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Zeel社長 尾関茂雄氏インタビュー
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「ニートが悪い」というのは間違っている

Zeel社長 尾関茂雄氏インタビュー
田中:

社会の一員と言えば、僕は近頃「ニートをどう思いますか?」といろんな場面で聞かれます。尾関さんはニートに対してどう考えていますか?

尾関:

ニートは、彼ら自身の問題ではないと思う。社会のひずみに彼らが集中しているような……。ニートになる人は、センシティブなんですよね。感じやすいから反応してしまっている、いわば社会に反応するリトマス試験紙のようなものではないですか。反応が見られたから「お前が悪い」というのは、違うだろうと思います。自分の中にもそういう要素があるかもしれないし、ひとりひとりが、社会のひずみに関係しているのを自覚するのが、社会を変える第一歩でしょう。

そもそも現代は、真面目にちゃんと働いている人が報われない社会であり、ニートになるような人はどこかで「俺たちこんなにやってるのに、全然報われないじゃん」といった感覚、憤りのようなものがあるのではないかな。実際、マネーゲームや買収をしている人たちの方がちやほやされている世の中なわけですよ。小賢しく頭を使って、何か大きなことをやっている人だけが認められるという流れになっているのが、面白くないんだと思うんです。

僕は、地道に農作業をやっている人が一番偉いし国の基本を支えていると思う。お腹が空いたら人間何もできないわけで、農作業をする人たちがいなければ成り立ちませんからね。これまで製造業においても、優れた製品を作り続けるために、本当に地道な努力を続けてきました。地道な仕事をしている人たちに、もっと「あなたたちが本当は一番すごい」と評価することが、いまの時代だからこそ求められていると僕は考えています。

田中:

そもそもニートは、一般的に「働こうとせず学校にも通っていない。仕事につくための専門的な訓練をも受けていない人たち」という、割と曖昧な定義ですが……。

尾関:

報われないことを、したくないんでしょうね。コツコツやって評価されるのであれば、おそらく行動すると思いますよ。もちろんそれぞれ向き不向きがあるし、経済的に有利・不利があってその点では報われない人はいるかもしれない。でも、とにかくその人に向いている生き方を認め、自分たちを支えてくれるのであればそれに最大限感謝しなければ。認められなければ真面目に働く人はバカバカしくなるし、自暴自棄になりたくもなりますよね。

「サングラス」を外して、世の中を見てみよう

Zeel社長 尾関茂雄氏インタビュー
田中:

尾関さんはいま31歳ですが、一般の同世代の方々はどういったことをなさっていますか? いまの自分に比べて楽しそうにしているのかそうでないのか、何か感じることがあれば聞かせてください。

尾関:

みんなそれぞれ、悩みながら生きているなぁということは感じますね。会社がつまらないとか、仕事が面白くないとか……。そういったことは全部、自分次第だと僕は思いますが、やっぱり何かのせいにしたいのですよね。それは他の人を見て僕が感じるというだけのことなので、本当のところはどうかわかりませんが。

田中:

みんな幸せそうでしょうか、それとも不幸せそうなんですかね。

尾関:

どうでしょう。可もなく不可もなく、じゃないですか。大抵の場合、価値基準がお金の有無になってしまっていますが、「夢のないのは寂しいよなぁ」とは思います。

まだうまく整理しきれていないのですが、僕が思っているのは……。なんというか、現代の日本人には、根本的な精神、支柱というものが存在していないのではないでしょうか。昔の「武士道」のようなものですね。いまは価値観が常に新しく更新されてしまうから、個人のあり方がブレてしまうんです。だから迷い苦しみやすくなるのではないかと思いますね。

日本人的な価値観の、もっと確立されたもの ──それが神道なのか、仏教の宗教なのか、武士道なのか禅なのか、ちょっとわからないけれど── いわゆる日本的なものが大切であると、社会全体として認識がない限りは、ブレ続けるのではないかな。結局、いまは米国というか、キリスト教が作った価値観、資本主義に依存しているわけで、日本社会の根本的なところにしっくり来ていないような感じがしますね。

田中:

ブレのある人は、日本的価値観を支柱とするように努力すればいいんでしょうか。

尾関:

いや、これはあくまで僕の意見なので、正しいかどうかはわかりませんが。支柱については、自分が信じたことをそれぞれが行動していくのみではないですか。

田中:

普段、可もなく不可もない状態でやりたいこともあるわけでなし、30歳前後ならばそれなりに背負うものもあったりして……。「がんじがらめ」が何年も続いていくような感覚に襲われる、そういった人たちに対して、尾関さんから何かメッセージがあれば、お願いします。

尾関:

新しいことにチャレンジするのは、勇気がいりますよね。勇気って、自分のためだけにはあまり振り絞れるものではないと、僕は思います。誰かのためという動機がなければ。だから、家族や、何かしら守るもののために自分を変えていくのなら、勇気を持てるのではないですか。守るものがなければ、自分探しをしたりするのもいい。もちろん、「自分」はそうそう簡単に見つけられるものではありませんが、ひたすらもがく中で見えてくることもあるんじゃないかな。

田中:

答えが不明確なものや、参考書を読んでもプロセス明示されていないことに対して努力するという方法論が、みんなわからないのではと思うんですね。例えば、大学受験ならば試験範囲が明らかだし、結果も点数という形で現れますが、「微々たる幸せ」を掴むまでのプロセスや結果は不明でしょう。

Zeel社長 尾関茂雄氏インタビュー
尾関:

幸せは、本当はすごく単純だと思います。「人に何かしたら喜ばれてうれしい」だったり、「今日1日キレイだったな」だったり。だけど仕事に忙殺されてしまったり、外からの価値観に惑わされたりして感覚が麻痺してしまえば、何を見ても何をやっても楽しくないですよね。

それは、いわばサングラスを掛けて世の中を見渡しているようなもの。サングラスを外して周りを見てみる──つまり幸せを感じられる心があれば、幸せはすぐに見つかると思います。

構成/文:野田幾子 写真:小平裕臣
編集:島田敏宏(GREEキャリア編集部)
2006/03/29 14:00
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