<東日本大震災>ヘドロの処理進まず 感染症広がる恐れ
毎日新聞 6月6日(月)2時30分配信
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手つかずのヘドロ。夏になると細菌類が増殖し、感染症の原因になる=福島県沿岸部で2011年6月3日、神保圭作撮影 |
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福島県相馬市の沿岸部では乾燥した路上のヘドロが粉じんとなり、砂煙のように舞って視界を遮る。6月初め、浸水した自宅を片付けていた男性(57)は「震災直後より臭いがきつくなった。マスクが手放せない」。周辺の水田は真っ黒なヘドロに覆われ羽虫が大量発生し、「駆除したいが、広すぎて自分では無理」とあきらめ顔だ。
市は当面の対応として噴霧器を4台購入し、近く沿岸部で消毒剤の散布を始める。市建設部の担当者は「市内のヘドロは浸水面積から推定すると約200万立方メートル。がれきの量の数倍から10倍はあるだろう。消毒剤を散布しても抜本的な解決にはならないが、できることからやっていくしかない」と話す。
東京大医学部国際保健政策学教室の渋谷健司教授(45)によると、ヘドロの中には中毒症状を引き起こす有毒物質のほか、感染症の原因となる破傷風菌やレジオネラ菌、ノロウイルスなどがいる。梅雨に入るとヘドロは雨で広範囲に広がり、菌も増殖。夏には乾燥して粉じんになり、体内に入りやすくなる。「高齢者や体力が弱った人は命にかかわる恐れもある。今回のように大量にヘドロが発生した災害での医学的報告はなく、健康への影響は計り知れない」という。
福島県の場合、福島第1原発事故による放射性物質の影響もあって処理が進まないが、岩手県や宮城県でも「がれきの処理を優先しており、ヘドロにはほとんど手を付けられていない」状態だ。
渋谷教授は「震災でヘドロをかぶった土地は広範囲にわたり、市町村では到底対処できない。放置が長引くほど健康被害のリスクは高まる」と、一刻も早い対策を求めている。【神保圭作】
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最終更新:6月6日(月)8時51分
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