね。「ビジネスは愛である」と謳った書籍『金の匙 銀の匙』も出版していますし。

尾関:

そう、愛なんですよ。会社を経営している中で、「みんな愛されたいんだなぁ」と感じる場面が多々あって。皆が愛に飢えていて、求めていると思います。日々、皆にどう接してくかが大事だと頭ではわかっているけれど、自分もまだまだ「愛の経営」の実践にはほど遠いですね……。

田中
自分の考える、あるべき姿と現実ではどういったところにギャップや難しさを感じていますか?
尾関:

何だかんだ言って、どうしても自分のことを中心に考えてしまいますよね、人って。完全に利他の心にはなれないので、言っていることとやっていることがブレてしまったりする。自分が目指しているのは、ブレがないというか、言動や行動に調和が取れている姿でしょうか。

地道な努力を評価することが、いま求められる

Zeel社長 尾関茂雄氏インタビュー
田中:

これからの尾関さんは、ご自身でどうなっていくと思いますか。あまり構えず自然体であるのが、「尾関スタイル」という感じはしますが。

尾関:

基本的に、僕は受身ですからね。自分で積極的にアクションを起こしていくというよりは、周りで動きが起こるのを待っている感じです。そうしていると、ある時突然テーマが沸いてくるんですよね。

それに素直に従い、できることをやっていけば、納得のいくところに行き着くのではないかな。浮かんだテーマに対しては、とりあえずやってみる。やってみないとわからないことってあるでしょう。好奇心が旺盛ですから、トライしてみると思います。

田中:

やってみて違うなぁと感じたら、やめればいいという考え方でしょうか? 実に自然体ですね。

尾関:

そうはいっても、なかなかやめられませんけどね。一応、会社を経営するというのは責任がありますから。

田中:

これからも、「起業家」というワークスタイルは続けるのですか。

尾関:

どうでしょう。起業家であることにこだわってはいません。社長でなくても別にいいわけですし。

田中:

尾関さんが追い求めているのは、規模の大きさではなさそうですね。

尾関:

規模なんて大抵は不要じゃないですか?規模が大きくなればその分、大量消費、大量生産しなければならないでしょう。それは社会のあり方としてよくないのかなと。だから、少人数でも熱意とプロ精神のある人が集まっている高付加価値の会社が好みですね。

田中:

「スモールカンパニー、且つ特別な会社」というのが、尾関さんの目指す会社像ということでしょうか。しかし、世の中では規模を大きくしようと頑張る会社の方が圧倒的に多いですよね。

例えば、ベンチャー企業においては「楽天やヤフーのようになりたい」という将来像を持つ会社しかないというふうに世間から思われている節もあると思うのですが、会社のルーツというのは、そういったことだけがすべてではないということですよね。

尾関:

もちろんです。「スモールカンパニー、且つ特別な会社」というのがたくさんあったらいいんじゃないかな。肉食で大型の恐竜みたいな会社がたくさんあっても、将来は互いを食い合って滅びてしまいますよね。

Zeel社長 尾関茂雄氏インタビュー
田中:

なるほど、そういう考え方もあるのですね。ところで、尾関さんが近頃関心を持っているのはどんなことですか?

尾関:

近頃は沖縄に興味があって、沖縄に関する本をよく読んでいますね。沖縄についてよくよく調べると、泣けてきますよ。ここ100年ほど、日本は沖縄を犠牲にして成長している。酷い話です。臭いものには蓋をしてまったく見ないというのは、同じ人間としてどうかな、と反省している最中です。

ところで、グリーは沖縄支社作らないんですか?(笑)

田中:

税制も優遇されているそうで、いいところらしいですね。

尾関:

もちろんそういったメリットもあるけれど、土地そのものがいいですね、開放感があって。そういう意味では、沖縄やシリコンバレー等はやっぱり土地がいいと思います。東京の街中にいても、せこせこした考えしか浮かばない気がする。開放的な土地に行って、大きな視野や発想を得ることが必要でしょうね。

例えば、「勝ち組・負け組」とよく言いますけど、「勝ち組」は「負け組」が存在していなければ成り立たないわけですよね。つまり、勝ち組は負け組に支えられているということです。首から上だけでは存在できないようなもので、勝ち組だけの存在はあり得ない。生きていくためには、首から下がどうしても必要なわけです。

つまりは、負け組と認めている人たちの人生を背負っていく覚悟が勝ち組にはなければならないということ。そういうふうに、もっとトータルに、いろんなものを含めた視点で世の中を見ていくことが大切なのではないかと思います。

会社組織も同じことが言えますよね。会社も社会の一員なので、社会に対し、自分さえよければいいという感覚で動いてはならないと思います。社会に対して、大いなる責任を感じながら行動しなければならないのではないでしょうか。

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